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ルンルンを買っておうちに帰ろう28

时间: 2019-07-30    进入日语论坛
核心提示:ビデオが来てから、私たちはいやらしくなったん 私の部屋には、ビデオ付きソニーのプロフィールがある。ジャーン! 月賦はやっ
(单词翻译:双击或拖选)
 ビデオが来てから、私たちはいやらしくなったん
 
 私の部屋には、ビデオ付きソニーのプロフィールがある。ジャーン!
 月賦はやっと払い終ったのであるが、ビデオテープが高くてあまり買えない。�ザッツ・エンターテイメント�と、佐野元春のライブの二本という淋《さび》しさである。おまけに機械オンチの私は、説明書を何度読んでも、うまく番組予約ができない。九時のロードショーを録《と》るつもりでも、なぜか七時のニュースが入ってしまう。
 ところで最近気づいたのであるが、私の部屋に来て、このビデオに気づく客というのは、一様に同じ反応をしめすのである。
「あれないの、アレ」
 アレというのは、どうもポルノのことであるらしい。
 
 私という人物と、ビデオという結びつきから、すぐ�ポルノ�という単語を連想されるとは、私も常日頃の行いを反省しなければならないだろう。
 しかし正直のことをいうと、なんと私も二本�にっかつ�のやつをもっているのである。お客さまのリクエストにお応えして、田口という好きモノのマニアから特別に安く譲ってもらった。しかしこれがヒドイ、のひと言につきるやつで、「奥まで見せます」とか、「金髪枕合戦」とか題名はものすごいのだけれど、裸のシーンはたいしたことない。あれだったら「ウイークエンダー」を見た方がなんぼかマシである。
 私の友人など�目キキ�が多く、M子という一流商社のOLやっている旧友など、仕事柄本場のものをバンバン見ているので、
「なんだこれは。こりゃお子さま用ポルノかー」
 といってすっかり怒ってしまったのである。
 しかしこのM子といい、他の友人たちといい、人間のスケベ心というものには全く貴賤《きせん》がないということを、本当に実感している今日この頃です。私の友人たちだから、いっちゃナンだけど、それなりに教養や社会的地位、性格のりりしさというものがあるだろうと期待していた私がバカだったのネ……。
 ある晩のこと、私は某有名音楽家の家に麻雀《マージヤン》をしに行った。スカウト番組の審査員などしていて、歌手志望のジャリタレなどに、実に愛に満ちたアドバイスをするあの方である。
 そこでお夜食のあとに、ハードポルノを見せられたのである(見せられた、というところがいかにも私らしい)。私なんかスケベといっても、せいぜい�にっかつ�どまりだ。しかし彼ら一家は、ハワイからこっそりもち込んだというスゴイやつを笑いさざめきながら見るのである。局部のモロアップなど、
「うちのパパの方が大き〜い」
 とかキャッキャッしている。
 まあこのあたりまでは、私も水割をチビチビやりながら笑ってつきあえるのよね。
 ホントのことをいうと、私ハードポルノって大嫌い。私はほれ、昔風の女で、わりとそっちの方にはタンパクシツなんですぅー。というよりも、華やかな機会に恵まれることが少ないので、視覚からの反応がすごぉくにぶくなっているよね。
 それにああいうビデオは、日本では貴重品だから、人から人へ手に渡り、ダビングにつぐダビング。だから画像がものすごく汚ない。あんなの見るぐらいなら、恋人とイヤラシイことをする方が、私は好きです。
 ところで私のまわりには先取り人間が多い。ビデオという最新のオモチャを得て、見るだけではすまなくなってきた友人たちが急増してきた。
 カメラマンのヤマダさんちは、奥さんの誕生から現在までの写真を次から次へと写し、それにビートルズの曲をかぶせ、みごと一篇のドキュメントをつくって夫婦で楽しんでいる。これなどは微笑《ほほえ》ましい例であるが、困ったのは、イヤラしいことに使っているカップルたちである。
 同棲中の友人のアパートに行ったら、
「いいもの見せてやろうか」
 といって内縁の妻の方がニヤニヤしながら持ちかけてきた。
 内縁の夫が録った彼女のヌードである。
「五月みどりのポーズを研究した」
 とかいっていたけれど、
「ほうー、けっこうですねー」
 とかもいえず、早めに帰ってきた。あの分では彼とのカラミシーンも録ったに違いない。そんなもん見せられてたまるか!
 しかしこの頃、世の中全体がほんとにイヤらしくなって、私のように純情なものは住みにくくなった、とつくづく痛感している。
 スケベなことに男も女もものすごい情熱を燃やすのは驚くばかりだ。そして、そしてですね、私も少しずつその悪い風潮に染まっていったみたい。
 私、ビデオは嫌いだけれど、そのテの本はわりと好きになってきたみたい。
 そういう心境になると、私ぐらい恵まれた環境も珍しいのだ。このあいだも私は、「さぶ」(有名なホモの交際雑誌)の編集部の人から、昭和初期の変態写真が載っている本をもらっちゃった。
 日傘をさし、耳かくしのええとこ風の若妻を、無頼っぽい男がゴーカンするという写真だけれど、いまの刺激的なやつと違って、時代が時代だからリリカルな風情が漂い、すごおく可愛い。特に男が頬《ほお》かむりして、木陰に隠れて女を待っている写真などユーモラスで笑い出したぐらいである。
 写真というのは動かないからいい。
 突然ものすごいもののアップ、ということがないからいい。
 わりと冷静になって見られるのである。
 私がハードタイプのビデオが嫌いなのは、そのへんのところに理由があるのかもしれない。
 実は私、映画を見るのにも気をつかうひとなのである。私ね、この二、三年、イヤラしい場面になると、なんか生つばがやたらたまる体質になったのである。特に興奮しているわけでもないのに全く不思議である。
 それまでは普通に映画を楽しんでいるのに、恋人同士が、ホテルの部屋をチェック・インしたりするでしょ、私ってそういうのが異常に鋭いヒトだから、
「そろそろはじまるな」
 っていう期待感と、
「つばがたまったらどうしよう」
 という恐怖感がいっしょにドッとやってくる。そのことを意識しはじめると、もう口の一点にばかり気持ちが集中してしまい、映画にも身が入らなくなってくる。意識すればするほど口がカラカラになってくるのよね。パブロフの犬みたいに映画館の中でなっちゃうの。
 しばらく前「四季・奈津子」を見ていたら、私の大好きな風間杜夫さんが、私の大嫌いな烏丸せつこの豊満な胸に顔をうずめたりしてたのよね。
 私、いけない、いけない、と思ってじっとがまんしてたんだけど、知らない間に、「ゴックン」とものすごい音たてちゃった。ラブシーンの時というのは、たいていBGMがなくなってシーンと静まりかえっている時だから、当然私のその音は目立つわよね。かたわらにいた男なんて、一瞬、私の方を見たぐらいだ。
 ポルノ映画によくあるように、トイレの横まで私を追ってきて、
「お嬢さん、欲求不満みたいですね」
 などといわれたらどうしようかと思っていたけれど、なにごともなくすんでよかった。
 しかしこの頃この「ゴックン」をごまかすために、いろいろ頭をヒネるのだがどうもうまくいかない。
 まず考えた第一のアイデアというのは、アクビをすることであるが、ものすごいベッドシーンの時に、たてつづけにアクビするのもなぜかわざとらしく、本来の意味をさとられるのではないかと不安になる。
 次にものを食べるということも考えたのだが、私も映画ファンのはしくれ、そういうエチケットに反することは気がすすまなくなってきて、これもやめた。
 ラブシーンも見たいが、「ゴックン」も恥ずかし。
 その複雑な私の心理にいちばんかなうのは、私の部屋でひとり、�にっかつ�のビデオを見ることである。これだと「ゴックン」も全く出ることなく、心から楽しめるようだ。
 お客のもてなし用だとか、さっきはごまかしたけど、やっぱりお前は�にっかつ�ビデオが好きなんじゃないか、といわれそうだけれども、モテない女がひとり部屋で、ポルノビデオ見る図ってものすごく悲惨でしょ。
 私にもプライドつうものがあるから、このひとりの映写会も、まだ二、三回しか開催したことがない。ホント。
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