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美女入門06

时间: 2019-07-30    进入日语论坛
核心提示:オープンカフェの憂鬱《ゆううつ》 表参道に初めてオープンカフェが出来た時、私はとてもイヤアな気分がしたものである。 私は
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 オープンカフェの憂鬱《ゆううつ》
 
 
 表参道に初めてオープンカフェが出来た時、私はとてもイヤアな気分がしたものである。
 私は歩くのがあまりうまくない。小股《こまた》でちょこちょこ進むので「ペンギン歩き」と後ろ指をさされたことさえある。おまけに出っ張り気味のお腹を隠そうと前かがみにもなる。
 こんな私が、人がいっぱい座っているカフェの前を通るなんて、まるでいい恥さらしではないか。見せ物みたいだ。
 私は当時、青山にあるエステへ歩いて通っていた。帰り道、いったん青山通りの角を原宿の方に右に曲がるのであるが、新しく出来たオープンカフェを避けるために信号を渡る。右側ではなく、左側を歩くようにしたのである。そして向こう側のオープンカフェに座っている人たちに対し、イーッと軽く睨《にら》んだ。
 本人たちはどう思っているかわからないが、真ん前のテーブルに陣どっている人たちはとてもえらそうに見える。いかにもけだる気に煙草を吸ったり、お喋《しやべ》りをしているのだ。心なしかキレイな女の子が多いような気がする。
「何の権利があって、そんなにえらそうに道行く人を見るのよ、本当に感じが悪いったらありゃしない」
 ところが右側のオープンカフェが大繁盛したせいで、今度は向かいの左側に同じような店が出来た。おかげで私はとても忙しくなったのである。まるであみだクジの線のように、信号を渡り、道を横切り、オープンカフェの前を通らないようにするのに知恵を使った。
 やがて左側のオープンカフェは三つになり、ついに私は観念したのである。
「見るなら見ろ」
 と私は胸とお腹を張り、前を横切る。私はご存知のとおり、自意識過剰のヒトだ。が、オープンカフェの前を通る時、ヒトは誰でも自意識過剰になるのではないだろうか。
 そして一年もたたないうちに、オープンカフェは表参道ばかりでなく、明治通りの方にも大発生した。
 東京に住んでいない方のために説明すると、表参道はご存知のとおりケヤキ並木が続く、広く綺麗《きれい》な道である。しかし明治通りはぐっと狭く、わりと殺風景な通りだ。それなのにここにやたらオープンカフェが出来たのである。
 特にパレフランスの一階にある「オー・バカナル」ときたらすごい。このあいだ「ブルータス」が行なったアンケートによると、「在日フランス人がいちばん好きなカフェ」の第一位に選ばれていた。私は家から近いので、ここを利用することが多い。ここは「在席外国人比率」が東京でいちばん高いところだ。金髪や黒人のカッコいい人たちが外のテーブルに座っている。知り合いが来ると、チュッチュッ抱きついたりする。まるでパリの街角にいるみたいだ。このあいだはミナコ・サイトウの本物が、ここに座っているのを目撃した。
 さてオープンカフェの座り方であるが、これは本当にむずかしい。オープンカフェは、基本的には好きな場所に座っていいことになっている。考えているよりもずっと平等だ。それでも心のひけめというものがある。
 ひと頃のディスコのように、自信のある人たちは前へ前へ進んでいく。私のように控えめといおうか、いまひとつ自信を持てない人は、奥の目立たない席に座る。そしてまわりの席をそれとなく見る。ここは東京中のキレイな女の子が集まっているところかもしれない。秋が深くなってもノースリーブのワンピースを着ていたりしているのだが、それがとっても可愛い。そして可愛い女の子は、たいていカッコいい男の子とペアになっている。だからみんな芸能人に見える。
 が、私はある発見をした。ミナコ・サイトウを別にすると、オープンカフェというのは、芸能人、もしくは有名人は行かないところだ。そういう人たちは、もっと密室性のあるところに行くのであろう……と私が言ったら、異議を唱えた友人がいた。三宿のオープンカフェで、芸能人がいっぱい来るところがあるというのだ。このあいだは、彼女がスパゲティを食べていた傍で、キムタクとカオリンが仲よく食事をしていたという。
「すごい、すぐにでも行こう!」
 三宿というのは、最新の東京の盛り場だ。世田谷《せたがや》のちょっと不便なところにあるので、車でなくては行けない。そういうところが芸能人に好かれるのであろう。
 とはいうものの、そういう店は非常に行きづらい。実は以前、私はその店に偶然入ったことがあるが、お店の人にそれとなく冷たくされた記憶がある。しかしその時私には強い味方がいた。
 かの牧瀬里穂ちゃんが、私と同じところで日本舞踊を習っているのだ。お稽古《けいこ》の帰りに私は彼女を誘い、そのお店に一緒に行ってもらうことにした。
 そうしたらどうであろう、以前はつっけんどんにメニューを置いたウエイターが、マキセを見るなりこう言ったのだ。
「メニューにないものもちゃんとつくるから言ってね。これはお昼のメニューだから少ないでしょう」
 とか何とかやさしい言葉を口にするではないか。
 私は知った。オープンカフェも決して平等じゃない。みんなに開けてるようで開けてないんだ。あたり前のことだけど、私はだからオープンカフェが嫌いだ。
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