人気のドラマ「ラブジェネレーション」を見ていてふと思った。
「キムタクって、テツオに似ている……」
もちろんキムタクよりも顔はかなり落ちるし、年もずっと上だ。が、ぶっきらぼうな喋《しやべ》り方、口の悪さが本当にそっくりなのである。�並レベル�の男にあれをやられると、女はむっとするが、ハンサムな男だとぐにゃりとなる。テツオもそれをよく知っている喋り方なんですね。
私はさっそく電話をかけた。
「あのね、あんたってキムタクに似てるかも」
「おう、やっと気づいてくれたか」
その言い方も実に図々しい。
「オレも彼には、常々シンパシイを感じてたんだけど、やっぱり似ているせいだろうな」
だと。
ところで話は全く変わるようであるが、私は今日とても楽しいところへ行ってきた。
パーソナル・ヘアメイクというのだろうか、プロの人が化粧をしてくれ、ついでに写真を撮ってくれるのだ。そもそも雑誌に出たりする時、私の立場は微妙である。アンアンのようなファッション雑誌の場合、
「ヘアメイクの人をつけますから」
と必ず言ってくれるのであるが、普通の雑誌の対談だと何も言ってくれない。芸能人ではないからと、何の配慮もないのである。相手の女優さんなどは、対談場所にヘアメイクの人からスタイリストまで連れてきて一分の隙もない。女優さんという立場上、あたり前のことなのであるが、私としてはやっぱり不利に不利が重なる。
「あんたさあ、同じ土俵に立ってるとは、誰も思ってないんだからいいじゃん」
テツオは言うが、写真が出来上がったりすると、自分が本当に可哀想になってくるの。
先日は某週刊誌で、黒木瞳さんと対談した。あちらはすごい小顔の中に、大きな目と小さな口が配置されている。すっごく綺麗。
私だけなら「個性的」とか言ってくれる人もいる。が、二人並ぶとその差はあまりにもはっきりと出る。よくあることであるが、顔の大きさが違うから遠近感がいつもより狂って、私だけが2メートル前に座っているようなのだ。
ひどい。悲しい。私はどうしたらいいんだろうか……。
この連載のタイトルは「美女入門」である。少しでも努力して頑張ろう、というのがコンセプトである。私は決して泣き寝入りはしない(何のことだ?)。それでヘアメイクの勉強に出かけることにしたのである。
私も時々プロの方が化粧をしてくれるが、今日私が訪ねたヘアメイクアーティストは、超大物である。女の子だったら、たぶん雑誌で名前をよく知っているはずだ。かの大スター、○○子ちゃんのメイクが変わったのは、彼の手腕によるものと言われている。
そんな方がどうしてシロウトさん相手にヘアメイクをしてくれるかというと、某フィニッシング・スクールの授業の一環なのである。もともと生徒を大勢集めたメイクアップ講座としてやっていたところ、
「一生に一度でいいから、一流のプロに個人的にやってほしい」
という希望者が多く、特別にやってくれることになったのだ。といっても忙しい方だから、この特別メイクは一ヶ月に一人か二人してくれるかどうかということである。私が電話で申し込んだら、ちょうど�空き�があると言われた。
さすがに料金が高いが、キレイになるためなら何であろう。私は銀行のキャッシングコーナーへ寄り、スクールへ向かった。
「いいチャンスだから一部始終をビデオに撮ってこい」
とテツオは言うが、やはりそういうわけにはいかない。
まず眉《まゆ》の形を変えてくれた。ぐんとカーブをつける眉である。
「ハヤシさんは顔が丸い。目も鼻も口も丸い。だから顔の中にシャープなものをつくらないと駄目なんですよ」
なるほど、私が黒木瞳さんに負けた理由はそこか(!!)。私の眉は急カーブがつき、顔がまるで変わってきた。目だってすごいぞ。私は目がきつくなることを怖れて、下のラインを入れたことがなかったのであるが、細い茶色をひくようにと指示された。
そしてメイクが終り、その変わり様ときたら皆さんにお見せしたかったわ。別人とまで言わないまでも、私のイトコか妹みたいに若返った。化粧品の番号もメモしてきたので、明日さっそく買いに行くことにしよう。
そして写真を撮ってもらう。私だって嬉《うれ》しくてドキドキしているのだから、普通の女の子はこんな時どんな気持ちなんだろう。
ヘアメイクのAさんはとてもよい人で、ちゃんとつきっきりで見ていてくれる。女優でもタレントでもない普通の女が、見違えるようにキラキラしてくるのを見るのがとても嬉しいんだそうだ。
そんなわけで今日はとても幸せな日であった。私のポラ写真をファクシミリでテツオに送ることにする。