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美女入門22

时间: 2019-07-30    进入日语论坛
核心提示:ダイエットの素 ぐずぐずと風邪が治らない。咳《せき》と鼻水がずっと続いているのである。お医者さんに行くほどでもないという
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 ダイエットの素
 
 
 ぐずぐずと風邪が治らない。咳《せき》と鼻水がずっと続いているのである。お医者さんに行くほどでもないという風邪がいちばん長びく。
「とにかくいっぱい食べて、ぐっすり寝てください」
 と秘書のハタケヤマがうるさく言うので、仕事以外はほとんどベッドの中にいて、ずっとミステリーを読んでいた。時たま起きてご飯をつくる。夜はいつもオットの分だけ炊き、自分はちょっとおかずをつまむぐらいにしている。もちろんダイエットのためである。
 ところが、�風邪を治す�という名目のため、たっぷりご飯を二杯食べる。もらいものの筋子とかシューマイとか、おいしいものをいっぱい。寒いのでつくっておいたケンチン汁もいい感じ。たらふく食べてベッドにもぐり込むという生活を半月続け、そして私はヘルスメーターの上に乗った。
 ギャ〜〜〜ッ!!
 卒倒しそうになる、というのはああいうことを言うのであろうか。最近の新記録をうち立てていたのである。道理でお腹のへんにずっしり重みがついていたと思った……。
 私がこの世でいちばん尊敬出来る人というのは、自分の体重管理が出来る人である。ジムに通い、水泳を続け、自分のハダカをいつも鏡に映してチェックする人、そんな人に私はなりたい。
 そんな人にとうていなれない私が、ますますデブになって、何がいちばん嫌かというと、男の人に対して消極的になるということである。私はヒトヅマであるから、積極的に出てどうのこうのということはもちろんない。が、妄想の中でといおうか、精神的にハートマークを持つことはよくある。
「この人、ステキ……」
「もしこの人と恋をしたらどうなるかしら……」
 と考えたとしても何が悪いんだい。
 こういう私をテツオは「ハンフリン・ボガート」と呼ぶ。つまり「半不倫」を気取っている奴ということである。
 さて久しぶりに私はA氏とデイトをした。このA氏は私の男友だちの中でもピカイチの存在といっていい。インテリなのにハンサム、私と同い齢であるが多分に少年っぽさを残している。私はかなり心ひかれているのであるが、彼は私の友人と不倫(こちらは全不倫)をしていたという過去を持つ。
 若い時ならそういうのも我慢したかもしれないけれど、今となっては「お下がり」というこの四文字しか思い浮かばない。おまけに私の友人は美人である。かなりスリムでもある。他のことじゃ負けないつもりだけれど、やっぱりあの女性の後というのはちょっと不利だと思う。
 A氏はプレイボーイというのではないが、女を喜ばせるちょっとしたコツを知っている。というよりも、そういうことを自然に出来る男だ。
 食事の後、二人でバーに入ったのであるが、私の飲んでいるカクテルを、断わらずにひょいと取り上げて口をつける。自分の注文したバーボンを、ちょっと飲んでみてと前に差し出す。
 グラスを共有する、というのは、それだけでかなりドキドキする経験ではなかろうか。おまけにA氏は喋《しやべ》るたびに、
「ね、ね、それでさ」
 と私の腕に触れるのだ。女でよくこういうタイプがいるが男では珍しい。私はウヌボレ屋ではないが、かなり想像力が豊かな人間である。よって胸がトキメく。
 が、そのたびにあの数字が頭の中で膨れ上がり、私の脳味噌《のうみそ》の大部分を占めるのだ。
「私は○○キロ、○○キロの女なのよ」
 そんな女が男の人を好きになる権利なんかないのよ。そう、おかしなことを思っちゃいけないのよと私は次第に暗くなっていくのである。
 私は思った。女がダイエットをするのは、単に自分を美しく見せたいからじゃない。精神をすっきりとやわらかくしたい。つまりヒーリング効果なのである。
 私は次の日から頑張った。食べるものも注意するが、運動不足をとにかく解消することにした。私はあるジムの会員であるが、もとよりこういうところにマメに行くタイプじゃない。それで決心をした。出来る限りタクシーを使わない、どんな時でも地下鉄を使い、しかも乗り換えの大変なところをチョイスする。
 つまり千代田線から日比谷線に乗り換える時に、今までだったら日比谷で乗り換えた。が、わざと乗り換えに時間がかかる|霞ケ関《かすみがせき》にする。ここは階段を結構歩くのだ。とにかく私は歩く。SFメトロカードの五千円もあっという間に半分になる勢いだ。
 歩きながら私はA氏のことを考える。ちょっといいナと思うB氏のことも思い浮かべる。今度デイトする予定のC氏のこともちらっと思い出す。
 それから着られなくなったたくさんのお洋服、あれをムダにしちゃいけないと決心する。そう、今も歩く日々が続いている。こういう時に外食は絶対にタブーである。私はイタリアンや和食を共にする男友だちの約束を幾つもキャンセルした。よってA氏ともB氏ともC氏とも全然会っていない。彼らは妄想の中で、スリムな美女となった私にテーブルをはさんで笑いかけてくる。しかしなんかヘンかな……。
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