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美女入門25

时间: 2019-07-30    进入日语论坛
核心提示:美人服�を買った 私が連載小説を書いているある女性誌で「読者の集い」を開くことになった。人気の一流ホテルでミニ・コンサー
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 美人服�を買った
 
 
 私が連載小説を書いているある女性誌で「読者の集い」を開くことになった。人気の一流ホテルでミニ・コンサートを開き、着席式のフランス料理を食べるらしい。ファッション雑誌だから、お客さんもうんとおしゃれしてくるみたいだ。
「じゃ私もドレスか何か着ていくわ」
 短い講演を頼まれている私は言った。そんな話が伝わったのであろうか、仲よしのディオールの広報の人から電話がかかってきた。
「そのパーティーの時に、うちの洋服を着てくれないかしら」
 パーティーは、ディオールが協賛しているのである。
「そんなの無理よッ」
 思いがけない依頼におびえた私は、ついとがった声が出る。
「私、この頃うんとデブになっちゃってさー、いくらダイエットやっても痩《や》せないの。とてもじゃないけどディオールなんか着られないわよ」
「大丈夫、大丈夫。サイズの大きいのをちゃんと探しておくわ」
 何だかんだで、ディオールのものを着ることになった私。そして緊張の日々は始まる。
 サイズが許す限り、いろんなブランドのものを着てきた私であるが、ディオールだけは一度も着たことがなかった。なぜって、あれは本当に�美人服�という感じがしません? 髪なんかこう内巻きにしちゃって、肌もピカピカ、ネイルも完璧《かんぺき》。少女の頃から女であることの自覚と作戦を充分練ってきた人たち、そう「ヴァンサンカン」とか「ミス家庭画報」を読んでる人が着るもので、私なんかといちばん遠いところにあるものだと思っていたのだ。
 ところがこのディオール、デザイナーを若いガリアーノに変えてからというもの、かなり雰囲気が変わってきた。保守的なエレガントなものも多いのであるが、ちょっと可愛い感じに崩したものがなかなか素敵なのだ。
 私が密《ひそ》かにライバルと目している黒木瞳さん(人に殴られるヨ)も、今まではアルマーニやドルチェ&ガッバーナなどが多かったのであるが、最近はディオールがお気に入りみたいだ。そんな何となく気になっている私の気持ちを察してか、
「ハヤシさん、お待ちしているから帝国ホテルの店の方にいらしてね」
 と約束の時間が出来上がった。
 さて当日、私は妹分の女の子と一緒に、帝国ホテルの前の日生劇場に向かった。森光子さん主演の「おもろい女」を観るためである。これは戦中から戦争直後にすごい人気だったミス・ワカナという女流漫才師の半生を描いたものだ。
 劇場にはバスが横づけされ、団体の人たちが何人もやってきた。私の後ろはオバさんのグループが座った。これがとても日本語とは思えないすごいズーズー弁なのである。
「ねえ、後ろの人たち、あなたの国の人じゃないの」
 青森出身の女の子に聞いたところ、彼女は違うと首を横に振った。
「秋田の方じゃないかなあ……」
 オバさんたちは上演中の私語もすごい。お芝居を全く観たことがない人たちみたいで、前の幕に出た登場人物が衣裳《いしよう》を変えて出てくるともう混乱してしまう。
「あの人、誰だっけなー」
「ほら、ほら、あれじゃないがね。森光子の恋人だった人」
「そうだ、そうだよー」
 七人みんなに伝えるから、そのうるさいことといったらない。が、全く腹は立たなかった。標準語でこんだけ喋《しやべ》られたらかなりムカッとしたかもしれないが、東北弁はいかにものどかで温かく、素朴な人たちが心からお芝居を楽しんでいるのがよくわかったからだ。
 そして道路を隔てて帝国ホテルへ。ここは道路に面してディオールの店がある。オーガンジーのそれはそれは美しいイブニングドレスがウインドウに飾ってあった。自慢じゃないが、ここに足を踏み入れたことは一度もない。
 こわごわドアを押す。中はピンクと白でとっても綺麗《きれい》。うーん、すごいぞ。広報の人も来てくれて試着をした。ディオールにどうしてこんなものが、と思うような大きいサイズがあった。ラベンダー色なんて、普段の私が絶対に着ないものだ。いつも紺か黒しか着ない私だけれど、たまにはこんな綺麗な色を着たいな。だって春だもんね。
 が、着替えようと試着室に入った私は気絶しそう。原稿を必死で書き、電車にとび乗って劇場へ向かった。ズーズー弁に三時間とり囲まれ、ここに来てみれば髪はボサボサ、黒いセーターには毛玉と猫の毛がこびりついている。そこへいくとディオールの広報の女性とかお店の人は、私とはまるで別世界に住む人だ。ピンクと白のお店の中でもぴしっとして隙ひとつない。
 やはり�美人服�の威力だと私は思った。私とここのコンセプトはまるで違うんだ。でももう後には退《ひ》けない……。
 そして服の貸し出しが嫌いな私は、そのスーツを買いました。合わせる靴を持ってないからピンクの靴も買いました。男の人とデイトする時に着ようーっと。「ヴァンサンカン」に出てくる女の人みたいに、私もこれを着たら男の人に大事にされるかしらん。こんな予感をおぼえるのは初めての体験だ。
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