モンゴルへちょいと遊びに行ってきた。
私もそれまで知らなかったのであるが、日本からモンゴルへはちゃんと直行便が出ている。ただし関西空港からであるが、飛び立って四時間半という近さだ。
さてモンゴルというと、遊牧民だとか羊の大群を思い浮かべる人が多い。私もそうであった。人々はゲルと呼ばれる移動式のテントに住んでいると信じていたのだ。だが首都ウランバートルは人口六十三万人の大都市である。高層ビルが建ち並び、車もいっぱい走っている。社会主義をやめてからディスコが何軒も出来たが、そのつくりが面白《おもしろ》い。ロシアが建てかけてやめた、なんとかセンターのような豪壮なビルの中にあるのだ。しかもネオンをほとんどつけていないので、旅人はちょっとわからないかもしれない。
円柱のある廃墟《はいきよ》のようなビルの中に入っていくと、突然出現する巨大なディスコ。かなり内装も凝っていて、音楽も最新のものだ。しかし悲しいかな、ほとんどの若者のステップがちょっと……。単に体を揺らしているだけなのである。家族連れも多く、パパとママの横で娘が踊りらしきものをしている光景は、正直言ってまだまだ�発展途上�という感じである。
「ああ、日本から神田うのちゃんみたいなコをいっぱい連れてきて、ここに立たせたらどんなにびっくりするだろうかな」
と私は思った。実はモンゴルに発つ前の晩、共通の知り合いに誘われて神田うのちゃんと焼き肉を食べたばかりなのである。顔がちっちゃくてバービー人形みたいに可愛かったうのちゃん。
実はモンゴルでひとつ講演をした。「日本の若い女性について」ということで、いろいろスライドを見せたりしたのであるが、神田うのちゃんに来てもらい、
「これが日本の最先端のいちばんカッコいいコです」
と言ったら、みんなどんなに喜んだかしらん。そしてディスコで踊ってもらう。みんな目をパチクリするだろう。そして真似し始める。本当にいい日蒙《にちもう》親善になると思うなあ……。
さて私たちのグループを、いろいろ案内してくれているモンゴルの�遊び人�は、今度はナイトクラブに行こうと言い出した。そこは踊ることも出来るし、途中でストリップのショウも入る。もちろんそのテの女の人が客引きのために来ている、ちょっといかがわしい場所だそうだ。
行ってみると、そこはディスコなんかと全然違う。薄暗い照明に、テーブルがぽつりぽつりと並べられている。隣にはバーカウンターがあり、そのテの女性たちが客を物色しながらチビチビ飲んでいる。
「ちょっとイヤだなあ……。女が来るところじゃなかったかなあ……」
などと思い始めた時、ぞろぞろと女のコが入ってくるではないか。かなり派手な一行であるが、どうみてもそのテの女の人には見えない。十八ぐらいの女のコがテーブルを三つ陣取ってパーティーを始めたのだ。しかもシャンパンなんかを抜いている。
「あのコたちの正体はいったい何なんだ。オレはどうしても確かめたい」
私の友人がすっくと立ち上がり、彼女たちのテーブルに近づいていった。たちまちわきあがる、
「イヤだ〜〜」
「ウソ〜〜ッ」
といった感じの女のコたちの嬌声《きようせい》。やがて友人が戻ってきた。
「友だちのバースデーパーティーをしてるんだって。よかったら、一緒に飲みましょうだって」
近づいてみて驚いた。この女のコたちはいったい何なんだ。メイクも髪型も、胸が半分見えるスリップドレスも、日本の西麻布にいる女のコたちとまるっきり変わらないじゃないか。
英語が喋れるので話をしたところ、モンゴル航空のスチュワーデスとか、外資系会社に勤める女のコたちであった。
「スチュワーデスっていうのは、どこの国でもよく遊んでいるなあ。世界共通だよな」
と男友だちがしきりに感心していた。
ちなみにモンゴル人というのは、いちばんDNAが日本人と近い。中国人や韓国の人よりもずうっと近い。だから彼女たちにしても、日本語を喋らないのが不思議なぐらいだ。
やがて彼女たちは踊り始める。私はまた、のけぞるぐらい驚いた。このステップのうまさは何なんだ。かなり踊り慣れていると見た! 長い髪のコがいて、それをかき上げたり、梳《す》いたりして踊るのだけれど、色っぽいったらない。細い腰を巧みにくねらせる。そのテの女のコたちがフロアに入ってくると、仲よく手をとり合って踊ったりするのはいい感じだった。
美人でカッコいい女のコたちは、女だけでツルむ。本当に踊りたい時は、男の目を無視して自ら陶酔の世界に入っていく。それも日本の女のコたちと同じだ。
私たち一行はお誕生祝いということで、あと二本シャンパンを抜いてご馳走《ちそう》した。
「また遊ぼうね」
「日本に行ったら会いましょう」
と手を振る彼女たち。
「モンゴルって、すげえ面白いとこだなあ」
と我々はため息をついたのである。