この号が出る頃には、もう古い話題になっているはずだけれども、ワールドカップ、残念だったけど、まあ、よかったですねぇ。
口惜しいこともあったけど、サッカーがこんなに面白いものだったかって、しみじみと思った。それにしても選手たちのカッコよかったこと。
グッチのスーツに身をつつむ中田も素敵《すてき》だけれども、彼はサッカー場で見るのがやっぱりいちばんだ。そして川口のあの笑顔、名波のクールな表情……と日本選手に見惚《みと》れる私である。
さて私は、長いことスポーツ選手に興味を持たなかった。というよりも、私と縁のない人たちだと思っていた。なぜならスポーツ選手っていうのは、女性の好みが単純なんだもん。モデルさんとかタレント、スチュワーデスとかいうのが好きなんだもん。
たまには野村監督とか、落合といった変わった好みを持つ人もいるけれど、それでもみんな、キレイ、女らしい、といったわかりやすい、万人好みなのを選ぶ。
学生時代からそうだった。私の通っていた高校は、旧制中学の流れを汲《く》む、男がやたら多い学校であった。女のコはクラスに十人もいない。美人のコは近くの女子校へ行き、ガリ勉タイプのブスばっか来ると、えらい不評であった。
が、ごくたまには美少女が入学する。するとマネージャーにしようと争奪戦がすごいのだ。可愛いコから、ラグビー部、サッカー部、野球部と強いクラブの順に決まっていく。
もちろん私には、お声がかかるはずもない。私は純粋な友人として、ラグビー部の男のコたちと仲良くなり、よく一緒に遊んでいた。煙草をおぼえたのも、彼らの部室だったと記憶している。ラグビー部の男の子の家に毎日のように遊びに行き、夕ごはんまで食べたりした。
ところがその男のコったら、私の親友にラブレターを出していたのだ。彼女はピアノがうまい、髪の長い女のコであった。
あの時は悲しくって泣いたっけ。大人になってから同じような事件はいくらでも起こったが、やっぱりあれが始まりであった。いくら友だちの関係といっても、あんなに仲良くしていたのに……。裏切られたような淋《さび》しい気分になった私。
今、つくづく残念に思うことがある。スポーツマンと一度でも恋愛しとけばよかったなあ。彼らはいい意味で、オスのシンプルさを持っている。いい女が好きで、惚《ほ》れたとなると強引で直進してくる。私の知っている有名なスポーツ選手は、婚約者のいる女性を無理矢理奪い取ったという過去をよく自慢していたものだ。
その代わり、嫉妬《しつと》深く、女性に対して非常に保守的である。一流のスポーツ選手なら、なおさらだ。奥さんがたとえばアナウンサーとか教師といったキャリアウーマンをしていても、それを辞めさせて専業主婦にする。いい妻や母として、いつでも家にいておいしい料理を作ってもらいたい。
彼らの女性に対する願望はちょっと古くさいけれども、その分、女も、シンプルなメスになれるのだ。
仕事と家庭との両立、などと悩まなくてもいい。男と女の駆け引きも無用だ。
「とにかくオレのものになれ。オレが食べさせてやるから、ガタガタ言うな」
と言う男は、今の時代にあって新鮮である。女は、男の愛情の中にどっぷりつかっていればいい。
まあ、スポーツ選手は多情な人も多く、浮気性のところもあるみたいだが、少なくとも何年かは幸福のままでいられる。やっぱりそういうのっていいよなあ……。
それにスポーツ選手というのは、背が高くカッコいいから、一緒に歩いていてもかなり得意な気分。
私が通っているスポーツクラブには、かつて名選手としてならした野球の某評論家がいる。この方がどういうわけか私のことを気に入ってくれて、たまに会うと、
「マリちゃん、元気ィー」
とぎゅっと抱きしめてくれる。その体のたくましさと気持ちよさ。ふざけて抱かれただけで、こんなにいい気分なんだから、もしベッドの上で本格的にナンカされたら、すっごくいいに違いない……。
私は雑誌やテレビで野球やサッカー選手の奥さんを見るたびに、思わずにいられない。この人たちって、すごい勝利者なんだわ。何人っていう女の中から勝ち抜いて、こうして妻の座を手に入れたんだわ。その誇らしさが、彼女たちをますます美しくしている。
中田の恋人って、どんな人だろう。大金持ちやエライ人の奥さんや恋人は、全然|羨《うらや》ましくない。けれどもスポーツ選手の愛する人っていうと、私はそれだけでおそれいっちゃうのだ。恋愛と青春をめいっぱい楽しんでいる、っていう感じがする。