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美女入門76

时间: 2019-07-30    进入日语论坛
核心提示:くたばれ! 肉じゃが女 いつもすごい剣幕で、私に原稿の催促をするテツオが、ぴたりと電話をかけてこなくなった。 試しに、三
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 くたばれ! 肉じゃが女
 
 
 いつもすごい剣幕で、私に原稿の催促をするテツオが、ぴたりと電話をかけてこなくなった。
 試しに、三日も〆切りを遅らせたが、それでも連絡がない。おかしい、おかしいと思っていたら、急病で寝込んでいたということであった。やっぱりあのトシまで、男が独身でいるとろくなことがない。テツオの食生活はほとんど外食なのである。栄養不足にアルコール過多。
 やっぱり私のように、料理好きでやさしい奥さんを一日も早く見つけるべきだ。
 ところでこのあいだの「アンアン」はお料理の特集号であった。毎年いつも春になるとこの企画をするが、私のようなプロから見ると、意図がバッチリわかる。四月になると、多くの女のコがひとり暮らしを始める。ひとり暮らしの女のコが、真っ先にすることは彼をお泊まりさせることだ。だからお料理特集が組まれるわけでしょ。
 夜は二人でワインを開けるとする。そんな時にちょっと気のきいたお料理をつくりたい。それよりも、そんなことよりもさ、朝、起きた時に、何を用意すればいいのかしらんと、女のコは悩むわけだ。焼きたてのブリオッシュにカフェオレ、クレソンをたっぷり使ったサラダ……なんて夢はふくらむ。
 昔、昔、「肉じゃが信仰」というものがあった。男はお袋の味に弱い。中でも肉じゃがが大好物。彼が泊まったりした時に、こういうものを出すと大感激されます。そして彼のハートはあなたのもの、なんて書き立てる女性雑誌があって、当時の女のコはかなり本気になったものだ。
 が、私はこの肉じゃが何トカというやつが大嫌いであった。肉じゃがなんて、ビンボーくさいじゃないか。肉じゃががビンボーくさいのではない。そういうもんで男を釣ろうとしている女がビンボーたらしいんだ。料理をつくろうと、つくれまいと、いい女はいい女。モテない魅力ない女は、やっぱり魅力ない女なのである。
 いい女がさりげなく、カッコよく、手早くお料理をつくる。だから、男の人は大感激するんだ。
 最近の若い料理研究家は美人揃いで、エレガントな人が多い。エプロンなんかしないでグラビアに出てくるが、これがとてもサマになっている。中でも井上絵美さんは本当にキレイ。実際、彼女はとても親切な人で、ささっとケーキやパンを焼いて持ってきてくれたことがあったが本当においしかった。あんなに素敵にマニキュアした指から、どうしてこんなにおいしいものがつくれるんだろうと思うぐらい。
 これから料理する女は、これでなきゃね。フランスやイタリアの食材にも詳しくて、ベトナム料理のライスペーパーもうまく戻せる。そんなにウンチクは垂れないが、ワインのことも少しは知っている。何よりもおしゃれでキレイ。こういう女が、エプロンをかけないままキッチンに立って、ワインを飲んだりお喋《しやべ》りしたりしながら、おいしい一品をつくる。こういうのがカッコいいんだわ。男が寝てる間に、必死にオカカ削ったり、煮干しの頭とったりするなんてもう古い。そういう女に限って、寝癖ついてたり、寝起きの顔がむくんでいるはずだ。
 いい女というのは、男と一緒に起き、男にも何か命令する。そして男がコーヒーを淹《い》れている傍らで、レタスをサラダボールにちぎったりする。その間、ゆで玉子をつくる。だけど昔の女みたいに、輪切りにして飾ったりはしない。どうするかというとミモザにしたりするわけだ。そして冷蔵庫の中から、ハードタイプのチーズやアンチョビを出してきて、ちょっと飾る。こういうセンスを持っている人って、たいてい美人でおしゃれ。いや、美人でおしゃれだからこういうことが出来るのね。
 さて昨日のことであるが、近所に住む友人のところへ遊びに行った。もう散りかけた桜を眺めながら、パーティをしようということになったのだ。友人はこのあいだ北京で買ったというチャイナジャケットを着ていたが、よく見ると桜の模様である。
 それからナプキンはピンク、お皿は桜の花の形、箸置《はしお》きは花びらの形であった。お料理は煮物とサラダが主であったが、どれも白ワインに合うように工夫されている。
 やがて彼女のパートナーが、そば打ちの実演を始め、皆の拍手が起こった。そして頃合いを見て、彼女のつくったかき揚げが運ばれる。海老《えび》と三つ葉を使った大ぶりのものであるが、揚げたてのそれのおいしかったことといったら。鴨南ばんのおつゆも、クロウトはだしであった。
 そこらへんのオバさんがつくったんじゃない。仕事も一流の、うんと素敵な彼女がよくこれだけのものをつくれるなあと、私は舌を巻いたのである。
 今度引っ越しをする私であるが、キッチンはクッチーナのオープンキッチンにした。私はこの言葉を呪文《じゆもん》のように唱える。
「美しい女は、料理をしている最中も美しい」
 このことにもっと早く気づいていたら、あのアパートで、あんなに頑張らなかったわ。ひとつのコンロで、スープと酢豚をつくったケナゲな私。しかし努力に見合う成果は何も得られなかった。まず女は外で男に金を遣わせる女になる。そしていずれ時々は何かをつくってやる。あくまでも努力してるところを見せちゃダメ。暑苦しい料理と女はいちばん男に嫌われるんだから。
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