「アンアン」のお姉さん雑誌「ギンザ」は、私の愛読誌である。このあいだの特集は、「ジル・サンダーがおしゃれ上級者に支持される理由」だって。これは私のことじゃないかしらん。
ついこのあいだ、ジル・サンダー青山店へ行き、どっちゃり冬物を買ったばかりなのである。パンツ二枚にニット、ダウンジャケットに靴二足、あそこはお値段がいいもんで、もう大散財でありました。
ジル・サンダーは、最近女優さんもよく着ている。昨年のこと、紀尾井町店に行ったらとても目立つコがいた。眼鏡をかけて、あっさりした格好をしているのであるが、キレイキレイ光線をあたりに放っていた。ようく見たら、鈴木保奈美ちゃんだった。
それからすぐ婚約記者会見があったのであるが、あの時着ていたのはジルである。もしかすると、記者会見用のお洋服を買っていたのかもしれない。
このあいだ青山店でお買い物をしていた時は、すぐ目の前でコートのラックを見ている女の人がいた。後ろ姿であったが、
「ふつうの人じゃない!」
と私は確信した。着ているものがアカぬけていたうえに、脚の形がとてもキレイなのだ。ものすごく暑い秋の日が続いていた頃で、その人は素足だったのだが、ふくらはぎの白さが目をひいた。
やがて彼女は振り返る。なんと鈴木京香さんじゃないの。キレイなのは当たり前よね。彼女とわかって、私は私なりに気を遣いました。彼女が試着室に入ろうとしていたので、その前のソファから移動して、遠く離れた椅子に腰掛け、靴の試し履きを続けた。
そりゃ、そうでしょう。試着室の前にハヤシマリコがどっかり座っていたら嫌な感じよね。帰りがけ、私が店を出ようとすると、鈴木さんも試着室を出て私に軽く会釈をしてくださった。私は申し訳ない思いで胸がいっぱいになる。
こんな美しい女優さんに気を遣わせちゃってごめんね。私はそんなに、こうるさい意地悪い女じゃないのよ。何でもかんでも書いちゃう女じゃないのよ(書いちゃったけどさア)。なんてことを私は言いたかったわけ。
そう、そう「ギンザ」はね、かの野口強さんが業界を超えた有名人としていっぱい登場している。野口さんというのは、そお、かの中山美穂ちゃんの彼だ。その前は松たか子ちゃんとも噂があった。モデルをしていたぐらいだからすごい美形の、売れっ子スタイリストである。「ギンザ」は、この野口さんがホストの対談ページもあるし、彼が最近買った小物から、住んでいるお部屋、いきつけのお店までちゃんとグラビアで紹介されている。まるでSMAPか金城武みたいだ。
それにしても、世の中変わったとつくづく思う。ちょっと前まで、女優さんのお相手というのは映画監督とかテレビディレクターであった。ヘアメイクとかスタイリストというのは、女性が多い職業ゆえに、ちょっと女っぽいイメージがあった。恋愛の相手にスタイリストというのは、私の長いワイドショー&女性週刊誌人生でもあまり聞いたことがない。
ところが今や、芸能人恋愛図の中心は、スタイリストである。ヘアメイクや美容師の人気は凄《すご》くて、いま女子高生が恋人にしたい職業のナンバー1は、美容師さんだという。
これはやっぱり�癒《いや》し�というものなんだろうか。女だったら、誰でも経験があると思うが、体に触れてくる人というのは、それだけで特別の感情を持ってしまう。担当の美容師さんには、心を許していろんなことを喋《しやべ》ることがある。撮影の時は緊張を強いられるものであるが、ヘアメイクさんやスタイリストは、個室に入って女優さんを励まし、元気づけ、ずうっと味方になってくれる。あれがやっぱり恋愛感情に発展するんだろうか。
テツオは野口氏と仲がいいみたいだ。
「ギンザ」の�野口�特集でわかったのであるが、彼とテツオとは、かつて「花椿」で一緒に素人モデルをした仲だったのである!
私も彼には興味がある。天下の美女、ミポリンが惚《ほ》れ込んだ男なのだ。どんな魅力に溢《あふ》れているんだろうか。どんな話し方をするんだろうか。
野口氏はわかりやすいハンサムだが、私の知り合いのひとりで、外見はまるっきりサエないのだが、やたら女にモテる男がいる。彼はその昔、超美人の女優さんを恋人にしていた。どういうわけか本当に、つき合っていたのだ。彼はこのことが自慢で、話の端々に必ず出す。すると女たちは、
「あれだけの美女が好きになったんだから、きっと何か魅力があるのだろう」
と近づいてくるようだ。私はこれを「アユの友釣り作戦」と呼んでいる。つまりオトリの美人がひとりいれば、後は面白いように美人がひっかかってくるみたいだ。
が、女の場合この反対は起こらない。一回でもうんとハンサムとつき合うと、女たちからは嫉妬《しつと》され、男からは「外見で相手を判断する女」と遠ざけられる。ブ男が美女を射止めると男は尊敬されるが、その反対は起こらない。
「彼女には、きっとすごい魅力が秘められているんだ」
なんて好意的にとる人は少ない。外からわかりづらい女の魅力って、本当に損よね。ああ、京香ぐらいの美貌《びぼう》を持っていたら……。