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美女入門134

时间: 2019-08-22    进入日语论坛
核心提示:地元民の強み!表参道にもかすかな春の気配。こんな時は例のジル・サンダーのスニーカーを履き、あちこち歩きまわる私である。お
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地元民の強み!

表参道にもかすかな春の気配。
こんな時は例のジル・サンダーのスニーカーを履き、あちこち歩きまわる私である。お買い物だっていつもの穏田《おんでん》商店街ではなく、青山の紀ノ国屋ストアへ行く。ちなみにここのイギリスパンはすごくおいしい。薄めにスライスしたものをカリカリに焼き、バターとマーマレードをつけ、アッサムの紅茶でいただくと最高だが、一年三百六十五日ダイエット中の私は何もつけないようにしているけどさ。
そして紀ノ国屋ストアの帰り、買い物袋をぶらさげてゆっくりウインドウショッピングを楽しむのが、地元民ならではの歩き方かしらん(イヤらしいな)。
私がまだビンボーで若かった頃、参宮橋《さんぐうばし》に住んでいたことがある。小田急線沿線の小さな駅だ。ここは明治神宮の裏側に当たる。当時からミエっぱりの私は、表参道の住民に見られたくていろいろ工夫したものだ。
毎朝一時間以上かけて、明治神宮の境内と森をつっ切り、原宿の駅前のパン屋までバゲットを買いに行った。バゲットこそ、私は都会人の証《あかし》だと思っていたのである。
それを持ってサンダル履きで、しばらく表参道をあちこちうろうろした。おかげで家に帰ってくるころには、ぐったりして何も出来なかったわ。六畳ひと間1DKのアパートに住む私にとって、神宮の向こう側は夢のようにカッコいい世界であったのだが、どうしてあんなに無理してたんだろう。
今は古くて狭いとはいえ、原宿のど真ん中のマンションに住む私。あちこち歩きまわらなくて何をするんだ。
最近、表参道には新しいビルやお店がいっぱい出来たが、もちろんちゃんとチェックしている。話題は何といっても、某Aビルであろう。このオープニングパーティに誘われたものの行かなかったが、神田うのちゃんとか藤原紀香ちゃんとかがイブニングドレスで出席して、それはそれは華やかだったようだ。
このあいだ中をぶらぶら見ていたら、背の高いものすごく綺麗《きれい》な女のコがエレベーターを降りてきた。松嶋菜々子ちゃんであった。一回対談で会ったので見知らぬ仲ではない。挨拶《あいさつ》をする時、ついでに傍らにいた女性雑誌の編集長を紹介した。彼女こそ業界一の美女と呼ばれるHさんで、このページでもその美しさを何回か書いたことがある。
皆が言うには彼女は、松嶋菜々子ちゃんを大人っぽくさせた顔という。早く言えば、三十代後半のHさんには、菜々子ちゃんにはない大人の色香がある。こうして二人が向かい合うと確かにそっくりだ。私は嬉《うれ》しくて嬉しくてたまらない。さっそくやってきたテツオに話した。ちなみにテツオとHさんはケーオー大学のクラスメイトである。
「ケッ、どこが似てるかよ。あんなオバさんと一緒にしたら、松嶋さんに失礼だぜ」
すっかりオジさんになった自分のことを棚に上げて言う。
ところがこのAビルであるが、外観はニューヨーク五番街のおしゃれな建物という感じなのであるが、売っているお洋服がいまひとつである。チョコレート売り場やインテリアの階はしゃれているのに、ファッションとなると無難なOLの通勤服という感じである。このあたりが私にはよく理解出来ない。
が、ここでの散策を終えると、私は表参道を少し戻り、伊藤病院の裏手へと向かう。ここにクレープ屋さんが開店したばかりなのだ。フランスの田舎を思わせるような木のつくりで、ランチはチーズとハムのクレープにサラダがついて九百八十円。味はまあまあであるが、特筆すべきことはここの店員が全員フランス人ということ。
「ボンジュール」
「ウイ」
というフランス語がとても新鮮だ。今の東京はイタリア人に占拠されていて、どこへ行っても「ボナセーラ」「シィ!」という言葉ばかりだ。そんな時にフランス語で応対されると、とてもゆったりとした優雅な気分になれるから不思議。
このあとは�パレフランス�の方へ行って、「オーバカナル」のオープンテラスでお茶をすることもあるけれど、その地下の「ウエスト」のクラシックな雰囲気も捨てがたい。
などと書くと、いかにもおしゃれな日常を過ごしているようであるが、そこはそれ、地元民の強みでノーメイクで通す私である。冬はボロ隠しともいえるコートもあるし、つい気軽な格好で出かけちゃうのよね。
テツオはそんな私をサイテーという。
「いくらうちのまわりをうろつくにしても、化粧ぐらいして、もうちょっとマシな格好が出来ないの」
と叱られた。うちの夫も最近の私を見て、
「冬眠中のクマみたいだな」
とため息をつく。うちにいる時、いつもモンゴルで買った白いもこもこしたセーターを着ているからだ。
今、テツオが原稿を取りにやってきて、ついでにランチをとることにしている。彼はこの冬、プラダのハーフコートがお気に入りでそればっか着ていた。私とそう変わらないような気がするんだけど……。
私はクリーニング代をケチって、冬はなるべく同じコート、同じセーターを着ているようにしている。やっぱりこれってサイテーの女であろうか。でもいいの、表参道に住んでる人は、何をしても許されるの。
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