六二 また同じ人、ある夜山中にて小屋を作るいとまなくて、とある大木の下に寄り、魔除けのサンヅ縄をおのれと木とのめぐりに三《み》囲《めぐり》引きめぐらし、鉄砲を竪《たて》に抱へてまどろみたりしに、夜深く物音のするに心付けば、大なる僧形の者赤き衣を羽のやうに羽ばたきして、その木の梢に蔽ひかかりたり。すはやと銃を放せばやがてまた羽ばたきして中空を飛びかへりたり。この時の恐ろしさも世の常ならず。前後三たびまでかかる不思議に遭ひ、そのたびごとに鉄砲を止めんと心に誓ひ、氏神に願掛けなどすれど、やがて再び思ひ返して年取るまで猟人の業を棄つることあたはずとよく人に語りたり。
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