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遠野物語90

时间: 2019-08-25    进入日语论坛
核心提示:九〇 松崎村に天狗森といふ山あり。その麓なる桑畠にて村の若者何某といふ者、働きてゐたりしにしきりに睡くなりたれば、しばら
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 九〇 松崎村に天狗森といふ山あり。その麓なる桑畠にて村の若者何某といふ者、働きてゐたりしにしきりに睡くなりたれば、しばらく畠の畔《くろ》に腰掛けて居眠りせんとせしに、きはめて大なる男の顔はまつ赤なるが出で来たれり。若者は気軽にて平生相撲などの好きなる男なれば、この見馴れぬ大男が立ちはだかりて上より見下すやうなるを面にくく思ひ、思はず立ち上がりてお前はどこから来たかと問ふに、何の答へもせざれば、一つ突き飛ばしてやらんと思ひ、力自慢のまま飛びかかり手を掛けたりと思ふや否や、かへりて自分の方が飛ばされて気を失ひたり。夕方に正気づきて見ればむろんその大男はをらず。家に帰りて後人にこの事を話したり。その秋のことなり。早池峰の腰へ村人大勢と共に馬を曳きて萩を苅りに行き、さて帰らんとする頃になりてこの男のみ姿見えず。一同驚きて尋ねたれば、深き谷の奥にて手も足も一つ一つ抜き取られて死してゐたりといふ。今より二、三十年前のことにて、この時の事をよく知れる老人今も存在せり。天狗森には天狗多くゐるといふことは昔より人の知る所なり。
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