二七 昔、盲の夫婦が丹蔵という小さな子を連れて、栗橋村の早《わせ》栃《どち》まで来た時に、丹蔵は誤って川に落ちて死んだ。そうとは知らずに父母の盲人は、しきりに丹蔵や丹蔵やと呼びまわったが、少しも返事がないので、はじめてわが子の川にはいったことを知り、あああの宝をなくしては俺たちは生きている甲斐がない。ここで一緒に死ぬべえといって、夫婦も橋から身を投げてしまった。村の人たちはこれを憐れに思って、祠を建てて祀り、祠の名を盲《めくら》神《がみ》といった。今でも目の悪い者には御利益があるといって、祠の辺の沢の水を掬《く》んで、眼を洗う者が少なくない。