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遠野物語拾遺204

时间: 2019-08-26    进入日语论坛
核心提示:二〇四 これは大正十年十一月十三日の岩手毎日新聞に出ていた話である。小国のさきの和《わ》井《い》内《ない》という部落の奥
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 二〇四 これは大正十年十一月十三日の岩手毎日新聞に出ていた話である。小国のさきの和《わ》井《い》内《ない》という部落の奥に、鉱泉の涌《わ》く処があって、石館忠吉という六十七歳の老人が湯《ゆ》守《もり》をしていた。去る七日の夜のことと書いてある。夜中に戸を叩く者があるので起き出て見ると、大の男が六人手に手に猟銃を持ち、筒口を忠吉に向けて三百円出せ、出さぬと命を取るぞと脅《おど》かすので、驚いて持合せの三十五円六十八銭入りの財布を差し出したが、こればかりでは足らぬ。ぜひとも三百円、ないというなら打ち殺すと言って、六人の男が今や引き金を引こうとするので、夢中で人殺しと叫びつつ和井内の部落まで、こけつまろびつ走って来た。村の人たちはそれはたいへんだと、駐在巡査も消防手も、青年団員も一つになって、多人数でかけつけて見ると、すでに六人の強盗はいなかったが、不思議なことには先刻爺が渡したはずの財布が、床《とこ》の上にそのまま落ちている。これはおかしいと小屋の中を見まわすと、貯えてあった魚類や飯がさんざんに食い散らされ、そこら一面に狐の足跡だらけであった。一同さては忠吉爺は化かされたのだなと、大笑いになって引き取ったとある。この老人は四、五日前に、近所の狐穴を生松葉でいぶして、一頭の狐を捕り、皮を売ったことがあるから、さだめてその眷属が仕返しに来たものであろうと、村ではもっぱら話し合っていたと出ている。
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