二三二 やはり前と同じ頃の話である。すさまじい大吹雪のある夜のこと、誰か佐々木君の家の戸を叩く者があるので出てみると、引きずるように長い刀を差した、美しい二人の若侍が家の外に立っていて、俺たちは昼間は隠れて、夜旅をしている者だが、食べ物がないから、どうか泊めてくれと言った。かわいそうに思ったが、その頃はお上の法《はつ》度《と》で、かような人たちを泊めることはならなかったので、二人を村の熊野堂に案内して、米味《み》噌《そ》を持ち運んで〓《しの》がせた。こうして二、三日の間二人の侍は堂内に隠れていたが、密告する者を怖れたのか、ある夜どこかへ立ち去って、朝行って見たらいなかったという。