二六一 家に残った者が旅先の一行の動静を知るために行なう占いの方法もある。附《つけ》木《ぎ》または木切れなどを人数だけ揃え、それに各々一行の者の名前を書き込み、盥《たらい》などの水の上に浮かべる。そうしてこれらの木片の動き具合によって、旅先の様子を察することができる。佐々木君の祖母が善光寺詣りに行った時は、同行二十四、五人の団体であったが、留守中同君の母はこの人数だけの木切れを水に入れておき、今日は家の婆様は誰々といっしょに歩いている。今夜は誰々といっしょに歩いている。今夜は誰々と並んで寝たなどと言っておられたという。ある日のこと、いつもいっしょに歩く親類の婆様と家の婆様との木切れがどうしても並ばなかったので、幾度も水を掻き廻してやり直したが、やはり同じことであったから、何かあったのではないかと心配した。帰ってからその話をすると、ほんにあの婆様とは気が合わぬことがあって、一日離れていたことがあると語った。伊勢から奈良へ廻る途中のことであったそうな。また先年の東京の大地震の時にも、村から立った参宮連中の旅先が気がかりであったが、やはりこの方法で様子を知ることができたという。