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落語百選58

时间: 2019-09-15    进入日语论坛
核心提示:つるつる「お清《きよ》さん、ちょいと手拭《てぬぐい》そっちィ掛けとくんな、あァ、あの師匠は出かけた? ああそう。お梅ちゃ
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つるつる

「お清《きよ》さん、ちょいと手拭《てぬぐい》そっちィ掛けとくんな、あァ、あの師匠は出かけた? ああそう。お梅ちゃんまだお湯から帰りませんか? あァようがす、あッはァどうもね、昨夜《ゆんべ》のお客さまにァおどろいた。いえ『今晩ありがと存じます』って座敷へ入るとたんだよ、柔道に凝ってるんだってさ、お客さまがさ。いきなり、だァんって投げられちゃった。尻《けつ》っぺたこんな大きな痣《あざ》ッ、昨夜《ゆんべ》っからいままで飲み続けってんだ、どうもおどろいた、なんぼ商売とはいいながら身体《からだ》が続きません。これから一杯飲んで寝ますゥ、ああ。ああちょっとォ……三河屋の小僧さんちょっとすまない、いつもの五合ね、えッへッ、内証で台所の方へ忍ばしといてくんないか。そいからあのね、すまないが、魚金へことづけしてくんないか、刺身を持ってくるように、ああ、とろ[#「とろ」に傍点]のところをぶつ[#「ぶつ」に傍点]に切ってね、山葵《わさび》を余計利かして、ああそう? お頼申します、ご苦労さん。……おやッ、お梅ちゃん、お帰んなさい。へへッ、あァたがねェお湯から上がんのをね、あたしァ男湯の方で待ってたン、いっしょに帰ってこようとおもって……それがあたしが待ちきれないてえやつ、先ィ帰ってきちゃったン。たいへんなんですねェ、今日《こんち》はこの鬢《びん》の具合いがねェ、な……なんだい、お言葉なしときたね。すうゥっと向こうの部屋ィ入っちゃった。けどいい女だなァ、あのくらいな芸者てなァいないねェ、おれァ四年半|岡惚《おかぼ》れしてるんだがなァ。『岡惚れも三年すれば色のうち』てえことがある。一年半超過してるんだからね。師匠はいないしと、ひとつご機嫌《きげん》をうかがって見るかな、あは。……お梅ちゃん、えッへッへッ、あァたァ、鏡台の前で、諸肌《もろはだ》脱いで、えへェ、お化粧《けえけえ》ですか? いい肌ですねェ……あァたの肌てえものは。餅肌、羽二重肌ァ」
「そっちィ行ってらっしゃいよォ。男の入って来るとこじゃあないのよ」
「うッふッふゥなんですよォ、いいお乳房《ちち》ですなァあァたのお乳房《ちち》てえものは。え? 麦|饅頭《まんじゆう》へこの隠元豆をのせたようですな、えッへッへ、ちょいと……」
「お師匠さんに言いつけてよッ」
「なんですよう、あァた大きな声で。あたくしはねェ、ほんとうのことを申し上げるとねェ、あァたに四年半岡惚れしてン。え? ままになるなら三日《みつか》でもいいからどっか静かなところへ行って、あたくしとあなたと差し[#「差し」に傍点]でもってご飯をいただきたいとおもってる。……ただの三日《みつか》。で、三日《みつか》がいけなければ二日《ふつか》でもよござんす。二日があァたいやだとおっしゃれば一日《いちんち》でもいいんだ。だから半日にしようじゃございませんか。どうです? 三時間……二時間にしましょう。一時間……三十分……十五分……十分……五分……三分……二分……一分……なし……」
「なにを言ってんの一八ッつァん、おまえさんほんとうにそんなことォ言ってんの?」
「真剣……まったく、ほんとうに」
「そおォ? そうならうれしいけど、あたしゃおまえさんみたいにね、色だの恋だのなんて、そんな浮気っぽい話ならごめんこうむるのよ、曲がりなりにもあたしみたいなものでも、女房にしてくれるッていう話なら、ほんとにあたしうれしいとおもってんのよ」
「へえ?! あたくしはねェ、あァたが女房ンなってくれればねェ……あたくしはもうそのばかなよろこび……」
「一八ッつァんおまえさん自惚《うぬぼ》れちゃあ嫌《いや》ァよ。吉原《なか》にはねェ、大勢|幇間衆《たゆうしゆ》はいる。けれどもおまえさんあんまりいい男じゃァない、けれどもおまえさんは親切だ。あたしゃあ忘れないことがあった。いつだったか、この前|大患《おおわずら》いしたことがあった。おまえさん寝ずに看病してくれてうれしいとおもって忘れないの。どうせ亭主を持たなくちゃァならないんだから、邪慳《じやけん》な亭主を持って、おッかさんに苦労させんの嫌だと思《も》ってそいであたしァおまえさんに話をすんのよ」
「へえッ! あたくしァねェ、あァたが女房ンなってくれればねェ、そりゃァもう親切にしますよ。もう親切株式会社の頭取ンなろうとおもって……いえほんとうに。あァたがねェ、朝、目が醒めるでしょ、とたんにあたくしァねェ、あァたに煙草をつけて出すってえやつだ。ねえッ、あァたが『もう起きたいわァ』ッとくりゃすぐあたくしァもう床をたたんで、へえ、あァたが厠《はばかり》へ行く、あたくしィあとから紙を揉《も》んで……」
「汚いね、この人ァ」
「いえほんとうに、まったく……」
「そおォ? うッふゥ、うれしいわねェ、だけども一八ッつァんあたしァおまえさんのことについて、少ォし気に入らないことがあんのよ」
「気に入らないことおっしゃってくださいな、うかがおうじゃござんせんか、直そうじゃありませんか、なにが気に入らない?」
「おまえさんはお酒を飲むとずぼら[#「ずぼら」に傍点]だからね、どっちがお客さまだかわからなくなっちまって、時間のことはめっちゃくちゃだし、もう芸人はいまいちばんそのずぼら[#「ずぼら」に傍点]がだめよ」
「へッ、大丈夫。一所懸命|真面目《まじめ》ンなって、あたくしァ稼ぎます」
「そう、じゃあわかった。じゃあこうして? 今夜二時を打ったらねェ、あたしの部屋へ来て、いろいろな話があるから。そのかわり、二時が五分遅れても、『あァッ、おまえさんいつものずぼら[#「ずぼら」に傍点]がはじまったんだなァ』ッとおもってあたしもあきらめちまうから、おまえさんもない縁とあきらめてくださいよ」
「へッ、二時が五分? あ、ようがす。二時ンなってねェ、そのかわりねェ、おたく……」
「あっちィ行ってらっしゃい、だれかに見《め》っかるといけないわよ」
「へいッ……へッへッェどうも、ええ? こうとんとォんと運ぼうたァおもわなかったな。『案ずるより生むが易《やす》い』てえのァこのこったな、なんでも男てえ者は度胸がなくっちゃいけませんね、えッ? ものは当たって砕けろてえやつだ……『チンチン……』ッてえとおれが行くてえやつだ。『お梅ッ、二時を打ったから来たよう』ッと、こう言うと怒るかしら?『なんだお梅だなんて。まだおまえさんの女房ンなったわけじゃあないじゃあないか。嫌なやつだよォ』ッてんで、どおォん(と、肘鉄砲)と蹴《け》られちゃっちゃァいけねえからなァ。ここんとこァ丁寧にいこう丁寧に。『お梅さま、一八でございます。二時を打ったからまいりました』『嫌なやつだよ、キザなやつだよ』ッてんで、どおォん(と、肘鉄砲)、こりゃいけねえなァ……軽くいこう軽く、『お梅ちゃん、二時を打ったから来たよう』ッてン、えへェ、『まァよく来てくれたわね。その意気ようッ、忘れちゃあいやァようッ』ってえんで……おや、いらっしゃいまし」
「なァんだ……ばかだなァこいつァ踊ってやァがら」
「あッははは、どうも、大将、おめずらしい、どうなさいましたァ? いいえあんまりお出《い》でがないからねェ、どうなすったかとおもってお案じを申して……」
「なにを言ってやがんだ。吉原ァもう飽きたよ。今日はな、河岸《かし》を替えてな、こいから[#「こいから」に傍点]柳橋で遊ぼうてえんだ」
「柳橋? 柳橋は乙《おつ》ですな、ェェどういうことになるんですゥ?」
「夜っぴて騒ごうてえんだ、いっしょに来いよ」
「あ、さいですか……へえへえ……なるほどォ、ェェ結構ですなッ。えッへッへェ、では、ェェ、今晩ひとつ、手前は助けていただきましょう」
「よせよ。そんなこと言うない、いっしょに来いよ」
「えへッ、それが今晩ちょいと具合いが悪いン、今晩だけ、大将ねェ? 他《ほか》の者《もん》で間に合わしてください」
「よせよ、そんなこと言うな、おもしろくねえじゃねえか、おまえ、お約束でもあんのか?」
「約束てえわけじゃァないんですがな、今、夜は、ちょいと……、へえ。今夜だけ大将ね? 他の者で間に合わしてください」
「そうかい、よォしッ、一八ッ」
「え?」
「おまえいい芸人だなァ、いい幇間《たいこもち》ンなったなァ、おめえァ? そうじゃあねえか言いたくなるじゃあねえか。てめえがこの土地ィ、はじめて出たときなんてッた?『木から落ちたなんとかと同様でござんす。身寄り頼りもございません、どうか一人前の、芸人にしていただきたい』おれァずいぶんおめえを贔屓《ひいき》にしてるつもりだぜ、なあ、ずいぶんおめえをかわい……」
「な、なんですよう……怒っちゃァいけませんよ。あァたにお世話ンなってることはねェ、この土地でだれ一人知らない者《もん》はありません。あたくしはねェ、あなたのためなら真剣に勤めようとおもってますよ」
「じゃ、いっしょに来ねえなァ」
「えへッ……それがね、へッへッ、行かれないわけがあるんですよ」
「わけを言いなよ、な? おれが聞いて『なるほどもっともだ』ってえことがわかりゃあ、おまえにきれいに暇ァやろうじゃねえか」
「さいですか、えへッ、ェェそれでは、お話を申し上げますがね、大将、これは大秘密ですよ……(周囲《まわり》を気にし小声で)当家にねェ、当家に小梅てえ芸者がおりましょ?」
「なにを言ってやんだ、ばかッ。そんなことおまえに聞かなくったってわかってらァ。あのくらいの芸者はないな。どうだ三味線は達者だし、咽喉《のど》は光ってて、とことん[#「とことん」に傍点]がいけて、親孝行で客扱いがよくって、女っぷりがいいし、淑《しと》やかで、あれがほんとうの一流の芸者てえんだ」
「うゥッ、それがだァッ」
「な、な、なんだい、大きな声を出しやァがって」
「それですよ、その小梅なる者がね、あたくしの女房ンなるン。いいえほんとッ、あたくしはねェ、お恥ずかしいお話ですがね、四年半岡惚れしてン……ここの家ィ弟子に来るとたんにあたくしは惚れてるんだ。で、いつか一度はとおもったんだ。今日ァだァれもいないからひとつ当たってみたン、言うことがうれしいやな。『色だの恋だのなんてそんな浮気っぽい話ならごめんこうむる、曲がりなりにもあたしみたいな者《もん》でも、女房にしてくれる話ならば……』どうです、言うことが本筋でしょ? えッへッそいで『今夜ねェ、二時を打ったら来い』って。あたしゃァ行くんだ。『おまえさんはお酒を飲むとずぼら[#「ずぼら」に傍点]だから、二時が五分遅れても、おまえさんのいつものずぼら[#「ずぼら」に傍点]がはじまったんだなァとおもってあたしもあきらめちまうから、おまえさんもない縁とあきらめてくださいよ』と、……あれが、あは、くれぐれも、おほほ、ほほ、申すんですよ。えへ、で、手前が行くてえやつなんだ。チンチンッ……てえと、手前がこのつうッ……、へッへッ、チンチン、つうゥッ……、てえん、きゅうッ……」
「ばかだなこいつァ泣いてやがら」
「へえ、そのような次第でござんすから、今日《こんち》ンところは手前にお暇をいただき……」
「よォしッ、わかった、いいよ。おめえのめでてえことを邪魔したってしょうがねえや、あァいいともいいとも、じゃあこうしな、十二時までつきあえ、な? 十二時ンなったらきれいに暇ァやろうじゃねえか」
「あッ、なるほどッ、いろいろ手があるもんですねェ。十二……それがねェ、えッへッへェ、いまあなたそうおっしゃるんだ。さて十二時ンなって『大将時間がまいりましたから、暇をいただきます』とこう申し上げるでしょ、てえと、あなたがねェ、素面《しらふ》のときならいいんですよ。一杯召しあがってるとそうはいかねえんだあなたってえものァ。『そうァいかねえッ、なんだ、とんでもねえやつだァ』なァんてんであァた怒る性分だよ。あたしゃァ永年ついてんだよわかってんだよ。あッははは、拝むよあなた……堪忍してください。そのかわりねェ、もうほかのことについてはね……もう一心不乱ッ……」
「わかったよ、こん畜生、拝みやがって嫌《いや》なやつだな畜生め、一八ッ」
「へえ?」
「おめえいい芸人だなァ。いい幇間だなおめえは……てめえはなにか、客を断わって、小梅ンとこィ今夜……」
「くわッ、なんッ……なんてえいうことを言うんですよ、あァた、言っていいことと悪いこと……」
「(さらに大きな声で)てめえはなァッ……」
「あなたはねェ、なんてえ方なんですゥ。あたしゃあなたが憎いよあなたが。腫物《おでき》の上を針で突っつくようなことをするねあァたァ……(やけになって)だからまいりますよ、お供をしますよゥ、大将、断わっときますよ、時間がきて、お暇《ひま》をいただくときに、嫌な顔ォしたり怒ったりなんかしちゃァいけませんよ」
「大丈夫だよ、早くしたくしろいッ」
「へいッ、ただいまッ」
「へいどうも……先夜はどうも、へい、一八でございます、樋《ひ》ィさんをお連れ申しました」
「いらっしゃいまし」
「いらっしゃいまし、……どうぞお上がりくださいまし」
「ェェお座敷は? あァ竹の間? あ、さいですか。ェェ大将、竹の間の方で、ただいまご案内をいたします。へえッ、手前ちょっと階下《した》ィご挨拶に……すぐお二階へうかがいますから、へえッ。ェェ、おやッ、どうも女将《おかみ》ィ、ご機嫌《きげん》よろしゅう、お変わりもござんせんで……あいかわらず太ってらっしゃいますな、あッはッはッはァ、お暑いでしょ? へえ、あなたがねェ、このお帳場にいらっしゃらないと形がつかない、妙なもんですねェ。大将は? レキ[#「レキ」に傍点]は? へッ、競馬ですか? お好きですね、この間ね、大きな穴を取ったってッてうかがいました。あッはァどうも、お宅の馬が出たって? おめでとうございます。やりますねェ大将は、じっとしてない、まめ[#「まめ」に傍点]だねェ、へ? 撞球《たま》は突く麻雀《マージヤン》はするゴルフをやる釣りをやる。あたくしもねェ、釣りぐらいはやるんですよ、どうでもかまいませんが、あれ、色が黒くなるんでねどうも……おや? 嬢《じよう》ちゃァん、えへへェ、お湯ゥから上がって、お化粧《けえけえ》ができてェ、えへェお髪《ぐし》がいいからお可愛いなどうも。……坊っちゃァん、なにか持ってますねェ、大きな刀を差して。どなたに買っていただいたン? へ? おとうさんに? へ? 一八を斬《き》るゥ? あッはァッはァッこわいねこりゃどうも。……おやッ、お花|姐《ねえ》さん、先夜はどうも。樋ィさんをお連れ申しました。ェェ、なにをなすってらっしゃるんで? え? 布団の綿《わた》を取り替えてるんですか? あァたが? ははァ恐れ入ったなどうも、じつにあァたには敬服をするなァ。あァたがそんなことォなさらなくてもいいんだ、お針《はり》さんてえものがいるんだから。それを先立《さきだ》ちンなってあァたがその布団の綿を取り替える、そこですよあァたのお偉いところァ、いいえほんとうに。たいへんに銀行の方へ貯金のほうが、へッへッへェ、なんでも人の噂《うわさ》では……なんでも通い帳のほうが、ェェこの、七《なな》、零《れえ》々々々……やなんかんなってると。……おやァ、金ちゃァん、こんにちはァ、樋ィさんをお連れ申しました。いつものお腕前を見せてねェ、おいしいものを、食べさしてあげてくださいよ。お客がほめてますよォ、大きい声では言えませんがね、あァたがいるんでここの家は繁昌するんだって。ほんとにまったく、いい腕。……おやッ……かわいい猫ですなどうも……いいお毛並で……」
「ちょいとォ、一八ッつァん、樋ィさんお呼びだわよ」
「へえい、……ェェどうも、大将、遅くなりました」
「どうしたい? たいへん手間がとれたなァ」
「へッ、ちょっと階下《した》へご挨拶……ええ、へッへッ、ぱらぱらッと……えッへッへェ、申しつけました。えッへェ、繰りこんできますよ、へッ、いつもの連中が、へッ、きれいどこが……いえほんとうに、まったくゥ、えッへッへッへッ、え、ただいま何時でござんしょう?」
「いま来たばかりじゃねえかッ」
「ェェ手前気ンなる」
「気ンなるっておまえ、時計持ってんじゃねえか、時計」
「これ……大将ね、えへッ、時計と見せてね、時計じゃないんですよ。先ィ天保銭《てんぽうせん》が付いてるやつ、えッへッ『一八ッつァんいま何時?』ッてやしょ?『いま八厘《はちりん》』」
「ばかだね、こいつァどうも」
「先夜はどうも……」
「樋ィさん先夜はどうも」
「樋ィさん先夜はどうも」
「さッ、ずっと前へいらっしゃい、ずうゥと前ィいらっしゃい。大将、繰りこんで来ましたよ。どうですおきれいですねェあいかわらずみなさんが……みなさん、大将はねェ、たいへん今日《こんち》はご機嫌がいいんですよ。ねえ大将、あァたご機嫌がいいんでしょ?」
「一八、おまえ働くなよ。いばってろ、てめえ今日、客にしてやるから」
「ありがと存じます。みなさんお聞きのとおり、手前|今日《こんち》はお客。いばってます、働きませんよ。えッへッへェ、みんなに用事《よう》ォ言いつけたりなんかしていばって、えッへッへッへッへへ、ェェどういうことになります?」
「なにかして遊《あそ》びてえなァ」
「そうですなァ、えッへッへッへッへェ、ェェただいま何時で?」
「うるせえなァこいつは、いま来たばかりだい」
「どういうことに……?」
「こうしよう。さァかまわずなァ、おれがここへ紙入れを出そう」
「……どうです、え? 大将はこういうお偉い方ですよ。中座《ちゆうざ》をする幇間《たいこもち》の前へ、『おまえは今夜身祝いがあるから』ってずばりっとこのご祝儀を、くださる……」
「お、おいおい、おめえにやったんじゃあねえや、ただなんの気なしに、ここへ出してみたんだ」
「あ、そうですか。ははァ? くだすったんじゃない? 出してみたン、あなたがなんの気なしに? おやおや、そうかァ……なんでえ……ううん……なんでえ」
「なんだ放り出しやがってばかッ。……これでもってなんかおめえのものを買おう」
「売りますッ、なんでも売るよ、あたしのものァ、え? 羽織、着物、帯、みんなあァたからいただいたもの」
「そんなもの買うんじゃねえ、おめえの頭ァ半分買おう」
「へえッ?」
「半分坊主ンなんねえ、二十円やるから」
「あッはッはァ、半分坊主ゥ? ェェ嫌てえわけじゃァないんですよ、今日《きよう》は、あッはァ……いつもなら飛びつくんだよあたしァ。今夜ァいけませんよ。先方ィ行くんでしょ。で、『一八ッつァん頭半分どうしたの?』ッて、えッへッへッ、『二十円で売ってきた』ってなァ……」
「色っぽい野郎だねこいつァ……、さがって十円、どうだいひとつ、おまえの目の玉へ親指つっこもうじゃねえか」
「む、眼潰《がんつぶ》し? ごめんこうむりましょう」
「さがって五円だ。ひとつ生爪ェはがそう」
「痛いねッ、あなた痛い芸が好きだね? なんかほかに芸はないんですか?」
「さがって一円ッ。てめえひとつ、ぽかァッと殴ろう」
「(ポーンと手を打って)請けあいましょう……請けあうよ、ぽかぽかァッとくると二円でしょ?」
「そうだ」
「ぽかぽかぽかァッとくりゃ三円?」
「そうだ」
「こうなるとあたくしゃァ商法ですからね、一個でもまちがえちゃァたいへんです。あたくしゃァ算盤《そろばん》を持つよあたしゃァ。へえッ、あなたがね、ぽかぽかぽかぽかぽかぽかァッてくるでしょ? あたくしゃァぱちぱちぱちぱちぱちぱちッ(と算盤をはじく手つき)ぽかぽかぽかぽかぽかぽかぽかぽかァッ、ぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちッてんで、ぶたれ通しで、死んでいくら?」
「死んじゃっちゃしょうがねえじゃねえか、ばかだね、こんな欲ばったやつァねえな、どうも」
「へッ? はァ……はァはァ、ああさよですか、へえ、ありがとう存じます。ェェ仲間はありがたいですね、軽子《かるこ》姐さんのご忠告です。大将は力自慢だから、ぶちどこをうかがいやしょ、どこをおぶちンなりますゥ?」
「そうさァ、仮におれァ一円でぶつんだからなァ、最初、目と鼻の間いこうじゃねえか」
「あは、……じゃァあなた一個でまいっちまわ、いけませんよ。五十銭でようがすがね、この肩は?」
「按摩《あんま》じゃねえや、ばかッ」
「このねェ、踵《かかと》が二十五銭」
「そんなのいけませんッ」
「拳骨《げんこ》を見たばかりが、ただの五銭」
「ふざけるな、こん畜生。じゃあこうしろ、そのコップで一杯飲めッ、一円やるから」
「はァはァ、一杯飲みの一円いただき? へッ? 息をつかずにぐい飲み[#「ぐい飲み」に傍点]の一円いただき……あッはッはッは、あァたやるねェあァたァ。現金取引でしょうなァ? いけませんよこの前こんな大きな祝儀袋ォいただいて、あたくしァありがたいとおもって、家ィ帰って開けてみたら絵葉書が出たよあァた……あれェいけませんよ。へえ、さいですか、なにも、営業ですからねェ……ェェどうぞ軽子姐さんお酌を願います。ええ、お聞きでしょうけども今日《こんち》は営業でいただくんでござんすから、いっぱいでなくていいんですよ。ここんとこ、ものの八分目ということに願いましてね……ああッと(と、こぼれそうになる)……ううォッと、こりゃおどろいたねェ……こりゃ山盛りンなっちゃった……これァひどいなァ、ですからいまあたくしゃァ申し上げたでしょ? いえ、えへッへ、たいして別に、苦情言ってるわけじゃァない、ただいっぱいだってえ話を、あたくしが、いま……いえ、いいんですよ、いただきゃァいいんですから(と、軽く芸者をにらみ、口をコップに持っていき、きゅうッと一気に飲み)ふうゥッ、へい、いただきました」
「偉いなッ、見事だな、やるぞッ」
「へえいッ、ありがとう存じます。右まさに頂戴つかまつりました。へッ、受取りは差しあげませんよ、へえ。ェェこんだ、照ちゃァん、照奴さん、あァたお酌ゥ願います……えッへッへッへェ、姐さんはだめ、玉ちゃァん、えへへッ近所にいきますよ。お座敷ィ出たら、お互いに助けたり助けられたり、よござんすか? そこんとこをいろいろ按問をいたしまして、ああッ(またいっぱいに酌されて)あ、あァたあァた……押すね? いいえ大将苦情言ってるんじゃないんですよ、嫌だよあァたァにらめちゃァ……照ちゃんおぼえ[#「おぼえ」に傍点]といで。どうしてそういうことをするの? どうしてこうなんだろうなァどうも、こっちが頼んでんのに……みんないじめっ子なんだねェ、そういうあァたの心持ちならいいですよッ……(と、ひと息に飲み)ふうゥッ、はァ……いただきました」
「おい、大丈夫かい? いやならよせよ。やるぞッ」
「へいッ……ありがとう存じます、右まさに頂戴つかまつりました。ェェ受取りゃあ差しあげません。へえ、こんだふうちゃん、あァた、お酌ゥ。いえェェ、もう姐さんと照ちゃんはだめ。もう敵のスパイてえことォちゃァんと心得てるン。ふうちゃん、えッへッへッ、あなた、こないだ歌舞伎《かぶき》でおさらい[#「おさらい」に傍点]しましたねェ、巧《うま》かったねェじつに、おどろいた、え? あの薙刀《なぎなた》ァ持って、揚幕からねェ、とんとんとんとんとんとんとんとんッと出て来たでしょ? あの七三のとこでね、とおォんと極《きま》って見得ンなったときにね、お客さまがねェ、『うわァァ』ッとほめたらね、おッかさんねェ、涙ァこぼして、いえ、あたしの隣で見物してたン。うふゥうまかったねェ、いい形、ほんとうに、お世ェ辞でなく、まったく、えッへェそい[#「そい」に傍点]ですからねェ、そこんとこォねェいろいろねェ……おおッ、痛いッ、あッ、ああそう(と、またいっぱい注がれて)、敵は大勢味方一人、たんと、あなたそういうことをしなさい……ねえ、他人《ひと》の困るのをよろこんで……、あァよござんすよ、そういうあなた方が薄情な了見なら、こっちにも、いろいろ考えがある、いいんです、ねえ? じつに情けない(と、そろそろ酔いがまわって)あたくしゃァ、別に苦情を言うんじゃァ……(と、また飲み)ふうゥッ……い、いただきました」
「おうい、大丈夫かい? やるぞッ」
「へい、ありがとう存じ……へい、右まさに頂戴をつかまつり……さッ、こうなりゃァ破れかぶれだッ、さッ、いっぱいいらっしゃい、もうねェ、あたし卑怯《ひきよう》なことを言いませんよ、山盛りいらしてくださいッ、ええいいですよ、こうなれァもう、冗談言っちゃァいけない(と、なみなみと注がせて)よしよしッ、へへ、いい商売だな、へッへェ、お酒をいただいて、ご祝儀をいただいて、へッへッ、こいで家ィ帰りゃァお梅ちゃんが待ってるッてン。こういう間《ま》のいいときにゃァ帰りになんかあたしゃァ拾うよあたしゃァ……ェェあたしの運勢なんてものァ……(ふた口飲んで息をつき)ただならない[#「ただならない」に傍点]運勢ですからねェ……大将ッ、いいえ、これァねェ、ほんとうのことを申し上げ……長いことォご贔屓《ひいき》をいただいてますねェ、あたしゃァねェ、酔って言うわけじゃァないけれども、え? 十三年。長いね大将、しくじったこともあるけど、え? 朝起きるでしょ、帝釈《たいしやく》さまィ、拝むんだよ、あァたのことを(手を合わせて)『どうか、ェェ大将に、ェェなにごともございませんように。あたくしゃァ大将のために、生きていられます』やなんか……へ? なんですゥ? べらべらおしゃべりして、半分飲んで息をついている? あッはッはァ、あァたねェ、そんなことォ言うんじゃないのあァたァ。息をつくくらい……あァたのことォ芸者衆がほめてますよ、ほんとうに。服装《なり》のこしらい[#「こしらい」に傍点]がうまいッて。またあァたァねェ、お背ェがお高いから、なんでもお似合いだ。ねえ、洋服はもちろんのこと、結城紬《ゆうきつむぎ》が似合って、お召をめしてもにやけ[#「にやけ」に傍点]なくって、紋付羽織袴が立派で、赤い着物で鎖《くさり》を……(気がついて、自分の頬をつねる)いえ、いえ、ですからね、なんでもお似合い。それァもうね……(コップを見て)大将、これァあきれたねェ、あたくし半分いただいたン。これいつのまにかいっぱいンなっちゃったン。これァ五十銭いただきやしょう、へえ? てめえが間抜けだから注がれたんだァ? だれ? これ注いだなァ? どうして、こういうことすんの? お金が賭《かか》ってんだよこれ、さッ、大将これ、あっしァ、警察へ訴えるよ、ええ。営業妨害でしょ? よォし、くすくす笑ってやァらおぼえてやがれ、畜生め。ようしッ、そういうことをするならするで、いえ、こっちのほうにもね、考え……(と、三口ばかり飲み)どいつが注いだかねェ、こんだ犯人を捕縛《ほばく》しますから、ええ、かれらごときにねェ、あたしゃァこの土地の草分けですよ。あ、あッと、大将、ひどいね、どうも、油断も隙《すき》もならないね。……ふう公ッ、ふう的ッ、ふうちゃん、こっちィいらっしゃいッ、こっちィおいでなさいッ、おまえさんそういうことありかい? ありならありでいいよ。そういうこと、すんなら、こないだのこと、大将にばらすよ、あたしゃ。ええ? ひとが知らねえとおもってやがんな? 知ってるぞ、大将ッ、珍談。大珍談。このねェ、ふうちゃんなる者ァ、ふだんねェ、お座敷へ出て、『あたしゃあ男は嫌《きら》いだ』ッてなァことを言ってやしょう? それが大ちがいッ、あなたこないだ鳴尾《なるお》の競馬へいらした、あたくし東京駅へお送り申した、『大将、ご機嫌《きげん》よく行ってらっしゃいよォ』ッてんで汽車がすうゥッと出た。プラットホーム[#「プラットホーム」に傍点]から下ィ降りるとねェ、かのふうちゃんが向こうから来るじゃありませんか。あッ、ふうちゃんが来たなァッとおもうから、『ふうちゃん』ってあっしゃァ呼ぼうとおもったン。するとあたくしの顔を見てねェ、すうゥゥッと逸《そ》れたァ。はて、おかしなことをするなとおもうとねェ、大将、ふッふッふッふッ、逸れるわけ、へッへッへッ、逸れるわけあり。へッへェ、そばにねェ、乙《おつ》な丹次郎なるものがねェ、ステッキをつきの、洋服ごしらえ、それ、それ、あはは、あなたのねェ知ってるひと、あッはは、あなたのねえ、あのねえ、贔屓の役……(者といいかけて)、だめだいッ、いまさら和睦を申しこんだって、みんなしゃべっちゃわ、あのねェ、それがねェ(と袖を払い)あァ、およしなさいよ、おまえは、うッふッふゥ、お、およしだめだよ畜生めェ……くッくッくッくッくッ(うしろから擽《くす》ぐられて)だ、だめだよ、おいッ、擽《くす》ぐっちゃァ、おまえはねェ、あッは(とコップを見て)あ、またいっぱいンなっちゃったこらァ……こりゃァいけない(どオーんとコップを置き)ああ、いいえもう、もういけません……もう、こうなるといけませんからひとつゥあたくしゃァ、……踊りを踊る……」
「お、おいおい、あいつァね、たいへんに酔ってるからな。……おまえの踊りなんざァおい、見たかァないよ」
「そうでないですよォ。あなたはねェあたしの踊りを……そうどうして私《しと》の芸にけちをつける、それ(と、鉢巻をしようとして)、かっぽれを……」
「おいおい、危いよおい、みてやれよ。おい、大丈夫か、……あッ、あァ、あッたッたッ」
「とッとッと(と、前へのめり梯子段《はしごだん》から転がり落ちる)へッ、大丈夫大丈夫、大丈夫ですよォ……いいのッ。落ッこったんじゃァないんですよ、飛び降りたのッ。もうここンとこでドロン(と、忍術の手つき)……えッへッへッ、あのねェ、大将にそうおっしゃってくださいな『一八は落っこちましたけども、たいへんな重傷でございます、あれは、とても……助からないでしょ』って、こうおっしゃってください。そいでね、『ェェ香典を十分にやっていただきたい』ッてこうおっしゃってください、へえ。女将《おかみ》さんにお礼を……えッ? 女将さんお寝《やす》み? ああそうですか、それじゃァ……へ? そうですかァ? おみ折《おり》を? あァすみませんねェ、お目にかかれませんけどよろしくッ……いやッ、源ちゃん、おまえさんにィ……下足《げそ》を出してもらうということはァ、まことにもったい……これね(と、懐中から金を出し)これ、煙草煙草、な、なに言ってんのッ、えへッ、また、このお世話ンなります。じゃあァ、よろしくッ……さいならァッ……ああァいい心持ちンなった。あァありがてえ、ああッ(と、大きく息を吐いて)あァこっちの身体《からだ》ですよッ、こうなれァこっちのもんだね、へッへッ、(口三味線で)チャンチャチャンチャ、チャンチャンとくるね、あァありがてえな……こいで[#「こいで」に傍点]家ィ帰るとねェお梅ちゃん待ってるよ。『どうしたの? 遅いじゃないの』って、えッへッへェ、そいから、う、あたくしがひと言、叱言《こごと》を言いますよ、ええ。『冗談言っちゃァいけませんよ、あたくしは、商売ですよう』『商売だってなんだって、家ィ待ってる者《もん》の身になって、ちょうだいようッ』ッてなことを……言うからねェ、おれァ『なァにを……』(と、ぶら下げている折を振りまわし)あッ、なんだいこらァ折の底が抜けちゃったァ……これァおどろいたなァどうも」
「……ただいまァ、……ただいまァッ」
「いま開《あ》けるわよ。……いま開けるッてえの、どんどんどんどん叩《たた》いて……また酔っぱらって帰って来たんでしょう……臭いわねェ、お入ンなさい」
「ェェ、お土産《みやげ》、おみ折《おり》……」
「お土産ッたって、折の底が抜けてるじゃないの」
「折の、底が抜けてますけどもねェ、あの、蒲鉾《かまぼこ》だのねェ、照焼やなんかァねェあの、ポストの傍《そば》にいます」
「なんだい、いますッて? お上がンなさいよ、早くおやすみなさいッ」
「うふゥ、おやすみなさいッてねェ、師匠は? 寝た? うん。お梅ちゃんも? 寝た? あァ、いい、いいんですよ、ええそう、それをうかがえばァ(と、梯子段を上がる)こうやって、こっちはただ二階へ上がりゃァ、こっちの……もんだッ、やァ、あッはッはァ、これでいいんだよ、ねえ、これでねェ、チィンチーンとくりゃァ、おれがすうゥ……お? こらァまずいなァ。こらァ、お梅ちゃんとこィ行くには、師匠の枕元を通るねェ、師匠は目ざとい[#「目ざとい」に傍点]からねェ、『だれだッそこィ来たのァ?』『へ……一八でございます』『なにしに来たんだ?』『へえい、厠《はばかり》へまいりに』『厠はそっちだァ』……こらァまずいなァこらァ……こらァまずいねェ、ばかまず[#「ばかまず」に傍点]だよ、こう、(ポーンと手を打って)よォッ、天の助けだよ、へッ、ここにねェ、三尺の明り取りがあるってえやつです、ね? この明り取りの格子をねェ、こうあたしがつかむでしょ、(と、格子をつかみ)あたしが、一心、不乱に、なって、こういくでしょ。(と、格子をはずす)ね? えへッ、こっからあたしがどおォん……こら音がするねェ。『なんだなァ、いまの、どおォんてったのは?』『一八でございます』『どうしたんだい?』『へえ……ェェ、明り取りから、どおォんと』『明り取りに格子がはまってらァ』『格子の目から漏《も》りました』ッて、漏るわけァないねェ、これァまずい……(上を見て)あッ、えへッ、ここに、また天の助けだ。ここにねェ、横にこう柱があるでしょ。いろいろ、これをねェ、あたしが帯をほどいてねェ(と、帯を解き)この、柱の上ィ、これを、あたしがねェ、ようッ(と、上へ投げて横木にかける)……あ、たいへんな煤《すす》だねェこらァ……(顔の煤を払って)こォりゃァえらいことだ。こらァ足らないねェ。足らないところは腹巻を……(袖口から腹巻を引き出して、帯とつなげ)あたしがいろいろ苦心をいたしまして、腹巻をこう結《ゆわ》いつけてこう……ああ、まだ足らないねェ。足らないところは六尺の褌《ふんどし》を(と、着物の下に手を入れ)取るってえことについては、(褌をつなげ、たぐり下ろしながら)いろいろこの苦心を、いたしまして、こうやって……こうやって、ね? これで、チィンチーンっていうと、あたしがつるつるつるつる……あ、こりゃいけねえな目がまわるね……この目がねェ、まわらねえように、こう、目隠しを……手拭であたしがねェ、(と、手拭で目隠し)するということについては、ね? こうやって、あたしがねェ(と、手さぐりで、縄にぶら下がる)チィンチーンッとくると、つるつるつるつるつるゥっと、えへッ、えへッ、ここですよ。ここまで苦心、を、するという、ことにねェ、ついては……(と、前へこごみ、いびきをかく)」
一八はそのままいい心持ちで寝てしまった。
 チィンチーンと鳴ったから、一八は、つるつるつるつるッと……。
もうとうに夜が明けていて、階下ではみんなが朝飯の膳《ぜん》を囲んでいる、そのお櫃《ひつ》のそばへぶら下がった。
「あァらッ、一八ッつァん、どうしたの?」
「(目隠しをとって)こらッ、あ! あッ……おはようござんす」
「この野郎、寝ぼけやがってまァ、そのざまァなんだ。まァどうも……」
「うッふゥ、どうも……あいすいません」
「寝ぼけやがったんだろ?」
「えッへッへッへェ、井戸|替《が》いの夢ェ見ました」
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