おっとっとーい、私が家元の糸井重里である。今年はサンマが豊漁で、まことにもって目出たいことであると思いきや、大根が高い。実に、高い安いは時の運、目くじら立てるほどのことでもあるまいが、大根おろしに向う箸に勢いがなくなる、そんな自分に腹が立つ。
テレビを鑑賞していたら、農大生が繁華街で大根踊りというものを披露しておる光景に出合った。この時代に、バンカラを気取ることは、さして難しいとは思わぬが、大根を持って踊るということは、なまなかな硬派気どりの若者に出来ることではない。爽快であった。
「朝礼の最中ではございますが、家元」
番頭さんか、何だい。
「抗議のハガキが、これ、こんなに」
ナニナニ……。
「家元は左廻りのアナログ時計を知らぬといって塾生たちに〈商品研究が足らぬ〉と叱っておきながら24時間表示のアナログ式の存在に気付いておらぬ、と、そういう意見でございます」
わっはっは、まるで鬼の首でもとったような得意顔が見えるようじゃ。喝! これでよいか。
「喝! でございますか?」
その通り。家元というのは、戦後の先生や、話のわかる上司なんかじゃないのだ。
「しかし、お言葉ではございますが、喝と思うな思えば負けよ、という歌もございます」
だから、「喝」と言われた塾生が、それを喝だと思ったら負けになってしまうということだよ。
「では、そのように取りはからうことにいたします」
ったく、萬流の奥深さを、ちっともわかってくんないんだから、みんな。稽古に移るぞ。
テレビを鑑賞していたら、農大生が繁華街で大根踊りというものを披露しておる光景に出合った。この時代に、バンカラを気取ることは、さして難しいとは思わぬが、大根を持って踊るということは、なまなかな硬派気どりの若者に出来ることではない。爽快であった。
「朝礼の最中ではございますが、家元」
番頭さんか、何だい。
「抗議のハガキが、これ、こんなに」
ナニナニ……。
「家元は左廻りのアナログ時計を知らぬといって塾生たちに〈商品研究が足らぬ〉と叱っておきながら24時間表示のアナログ式の存在に気付いておらぬ、と、そういう意見でございます」
わっはっは、まるで鬼の首でもとったような得意顔が見えるようじゃ。喝! これでよいか。
「喝! でございますか?」
その通り。家元というのは、戦後の先生や、話のわかる上司なんかじゃないのだ。
「しかし、お言葉ではございますが、喝と思うな思えば負けよ、という歌もございます」
だから、「喝」と言われた塾生が、それを喝だと思ったら負けになってしまうということだよ。
「では、そのように取りはからうことにいたします」
ったく、萬流の奥深さを、ちっともわかってくんないんだから、みんな。稽古に移るぞ。