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輪(RINKAI)廻08

时间: 2019-11-21    进入日语论坛
核心提示:     * 真穂ちゃんになるべくやさしくしてやってくれって、それ、どういうこと? いや、あんたの話はわかったわよ。茨城
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 真穂ちゃんになるべくやさしくしてやってくれって、それ、どういうこと? いや、あんたの話はわかったわよ。茨城で西納のお義母さんにあんまり厳しく躾られすぎて、真穂ちゃんが少しおかしくなりかけたっていうんでしょ。心身症みたいになって、それであんたも辛抱たまらず向こうの家を出てきたって、そういう話でしょ。そりゃあ話を聞けば、真穂ちゃんもかわいそうだったなとは思うわよ。だけど、私にどうしろっていうの? これまであの子がいじめられてきたぶん、ここでは私がちやほやかわいがってやれっていうの? 悪いけど私、そんなことできないわ。子供は得意じゃないのよ。子供に合わせた扱い方っていうのができないの。それじゃ困ると言われたって、私のほうだって困っちゃう。──だいたいね、あんた、少し神経質すぎやしない? 肝心なことには案外ずぼらで間が抜けているくせに、こと子供のこととなると、目つき、顔つきが変わるんだから。親が神経質すぎるとね、子供も神経質になるものよ。子供なんて、ちょっと放ったらかしておくぐらいがいいんだよ。第一あの子、そんなやわな子供じゃないよ。あの子はね……何て言うか、私なんかよりもよっぽど強いものを持ってるよ。その強い子が西納の家で、精神的に歪みが生じるぐらいに追いつめられたっていうこと自体が、私には何だか不思議なぐらい。放っておいたって、あの子はちゃんと生きていくわよ。どうしてって……これでも私は人間大勢見てきているからね、何となくそういうことがわかるんだよ。だけどあんた、どうして急にそんなこと言いだしたの? 真穂ちゃんが何か言ったの? 違う? だったらどうして? そりゃあ私は普通のおばあちゃんらしくはないかもしれない。だけどそういう人間なんだから仕方がない。今さら変えろって言われても、どうすることもできないよ。だからって私、別にあの子のこと、邪険に扱ったりはしていないつもりだよ。──それにしても香苗、あんた、本当に変わらないねぇ。こうしてほしい、ああしてほしい……いつもいつも自分のことばっかり。それで思うようにならないと、どうして、どうしてって、自分の中に不満を溜め込んで相手を呪う。あんたは相手の立場に立ってものを考えるってことができない人間なんだ。昔っからそうだった。今度は自分のことじゃなく、真穂ちゃんの立場に立ってものを言ってるつもりかもしれないけど、あんたにとっちゃ真穂ちゃんは自分の一部。結局は自分のことを考えてものを言っているんだよ。子供は何よりも大事なものだから、周りはみんな子供に合わせていくのが当然だと思っているのかもしれないけど、そんなのはあんたの勝手な考えで、どこででも通用すると思ったら大間違いだよ。子供なんて、自分勝手でわがままで、無垢かと思えば大人のいやなところを凝縮したみたいに持っていて、気味の悪い生き物だって思っている人だってこの世の中にはいるんだから。──そういえばあの子、左利きなんだねぇ……。何よ、急にそんなおっかない顔して。別に悪いと言ってる訳じゃない。ただちょっと驚いただけ。どうしてって……左利きの人間なんて、うちにはいなかったから。え? 西納のお義母さんと同じことを言う? そう、西納のお義母さんはそれも気に入らなかったんだ……。あんたの父親? そんなこと、忘れたよ。いや、左利きではなかった。そう、左利きじゃない。おじいちゃんやおばあちゃん? そこまで追及して何になるの? しつこいな、左利きなんかじゃなかったよ。いずれにしたってそんなのたいした問題じゃない。どうだっていいことじゃないか。もう話はお終い。これ以上話していたら、お互い気分がくさくさしてくるばっかりだ。あんたたちは遠慮せず、この家で自分たちの好きなように暮らしたらいい。私も同じように、この家で自分の好きなように暮らしていく。それでいいじゃない? 最初は多少ぎすぎすしたりもするかもしれないけど、いずれおさまるようにおさまるよ。人間、環境に適応するようにできているんだから……。
     *
 この間は朝から変なこと言ってごめんなさいね。だけど私、どうしても気になったものだから。──で、どうだった? え? 山上さんも真穂ちゃんも、何のことかわからない様子だった? つまり、そういう気配はなかったということね。そうか……じゃあ、やっぱり私の早とちりか。でもねぇ、あなたたちがここへ越してくるまでは、山上さんのあんな声、聞いたことなかったんだけどな。真穂ちゃんも、とくに怪我をしている様子はなかった訳ね。だったらやっぱり何でもなかったんだ。それじゃあれは何だったんだろう? ほら、真穂ちゃんが玄関から転げ出てきたっていうあれ。それを見間違うほど、私もどうかしているとは思わないんだけど。──うん、ここのところも時々あるわよ。壁を突き抜けて響いてくるような山上さんのヒステリックな叫び声。あれだけ聞いたら、部屋の中で何か起きているとしか思えないんだけどな。でも、何かあれば真穂ちゃんも、あなたにだけは言うはずだものね。それがないということは、やっぱり何もないということか……。ああ、だったら私、山上さんにもあなたにも、本当に失礼なこと言っちゃった。余計な心配もさせちゃったわね。ごめんなさい。私、本当に謝るわ。山上さんにはこのこと黙っておいて。聞けば誰だって面白くないもの。私だったらかんかんに怒っちゃう。それを、実の娘さんのあなたに頼むっていうのもねぇ……。でも、こうして面と向かっていても、何だか山上さんの娘さんと話しているって気がしないのよね。あなた、山上さんには似ていないもの。きっとおとうさん似なのね。──あ、また余計なこと言ったかな。それにしても、本当に何事もなくてよかったわ。勝手な言い種かもしれないけど、私もそんなはずはないな、とは思っていたの。だって真穂ちゃん、山上さんの実のお孫さんだものね。それに彼女、すごくかわいいし。おばあちゃんが、そんなかわいい孫を虐待する道理がないものね。そうそう、それにこの間私、実は違う人の声を聞いたの。あなたにあんな話をした以上、私もおたくの物音には気をつけるようにしていたのよ。そうしたら、山上さんがヒステリックに叫んだり物音立てたりする時って、誰かもう一人、部屋にいるような感じでもあるのよね。おばあさん……まあ、山上さんと同じぐらいの年頃の人だと思うから、おばあさんなんて言ったら怒られるかもしれないけど。姿を見た訳じゃなくて、話し声だけ。六十過ぎの女の人の声みたいだったな。……壁越しだもの、何を言っているかまではわからなかったわ。それにその人、訛りがあるのよ。ずーずー弁というほどでもないんだけど、口の中で籠もるような感じでね、やっぱり北の方の訛りじゃないかしら。だからなおのこと聞きづらいの。もしかしたら山上さん、その人と揉めているのかも。香苗さん、その人に心当たりない?……そうか、そうよね。あなた、ずっと離れて暮らしていたから、わかるはずはないわね。ひょっとすると真穂ちゃんは、山上さんとその人とがすごい勢いで揉め出したのに驚いて、外に転げ出てきたのかも。それにしても、何か妙なのよね。いや、私も気をつけているつもりなのに、そのおばあさんの姿を一度も見ていないし、おたくに出入りする気配も感じたことがないっていうことが。ここのマンション、隣の物音は案外よく聞こえるから、ちょっと気をつけていさえしたら、誰か来たり出ていったりするのは必ずわかるはずなんだけど。案外その人幽霊だったりして。──ああ、心配しないで。もうおたくの物音に聞き耳立てたりしないから。今度のことだけど、本当に気を悪くしないでね。悪気はこれっぽっちもなかったのよ。だから……。
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