□教室
たまには中庭でゆっくり食事にするのもいいかもしれない。
「決めた。今日は日向ぼっこをしながら昼飯を食う」
【有彦】
「決めた。今日は日向ぼっこをしながら昼飯を食う」
【有彦】
「おおっ健康的じゃん! ならオレも付き合うぜ!……などと言いたいトコなんだが、徹夜あけに日の光は辛いのだ。残念だがここでお別れだな、遠野」
「願ったり叶ったりだな。今日は静かに飯にしたかったんだ」
「そですか。ま、中庭に出るっていう猫に昼飯獲られないよう注意しろよ」
「願ったり叶ったりだな。今日は静かに飯にしたかったんだ」
「そですか。ま、中庭に出るっていう猫に昼飯獲られないよう注意しろよ」
他に何か用事があるのか、有彦はあっさりと引き下がって行った。
□中庭
中庭に出る。
陽射しは適度に暖かく、風も肌に心地よい。
なんていうか、今日は最高のピクニック日和だった。
これだけ気持ちいいんだから中庭はさぞかし賑わっているだろう、って——�
中庭に出る。
陽射しは適度に暖かく、風も肌に心地よい。
なんていうか、今日は最高のピクニック日和だった。
これだけ気持ちいいんだから中庭はさぞかし賑わっているだろう、って——�
「……なのになんで誰もいないかな」
なんか、逆に頭にきた。
そりゃあこの気持ち良さを独り占めできるのは嬉しいが、これだけいい天気に教室に閉じこもっているのも勿体ないだろうに。
そりゃあこの気持ち良さを独り占めできるのは嬉しいが、これだけいい天気に教室に閉じこもっているのも勿体ないだろうに。
「……いいですよーだ、こうなったら芝生にねっころがってやる」
独りごちて柵を乗り越える。
芝生からもたっぷりと太陽の匂いがして、このまま眠ってしまったら最高に気持ちがいいだろう。
「————ん?」
と。茂みからごそごそと現れた黒い影が一つ。
【レン】
「あ、ほんとに出た」
有彦の言葉通りというか、中庭に黒猫が住み着いたという噂が本当だったというか。
黒猫はふんふんと芝生の匂いをかぎながら、少しずつ、そっちになんてこれっぽっちも興味がありませんよー、といった素振りで近づいてくる。
「あれ? おまえ、前にも会わなかったっけ?」
……昨日のコトを思い出せない病はこんな所にも影響している。
けど確かに、こういうふうに天気のいい場所で黒猫とぼんやり過ごしたコトがあったような気がするのだ。
「ま、いいや。ほら、パン食べるかおまえ」
サンドウィッチを千切って黒猫へ投げる。
【レン】
……うわ、見向きもしないよあの子!
「む。なかなかハイソサエティな家庭で育った猫さまとお見受けした」
んじゃ、次は具であるハムを投げてみる。
【レン】
【レン】
【レン】
お、今度はかすかに反応。だがまだ食べようとしないあたり、敵もなかなかプライド高し。
「よーし、次は確実だぞ。くらえ、ツナ付きハム爆弾—!」
ぽいぽいぽい。
次々に黒猫のまわりに投下されていくシーチキンをからめたハムの群れ。
【レン】
【レン】
【レン】
黒猫はハムから目を背けようと後ろを向く。
その方角にもさらにハム。
【レン】
【レン】
【レン】
今度はちょっと反転。そっちにもハム。
【レン】
【レン】
【レン】
ハム、ハム、ハム、ハム、ハムハムハム!
「あ、倒れた」
くるくると回ったあげく、黒猫は芝生につっぷした。
「……もしかして、そこまで食べないってコトはホントに嫌いなんでしょうか?」
ぼそぼそと話しかけてみる。
黒猫はぴくん、と耳を動かした瞬間——�
くるくると回ったあげく、黒猫は芝生につっぷした。
「……もしかして、そこまで食べないってコトはホントに嫌いなんでしょうか?」
ぼそぼそと話しかけてみる。
黒猫はぴくん、と耳を動かした瞬間——�
□中庭
シュン、という音が似合うような素早さで茂みへと駆けこんでしまった。
「……あっちゃあ、嫌われちゃったか」
ぼやきつつ、はむ、とサンドウィッチをかじる。
「うげ、ただのパンになってる———!?」
……って、間抜けか俺は。
サンドウィッチをサンドウィッチたらしめていた具を芝生に撒き散らせば、そりゃあ中身だってなくなるに決まってる。
「……試合に勝って勝負に負けたか」
うむ。次はネコ缶を持ってやってくる事にしよう。
まあ。
それは明日も、自分が黒猫の事を覚えていたらの話だけど。