□志貴の部屋
———ふと、坂道から見た夕焼けが脳裏によぎった。
……遠いようでいて、そこが終わりなのだと感じさせた夕焼け。
ここからでは遠いけれど、あの場所まで行けば世界はそこで唐突に終わっているのだという気にさせた赤い空。
ここからでは遠いけれど、あの場所まで行けば世界はそこで唐突に終わっているのだという気にさせた赤い空。
あれはひどく懐かしい、遠い日の思い出を連想させる夕焼けだった。
それを見たのはいつだっただろう。
今日だったか、それとも昨日だったか。
眠りに至ろうとするこの時間、記憶はさらに曖昧になっていく。
それを見たのはいつだっただろう。
今日だったか、それとも昨日だったか。
眠りに至ろうとするこの時間、記憶はさらに曖昧になっていく。
それも当然と言えば当然か。
今日一日かけて、昨日の事はついに思い出せなかった。
そうして眠ってしまえば、今日の事は昨日の事になりさがる。
ほら、思い出せる道理がない。
どうせ俺は、明日になれば今日までの事をキレイさっぱり忘れてしまうんだろうから————
すみやかに眠りに沈めるように羊を数えた。
一匹、
二匹、
三匹、
四匹。
だが白い羊は一向に現れず。
二匹、
三匹、
四匹。
だが白い羊は一向に現れず。
【レン】
どこかで見た覚えがある黒猫だけが、いつまでも独りきりで椅子の上に座っていた。