□志貴の部屋
「……また繰り返しか」
眠りと現実の狭間で呟く。
明日になればこうやってカラクリに気が付いた事さえ忘れて朝を迎える。
変わりない一日。
出られない箱庭。
終わりない———�
眠りと現実の狭間で呟く。
明日になればこうやってカラクリに気が付いた事さえ忘れて朝を迎える。
変わりない一日。
出られない箱庭。
終わりない———�
「……終わりの、ない……?」
いや、それは違う。
—————なんて事だろう。
俺は、この時間だけはカラクリに気が付いていたと自惚れていた。
「……終わりはある。終りは確かにあるじゃないか」
俺は、この時間だけはカラクリに気が付いていたと自惚れていた。
「……終わりはある。終りは確かにあるじゃないか」
□志貴の部屋
なんて馬鹿だ。
世界の果て、なんて物を認めていたくせに、この連環が無限に続くと思っていたなんて。
世界の果て、なんて物を認めていたくせに、この連環が無限に続くと思っていたなんて。
「……アレがなんであれ、行き止まりであるのなら終わりはあるって事だ。例えば、それが」
この世界の、崩壊であろうとも。
「………………」
思えば、あれはガン細胞のようなものなのかもしれない。
少しずつ増殖していく黒い染み。
世界を侵食する果てなんてものは知らないが、アレがあるかぎりこの土台は段々と崩れていってやがて死に至るだろう。
そうすれば———この繰り返しのような一日もそこで終わる。
きっとその先は、当たり前の、けれど繰り返しのないいつもの日常が待っている筈だ。
思えば、あれはガン細胞のようなものなのかもしれない。
少しずつ増殖していく黒い染み。
世界を侵食する果てなんてものは知らないが、アレがあるかぎりこの土台は段々と崩れていってやがて死に至るだろう。
そうすれば———この繰り返しのような一日もそこで終わる。
きっとその先は、当たり前の、けれど繰り返しのないいつもの日常が待っている筈だ。
「————————————————」
だが、それは正しくない気がする。
「————なんか、違う」
何かを俺は見落としている。
思えばそれが昨日のコトを思い出せない理由かもしれない。
「……行ってみるか」
ベッドから抜け出して外に出る。
だが、それは正しくない気がする。
「————なんか、違う」
何かを俺は見落としている。
思えばそれが昨日のコトを思い出せない理由かもしれない。
「……行ってみるか」
ベッドから抜け出して外に出る。
□遠野家屋敷
□坂
□公園前の街路
「……驚いたな。てっきりあの子が邪魔しにくると思ったんだけど」
意外な事に外にはあっさりと出れた。
あの子……あの子って誰だろう?
□公園前の街路
「……驚いたな。てっきりあの子が邪魔しにくると思ったんだけど」
意外な事に外にはあっさりと出れた。
あの子……あの子って誰だろう?
□公園前の街路
「 」は、このカラクリの解明をする俺を咎める気はないようだ。
□街路
大通りに出る。
街はいつか体験した夜のように静かだ。
影絵のような世界を歩く。
街はいつか体験した夜のように静かだ。
影絵のような世界を歩く。
□街路
かつん。
□街路
かつん。
□街路
かつん。
□街路
かつん。
□街路
かつ、ん——————
「—————————っ」
一歩進むたびに知らない筈の明日が浮かぶ。
過去に逆行しているのか、“ない”が“あった”出来事を思い出しているだけなのか。
どのみち足跡だらけの未来に向かっている事に変わりはない。
怯む事なく先へ先へと進むべきだ。
一歩進むたびに知らない筈の明日が浮かぶ。
過去に逆行しているのか、“ない”が“あった”出来事を思い出しているだけなのか。
どのみち足跡だらけの未来に向かっている事に変わりはない。
怯む事なく先へ先へと進むべきだ。
月が出ている。
無人の駅に着いて、その構内へと侵入する。
まだ確かなプラットホームを歩いて、線路へと飛び降りようとした途端。
メガネを外す。
水をぶちまけたように、ここ一帯の世界が死んだ。
「—————————!」
どろり、と足元が腐食に沈む。
気が付いた時には手遅れだった。
すでに体は腰まではまり込み、あとはこの一帯の死に巻きこまれるカタチで終わるだけだろう。
「くっ——————!」
その死に抗う為に、今まで何度もそうしたようにメガネを外した。
—————そう、メガネを外すのだ。
なぜそんな、遠野志貴にとって切り離しようのない事柄を忘れていたのか。
死を視るという特異な眼。
それこそが遠野志貴を象る最大のファクターではなかったか。
それを忘れて、否、無意識下に追い込まれてた事こそがこの世界での最大の違和感だった。
死を視るという特異な眼。
それこそが遠野志貴を象る最大のファクターではなかったか。
それを忘れて、否、無意識下に追い込まれてた事こそがこの世界での最大の違和感だった。
あの娘は、遠野志貴が死を視ないようにと気を配ってきたのだろう。
何故なら、死を視覚できる俺だけがこの世界の舞台裏を覗けてしまうからだ。
何故なら、死を視覚できる俺だけがこの世界の舞台裏を覗けてしまうからだ。
……腐敗が進む。
この腐食が何らかの崩壊の予兆であるのなら、それは一つの死だ。
なら見れるかもしれない。
こいつの正体。
この曖昧な一日に果てを作っているモノの姿。
【コウマ】
すなわち。
世界を殺してまわっている、死の影の実像たる貴様の姿を。
「————やはり、貴様か」
「———————————」
その男は答えない。
当然だろう。もともと岩のように頑なな男だ。あと数秒で消え去る俺に、たむけの言葉を送るような男ではあるまい。
世界を殺してまわっている、死の影の実像たる貴様の姿を。
「————やはり、貴様か」
「———————————」
その男は答えない。
当然だろう。もともと岩のように頑なな男だ。あと数秒で消え去る俺に、たむけの言葉を送るような男ではあるまい。
「くそ、ここまでか————」
胴から首、そして顔が腐食に沈む。
胴から首、そして顔が腐食に沈む。
……これが死であるのなら逃れる術はない。
最後の瞬間。
そういえば、どうして自分はあいつが“死の影”だと納得したのか、その理由が解らなかった———
そういえば、どうして自分はあいつが“死の影”だと納得したのか、その理由が解らなかった———