□志貴の部屋
——————幾つかの齟齬が脳裏をよぎる。
忘れている昨日。
覚えのない行動。
それでも日常は折り合いをつけて回り、自分以外の誰も疑問を抱かない。
覚えのない行動。
それでも日常は折り合いをつけて回り、自分以外の誰も疑問を抱かない。
街に現れている殺人鬼。
ヤツはただ噂だけで存在し、現実味というものがまったくない。
それは遠野志貴の悪夢だ。
ヤツは俺が無意識下で怖れ、見ないように見ないようにと言い聞かせてきた悪い夢だ。
なら———ここはなんだ?
悪い夢がカタチになって現れるのなら、ここは現実ではあるまい。
夢がカタチになれる場所は、やはり夢の中だけだろう。
ヤツはただ噂だけで存在し、現実味というものがまったくない。
それは遠野志貴の悪夢だ。
ヤツは俺が無意識下で怖れ、見ないように見ないようにと言い聞かせてきた悪い夢だ。
なら———ここはなんだ?
悪い夢がカタチになって現れるのなら、ここは現実ではあるまい。
夢がカタチになれる場所は、やはり夢の中だけだろう。
わるいユメ。
ワルイゆめだ。
この完璧な夢に落ちた、染みのような悪い夢。
ワルイゆめだ。
この完璧な夢に落ちた、染みのような悪い夢。
————ヤツが言っていたじゃないか。
主催者であれ客であれ、この場に引き寄せられたからには悪い夢を見るのだと。
「———————思い、出した」
そう、思い出した!
何故忘れていたのか。どうしていつも忘れてしまうのか。
これは夢だ。
俺が見ている夢なのだ。
それはこの繰り返しが始まった時、おそらくはすぐに気が付いた筈の事実。
そう、思い出した!
何故忘れていたのか。どうしていつも忘れてしまうのか。
これは夢だ。
俺が見ている夢なのだ。
それはこの繰り返しが始まった時、おそらくはすぐに気が付いた筈の事実。
「———でも、どうして」
どうしてそんな夢を見続けているのかが解らない。
どうして朝になると手に入れた筈の真実を忘れてしまうのかが解らない。
どうしてそんな夢を見続けているのかが解らない。
どうして朝になると手に入れた筈の真実を忘れてしまうのかが解らない。
—————鈴の音が聞こえる。
それはあの子が、必死になって世界を回しているからだ。
□志貴の部屋
「——————っ」
眠気が襲ってきた。
強烈な眠気、なんていうレヴェルじゃない。ぱちん、と指先で遠野志貴の電源をオフにするような、簡単で抗いようのない眠気だ。
「——————」
それでも不安を感じないのは、この眠気には一切の邪気がないからだろう。
……あの子がなんたのためにこんな事をしているかは知らない。
けど、それは決して悪い事ではない気がする。
……だが終わりは近い。
たとえ明日になれば忘れてしまうにしても、遠野志貴はこのカラクリをはっきりと自覚してしまった。
それはもう体験してしまった事で、いくら思い出せなくなっても消しようのない事実だ。
……だから、終わりは近い。
このカラクリは穴だらけだ。
あとはちょっとしたボタンを押すだけで、夢から醒めてしまうんだから————
たとえ明日になれば忘れてしまうにしても、遠野志貴はこのカラクリをはっきりと自覚してしまった。
それはもう体験してしまった事で、いくら思い出せなくなっても消しようのない事実だ。
……だから、終わりは近い。
このカラクリは穴だらけだ。
あとはちょっとしたボタンを押すだけで、夢から醒めてしまうんだから————