□七夜の森
日中でさえ暗い結界に足を踏み入れる。
——————黒い森。
かつてここで暮らし、ここで絶えた血族の庭。
「……こんな所に用はない」
そう、ここに用などある筈がない。
だいたいなんだって屋敷とこの森が繋がっているんだろう。ここに行こうと考えた自分も困り者だが、来れてしまうのも困りものだ。
……たしか中庭から琥珀さんの庭園に出て、ぼけーっと歩いていたらここに出たんだっけ。
「……むむむ。琥珀さん、実は未来からきた万能ロボットなんじゃないだろうな……」
あ、それにしたってドアをくぐり抜けた記憶はないか。
「よし、帰ろう」
ぽん、と手を打って来た道へ引き返す。
その昔。月明かりだけを頼りに歩いた山奥を、意気揚揚と後にした。
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