□遠野家居間
そんなこんなでいつものお茶会。
今日は琥珀さんが持ち出してきたトランプで七並べをやっていたりする。
七並べ、というのは数字の七を各種類ごと四枚並べて、順番に七から高い数字低い数字どちらかでもいいから並びで数字を出していくというゲームだ。
開幕はハートの七を持っていた秋葉からで、ゲームは実にまったりと進んでいる。
今日は琥珀さんが持ち出してきたトランプで七並べをやっていたりする。
七並べ、というのは数字の七を各種類ごと四枚並べて、順番に七から高い数字低い数字どちらかでもいいから並びで数字を出していくというゲームだ。
開幕はハートの七を持っていた秋葉からで、ゲームは実にまったりと進んでいる。
【秋葉】
「そういえば、兄さん昨日なにしてましたっけ」
「そういえば、兄さん昨日なにしてましたっけ」
スペードのクイーンを出しつつ、唐突に秋葉は言った。
「昨日? あ———いや、それは」
トン、とクラブのクイーンを配置する。
トン、とクラブのクイーンを配置する。
【琥珀】
「志貴さんですか? 昨日は———ええと、わたしとお部屋でゲームをしましたよね?」
ぺし、とどうでもいい場所であるクラブの三を置く琥珀さん。
【翡翠】
「そうなのですか? では台所で魚を捌いた後に姉さんの部屋に向かったのですね」
対して、逆方向であるクラブのキングを置く翡翠。
【秋葉】
「ちょっと待ってよ。兄さんは私とお話をしていたんですから、その後に琥珀の所にいったっていうの?」
今度はスペードの四。秋葉は意固地にスペードに固執している。
「—————ああ、その—————」
だからよく覚えていないんだって言えるワケもなく、パスを宣言。ちなみに一回目。
だからよく覚えていないんだって言えるワケもなく、パスを宣言。ちなみに一回目。
【琥珀】
「あら、それは時間的に無理じゃないでしょうか? 秋葉さま、なにか記憶違いをなさっているのではないですか?」
さりげなく琥珀さんもパス。これも一回目。
【翡翠】
「……いえ、秋葉さまの言葉は確かだ思います。わたしも志貴さまはわたしと話した後に秋葉さまの部屋に向かったものだと思っていました」
翡翠はクラブのエース。おお、これでもうじきクラブは出揃ってしまうな。
【秋葉】
「……そう。どちらにしたって兄さんはお忙しい日程だったようですね」
「……そう。どちらにしたって兄さんはお忙しい日程だったようですね」
いらだたしげにパスを宣言する秋葉。ちなみに、三回目。
「……そんな事ないんだけどな。だって午前中はのんびり眠ってたじゃないか、俺」
……く、俺もパスだ。二回目。
……く、俺もパスだ。二回目。
【琥珀】
「そういえばそうですねー。志貴さん、中庭で黒猫と戯れてましたもの」
「そういえばそうですねー。志貴さん、中庭で黒猫と戯れてましたもの」
琥珀さんもパス。……俺と同じく二回目だけど、この人のパスは回避の為のパスではなく獲物を追い詰めるためのパスだ。
【翡翠】
「……そうでしたか。お姿が見られませんでしたのでてっきり外出なされたのかと思っていました」
さらにクラブの二を置く翡翠。……琥珀さんと息があっているのか、クラブはほとんど翡翠と琥珀さんの手による物だ。
【秋葉】
「————待ちなさい翡翠。クラブばかり置いていないで出すべき数があるでしょう。例えばまったく出ていないダイヤとか」
「————待ちなさい翡翠。クラブばかり置いていないで出すべき数があるでしょう。例えばまったく出ていないダイヤとか」
【翡翠】
「……申し訳ございません秋葉さま。姉さんからダイヤは止めろ、と指示を受けていますので」
「……申し訳ございません秋葉さま。姉さんからダイヤは止めろ、と指示を受けていますので」
【秋葉】
「琥珀っ! 今日はマキでやりますよー、なんて言っておきながらなに翡翠にサイン送っているのよあなたは! たかが食後のゲームで悪知恵が回り過ぎるんじゃなくて!?」
お。怒り心頭しているのか、秋葉の口調がお嬢になってる。
「琥珀っ! 今日はマキでやりますよー、なんて言っておきながらなに翡翠にサイン送っているのよあなたは! たかが食後のゲームで悪知恵が回り過ぎるんじゃなくて!?」
お。怒り心頭しているのか、秋葉の口調がお嬢になってる。
【琥珀】
「いやですね秋葉さま、わたしは別にサインを送ったわけじゃありません。翡翠ちゃんが手札を見てがっかりしてたから、ちょっと勝つためのアドバイスをしてあげただけです」
「無言で指と視線だけで指示を送るのはアドバイスとは言いませんっ!」
「うん、そりゃあ通しサインだ。もっとも俺はすぐ気が付いたけど」
「無言で指と視線だけで指示を送るのはアドバイスとは言いませんっ!」
「うん、そりゃあ通しサインだ。もっとも俺はすぐ気が付いたけど」
【秋葉】
「———え?」
「秋葉は自分のカードしか見てないから気が付かなかっただけだろ。二人が結託して俺と秋葉を追い込もうとしてたからさ、あからさますぎてつい乗っちまった」
「———え?」
「秋葉は自分のカードしか見てないから気が付かなかっただけだろ。二人が結託して俺と秋葉を追い込もうとしてたからさ、あからさますぎてつい乗っちまった」
【秋葉】
「……へえ。それで直前で自分だけ助かろうというつもりなんでしょうねえ、兄さんはっ!」
「うい。だってダイヤの8止めてるの俺だもの」
「ッ———————!」
「……へえ。それで直前で自分だけ助かろうというつもりなんでしょうねえ、兄さんはっ!」
「うい。だってダイヤの8止めてるの俺だもの」
「ッ———————!」
【琥珀】
「ああ——————! 秋葉さま、なんてコトするんですか! テーブルをひっくり返すなんて危ないじゃないですか!」
「ああ——————! 秋葉さま、なんてコトするんですか! テーブルをひっくり返すなんて危ないじゃないですか!」
【翡翠】
「はい。せっかくあと少しで完成したクラブがバラバラになってしまいました」
「……とんでもないな。おまえさ、金持ちだからって豪華客船にだけは乗るなよ。中にあるカジノで大負けしたら船を爆破しかねないからな」
じーっ、とみんなで秋葉を非難する。
「……とんでもないな。おまえさ、金持ちだからって豪華客船にだけは乗るなよ。中にあるカジノで大負けしたら船を爆破しかねないからな」
じーっ、とみんなで秋葉を非難する。
これで少しは反省してくれれば可愛いのだが、秋葉はフン、と不愉快そうに鼻を鳴らして、
【秋葉】
「———今のは事故よ。立ちあがろうとしたらスカートが絡まったの」
なんてのたまいやがった。
「———今のは事故よ。立ちあがろうとしたらスカートが絡まったの」
なんてのたまいやがった。
「あははははは! ふざけんな、おまえのスカートは鋼鉄ででもできてんのかっ!」
【秋葉】
「ええ、当然でしょう! 遠野家の当主たる者、つねに最強の装備で身を固めているんですから!」
開き直ったのか、秋葉はとんでもない返答をする。
「ええ、当然でしょう! 遠野家の当主たる者、つねに最強の装備で身を固めているんですから!」
開き直ったのか、秋葉はとんでもない返答をする。
ちなみに、
正しくは“最上級の品で身を固めている”です。
正しくは“最上級の品で身を固めている”です。
「————わかった。わかりました。じゃあ今夜の勝負はこれでチャラだな。ったく、麻雀だったら怪我人が出てたところだ」
【秋葉】
「ふーんだ。麻雀だったら琥珀の姦計になんかひっかからないんだからっ。その時は私一人の大トップで、兄さんを含めてみんなまる裸にしてさしあげます!」
「ふーんだ。麻雀だったら琥珀の姦計になんかひっかからないんだからっ。その時は私一人の大トップで、兄さんを含めてみんなまる裸にしてさしあげます!」
ぷい、と顔を背けて腰を下ろす秋葉。
琥珀さんと翡翠は慣れたものなのか、テキパキと散らかったトランプを片付けていた。
琥珀さんと翡翠は慣れたものなのか、テキパキと散らかったトランプを片付けていた。