□シエルの部屋
むむむむむ。
そういえば今度の期末で平均七十点以上取らないと冬休みがすべて補習になるという通知を出されたんだっけ。
「————先輩、実は」
そういえば今度の期末で平均七十点以上取らないと冬休みがすべて補習になるという通知を出されたんだっけ。
「————先輩、実は」
【シエル】
「はい、昨日と同じくテスト勉強に来たんですね?」
「うっ……まあ、そういう訳です。知り合いの中で頼りになるのは先輩だけなもんで、どうかこの哀れな後輩に休日をくれてやってくださいませ」
ははあー、と頭を下げる。
「はい、昨日と同じくテスト勉強に来たんですね?」
「うっ……まあ、そういう訳です。知り合いの中で頼りになるのは先輩だけなもんで、どうかこの哀れな後輩に休日をくれてやってくださいませ」
ははあー、と頭を下げる。
【シエル】
「もう、そんなこと気にしないでください。わたしも勉強になりますから、一日じっくり勉強するのもいいものですよ」
低頭する俺を笑顔でフォローしてくれるシエル先輩。うう、やっぱりどこぞの反社会的吸血姫とか何習ってるか知れない名門学園のお嬢様より頼りになるなあ。
低頭する俺を笑顔でフォローしてくれるシエル先輩。うう、やっぱりどこぞの反社会的吸血姫とか何習ってるか知れない名門学園のお嬢様より頼りになるなあ。
【シエル】
「それじゃさっそく始めますか? まだ十時になったばかりですし、お昼まで第一ラウンドというコトで」
「お、いいですねその言い方。勝負形式なら身が入るってものだし」
「それじゃさっそく始めますか? まだ十時になったばかりですし、お昼まで第一ラウンドというコトで」
「お、いいですねその言い方。勝負形式なら身が入るってものだし」
【シエル】
「ふふ、そうだろうと思って去年の二学期期末のテスト用紙を貰ってきておきました。教科書片手に挑戦してみましょうか」
鞄からテスト用紙を取り出す先輩。
……さすが影の生徒会長、いろんな所からいろんな物を引っ張ってくる。
鞄からテスト用紙を取り出す先輩。
……さすが影の生徒会長、いろんな所からいろんな物を引っ張ってくる。
「それでは全十科目、二時間でどれだけこなせるか勝負です。もちろん採点して合計点が低かったほうがお昼ごはんを作る、という事で」
先輩はいそいそとセッティングを始める。
……なんかおかしな流れになってしまったけど、先輩と試験勉強ができるなら文句なんてないってものだろう。
□シエルの部屋
【シエル】
「ふむふむ。ボクシングでいうのなら三ラウンド目でKOっていった所ですね」
「う……判定負けとまではいかなくとも、せめてスリーダウンという事にしておいてください」
【シエル】
「ふむふむ。ボクシングでいうのなら三ラウンド目でKOっていった所ですね」
「う……判定負けとまではいかなくとも、せめてスリーダウンという事にしておいてください」
【シエル】
「はあ。別にかまいませんけど、遠野くんがお昼ごはんを作る事に変わりはありませんよー」
「……………………………」
「……………………………」
————————汚い。
考えてみれば、この勝負はこっちが圧倒的に不利なような気がするのだがどうか。
「……いいよーだ。こうなったらすっげえ昼ごはんを作ってああわたしが負けとけば良かったあ〜ん、なんて後悔させてやるからな!」
【シエル】
「んー、そうですねー。ちょっと後悔してます。この点差だと昼ごはんだけじゃなくて夕ごはんまで作ってもらわないとフェアじゃないでしょ。遠野くんって麺類しか作れないから、二食続けて麺というのは力出ませんねー」
「くっ……! 鬼か、鬼だな先輩!」
「くっ……! 鬼か、鬼だな先輩!」
【シエル】
「いえいえ、これも勝負の結果ですから。後悔してますけど、遠野くんの手料理が食べられるのなら一日ぐらいカレーライスを我慢しますね」
……うう、はめられた。先輩め、始めから夕食まで作らせるつもりで勝負形式にしたに違いない。
「……分かった、分かりました! 夕食はおろか夜食まで俺がなんとかしますから、今日は一日勉強を見てもらうかんね!」
「お、やる気まんまんですね遠野くん! その意気なら冬休みはまるまる安泰ですから、一日ぐらい旅行にでかけましょう!」
……先輩は妙に元気だ。
冷静に考えてみるとまる一日勉強っていうのは気が重いけど、先輩も付き合ってくれるんだし弱音は吐けないか。
「お、やる気まんまんですね遠野くん! その意気なら冬休みはまるまる安泰ですから、一日ぐらい旅行にでかけましょう!」
……先輩は妙に元気だ。
冷静に考えてみるとまる一日勉強っていうのは気が重いけど、先輩も付き合ってくれるんだし弱音は吐けないか。
「いいですねー。じゃあ先輩、もし補習がなくなったら秋葉を説得してください。俺、その日は有彦ん家に避難してますから」
【シエル】
「うっ……そうでした、テスト勉強なんかよりもっと厄介な問題があったんでしたっけ」
はあ、とため息をつく先輩を部屋に残して台所へ移動する。
……おかしな休日になりそうだけど、これはこれで楽しいのかもしれない。
朝帰りになりそうだけど勉強なら秋葉も文句はないだろう。
———さて。
とりあえず昼食はラーメンにして、夕食はパスタ、夜食はうどんで決まりだろう……なんて思った途端、ちょっとした考えが頭をよぎった。
「あーあ。俺も甘いっていうか、惚れてるっていうか」
……うん、大甘だ。
なんだかんだと、夜食ぐらいは感謝の意をこめてカレーうどんにしてあげてもいいかな、なんて思ってるんだから———
とりあえず昼食はラーメンにして、夕食はパスタ、夜食はうどんで決まりだろう……なんて思った途端、ちょっとした考えが頭をよぎった。
「あーあ。俺も甘いっていうか、惚れてるっていうか」
……うん、大甘だ。
なんだかんだと、夜食ぐらいは感謝の意をこめてカレーうどんにしてあげてもいいかな、なんて思ってるんだから———