□病室
——————そうして飽きもせず夢を見る。
——————そうして飽きもせず夢を見る。
穏やかな朝。
柔らかな陽射しとカーテンを揺らす風。
白く清潔な病室で、すやすやと眠っている呑気者は間違いなく自分である。
———……ったく。こっちの苦労も知らないで平和そうに眠りやがって。
ぱかん、と一発ぐらい殴ってやりたいが、それだと自分で自分を殴るおかしな人ってコトで退院が遅れてしまう。
ここはぐっと、言いたい事を我慢するのが大人ってものだろう。
———ああ、けど良かった。怪我、大したことなさそうじゃないか。
うん、頭に巻かれた包帯はそう大したものでもない。
何針も縫ったのかな、と思っていたけど体のどこにも手術の跡はないし、ようするにこれは秋葉のヤツが大げさに個室を用意しただけだろう。
……だから、何を恐れる必要もなかったんだ。
遠野志貴はすぐにでも目を醒ます。
死にかけるほどの事故でもなかったし、死にかけるほどの怪我でもなかった。
そんなワケで、あの死の具現なんて初めから敵じゃなかったのだ。
———だから、それがおかしいんだってば。
そう、それがおかしい。
遠野志貴がなんの大事もないっていうんなら、そもそも死の具現なんて出てこない筈なんだから———
遠野志貴がなんの大事もないっていうんなら、そもそも死の具現なんて出てこない筈なんだから———