□中庭
もう一度指を差し出す。
彼女はほんの少しためらった後、
「ひゃっ……!」
ぺろりと、俺の血を舐めた。
驚いて指を引っ込める。
「ちょっ、ちょっと、今のすっごく冷たかったけど……!」
「…………………………」
はい、とばかりに頷くと、トテトテと歩いていく。
もう一度指を差し出す。
彼女はほんの少しためらった後、
「ひゃっ……!」
ぺろりと、俺の血を舐めた。
驚いて指を引っ込める。
「ちょっ、ちょっと、今のすっごく冷たかったけど……!」
「…………………………」
はい、とばかりに頷くと、トテトテと歩いていく。
そうして、こちらと少し距離をとった後、
【レン】
スカートの裾をあげて、つい、と行儀よくお辞儀をした。
「あ……これで契約は済んだってコト?」
「…………………………」
これまた笑顔でうなずく少女。
「そっか、ならもう君が死にかける、なんて事もないんだな?」
「…………………………」
はい、頷いて少女は空を見上げた。
つられてこっちも空を仰いだ。
それは、これ以上はないというぐらいの青空だった。
本当に吸いこまれそうな青は、彼女の心を映し出しているようにもとれる。
それは、これ以上はないというぐらいの青空だった。
本当に吸いこまれそうな青は、彼女の心を映し出しているようにもとれる。
——————、と。
□病室
いつもの眩暈が、やってきた。
「ぁ—————ちょっと待った……!もしかしてもう起きちまうのか!?」
返事はない。
ただ眩暈だけが強くなる。
「———まあ、それはかまわない、けど」
目覚めるのなら早い方がいいだろうし。
ただ、その前に———�
「君の名前、まだ聞いてなかっただろ」
そう。
他の誰からでもなく、彼女自身の口からその名前を聞きたかった。
この夢が有ったのだという確かな証に。
これから大切な家族となる彼女の名前を。
他の誰からでもなく、彼女自身の口からその名前を聞きたかった。
この夢が有ったのだという確かな証に。
これから大切な家族となる彼女の名前を。
————そうして白。
視界は途絶え、今度こそ本当の眠りへと落ちていく。
その前に。
いだすらな舌を出して、二文字の言葉を残していった彼女の姿を見た。
その前に。
いだすらな舌を出して、二文字の言葉を残していった彼女の姿を見た。
————全ては有ったが無かったこと。
なら終わりはここじゃない。
もう一度初めに戻って、今度こそ本当の目覚めを迎えよう。
そこにはきっと夢で出会った全ての人が待っていて、最後に、この夢で知り合ったあの子の姿があるだろうから———
もう一度初めに戻って、今度こそ本当の目覚めを迎えよう。
そこにはきっと夢で出会った全ての人が待っていて、最後に、この夢で知り合ったあの子の姿があるだろうから———