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ぼくのコドモ時間16

时间: 2019-12-05    进入日语论坛
核心提示:夏休みの作文オクさんが、朝顔の苗を買ってきたんで、白いプランターに植えかえてベランダに置いてあります。まだ�本式�の朝顔
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夏休みの作文

オクさんが、朝顔の苗を買ってきたんで、白いプランターに植えかえてベランダに置いてあります。まだ�本式�の朝顔の葉っぱの形になってない、コドモの葉っぱがかわいらしくて、毎朝じょうろで水をやるのが楽しみです。
朝顔っていえば「朝顔の観察絵日記」ですね。種は買ってくるんじゃなしに、前の年の朝顔からとれたのを、台所の|乾物の引き出し《ヽヽヽヽヽヽヽ》に入れておいたのを出してくる。庭の端を掘り返してやわらかくしたところでソレをまいて、しばらくして小さな芽が出てくると、とってもうれしかった。もう早々と、つるがからむための細い竹棒をどこからか出してきて、その出てきたばかりの小さい芽のそばに、さして立てたりしてました。
その日から、毎日じょうろで水をやって、そのあとは観察ノートに葉っぱの形を写生して描きつけておく、っていうのを、めずらしく根気よく続けていたりしていたもんでした。
雨の降る日にも、じょうろで水をあげて、家族に笑われたりしましたが、そんなところは四十歳になっても変わっていないようで、先日同じようにオクさんにからかわれてケンカしました。
そうか、まるで変わってないんだなァ、と思わず納得してしまったのは、どうも仕事が進まなくて、アレコレ思いあぐねていた時です。
原稿用紙に向かってんのが、やんなったんで、じょうろを出してきて朝顔に水やってて……思い出した!
「そうだ、まるっきり同しことをしてる!」って。小学校三年生の夏休み、ボクはやっぱり原稿用紙に向かっていて、ウンザリしていたんでした。その日は八月の三十一日で、明日から新学期、�夏休み帳�や�図画工作�の宿題はなんとか、やっとこさカタづけたところなんだけど、宿題のほかに、特別に�綴方コンクール�に出す作文のシメキリがあったんでした。
担任のホシナ先生は国語の先生で、毎日生徒に自分のペースの�宿題�を自主的にさせるっていう方式をとっていました。何をやってもいいから、毎日、家で勉強したノートを見せるんです。算数の問題でも、朝顔の観察でも、漢字の書き取りでも、課題は自由。
で、ボクがやってたのは�詩日記�というので、これはふつうの日記を、どんどん行がえをして書いてしまう、という形式です。なにしろ|ハカ《ヽヽ》がいくのが好都合です。
一学期が終わって夏休みに入る時、発表があった。綴方コンクールの代表は、南に決まった。宿題がもう一つふえるけれども、代表に選ばれたんだから、ガンバルように。
選ばれたのは、少しはうれしかったでしょうが、ボクはいきなり気が重かったです。テーマは以前に、日記に書いていた、去年亡くなった姉さんのことがいいだろう、って、書くことまで決まってるんです。夏休みじゅう、頭のどこかでひっかかってはいたんだけど、なにしろメンドくさいから、忘れたフリをする。そうこうするうちに、ついに夏休み最終日の八月三十一日になってしまったというワケです。
外はとってもいい天気だけど、もうやらないわけにはいかない。締切はもう明日です。
もう|半べそ《ヽヽヽ》です。せっかく、先生が期待して選んでくれたのに、夏休み中に一行だって書いてなかったんですからね。死んだ姉のことを書かないといけない、と思い込んでたのも、なかなか書けない原因だったかもしれません。
姉・リーボに対する気持を�作文みたいな作文�にしてしまうことへのバクゼンたる抵抗感があったんだと思います。気持があせるばっかりで、いつのまにか机で寝込んでしまったらしい。明け方にハッと目がさめると、寝巻に着がえさせられて、ちゃんと寝床に寝かされてました。
〈先生に叱られる!!〉と思ったとたんに胸がドキドキして、蚊帳《かや》から出ると、いきなり書きかけの原稿用紙に向かったんでした。
窓の外は、きのうとうってかわって、ものすごい嵐です。ゆうべ台風が来たらしい。窓の雨戸をあけると激しく雨が吹き込んでくる。あわてて、ガラス戸をしめて、外を見ると、いちょうの大木が倒れんばかりにしなっている。そんな景色までが自分を追いたてているように見えるんでした。
何がそんなに気に入らなかったんでしょうか、ボクはまるで、コントに出てくる文豪みたいに、書いてはまるめて捨て、消しゴムで消しては、紙をやぶいてしまい、ってなことをくり返してました。
「よし、原稿用紙を持って、こっちに来い」と、父・アキラさんが、お膳のむこうから声をかけました。そんなことをしていちゃ、いつまでたっても書けまい、オレが手伝ってあげよう、というんです。
原稿用紙の束を持って、ボクはアキラさんの前に座ります。いままでのことは全部忘れろ、最初からだ、まず題は「姉さんのこと」だな、とアキラさんは決定しました。
「あれは……ホラ、あれは……だ。あれは去年の夏休みのことだった……」ってこれじゃ、まるで口述筆記ですよ。そのかわり作文はどんどん進みます。十行くらい進んだところでアキラさんは、コドモに質問します。
「ここで、初めて病院に行った時の描写になるわけだが、何か感想はないか、感じたことだ、廊下が暗かったとか長かったとか、何かあるだろう。クレゾールのにおいが、ツンと鼻をさしたとか、薬のにおいは好きか、きらいか、ハッキリしなさい、お前の作文なんだから……」ってこんどは�調書�かなんかのようなんでした。
そうこうするうちに朝ごはんの時間になり、もう学校に行かないと遅刻の時間になっちゃった。しかし、すでに|ヤル気《ヽヽヽ》になってしまったアキラさんは、遅刻なんて気にすんな、とにかく全部書くんだ、というので、口述筆記と警察調書のあいのこのような、小学生の作文の完成に没頭してしまうんでした。
台風がさらに激しくなって、学校は休みになった、と、ガンバって登校してしまった近所のコドモたちが帰ってくる。締切は公式に一日伸びたことになります。
お昼ごろ、取り調べと作品は完成しました。ほぼ同時に台風一過して、真夏の太陽がギラギラ光り、夏休みのおまけの一日を典型的に照らしているんでした。すべてが終わった奇妙な虚脱感を小学生は感じていました。
ああ、終わった。もうビクビクしなくていい、っていう解放感と、でもあれはボクの作文じゃない、っていうしこりのような気持が、むやみに明るい青空の下のコドモを複雑にしているんでした。
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