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笑う茶碗27

时间: 2019-12-05    进入日语论坛
核心提示:腹筋騒動スバラシイ! ではないか?!と私は思ったのである。夢のような機械である! とも思ったのである。それは、見たところは
(单词翻译:双击或拖选)
腹筋騒動

スバラシイ! ではないか?!
と私は思ったのである。夢のような機械である! とも思ったのである。
それは、見たところは腹巻きのようであるけれども、スイッチがついており、それを押すと微弱な電流が流れて筋肉に直接はたらきかけ、脳を介さずに筋肉を収縮させる装置である。
これを装着すると、自分は何もせずに、というより「散歩」や「家事」「読書」や「TV観賞」などをしていながら、一〇分間に六〇〇回だかの腹筋運動をしたと同じことになる。
私は「ラク」が好きなのである。だからかもしれないが、もうここ二、三十年来、腹が出て胴回りが日増しに増えていたのであった。
腹筋がおとろえると、内臓や脂肪が体内から押し出てくるのを、おさえられなくなる。したがって腹がセリ出して、のけぞるような姿勢になるために、さらに腹は出るし、腰痛の原因ともなるというのだった。
私はラクが好きな上に、イタイのが嫌いである。背に腹はかえられないというコトバがあるけれども、腹を放置して腰がイタくなると、そうそうラクばかりはしていられない。
腹筋を鍛えないでいれば、代謝量が減って、さらに肥満するだけでなく、セキを切ったように腹が更にセリ出すことになる。
いよいよ、腹筋運動が避けられない事態となっていたのであった。
しかし、腹筋運動というものは、経験した人には分かると思うが、たいへん骨の折れるもので(もちろん本当に折れはしない)、やれば汗はかく、息は切れる、だからラクではない。どうにかならないものだろうか?
そんな時に、そのアブトロナントカという機械の宣伝をTVで見たのである。スイッチつきの腹巻きだ。「これならカサばらないので、つけたまま散歩もOK!」とかいっている。ニコニコしていて、しかも、もうそこまですることないだろ、といってあげたいくらいに、腹筋がダウンジャケットのキルティングみたいになっている。
で、まァ、私は早速これをツーハンで購入したのだった。現物が届いてみるとそれは、アッケないほどチャチなものだった。
ビニール製の、主要部分は文庫本サイズくらいの台形で、そこにスイッチがいくつかついている。微弱電流は乾電池から出るものらしく、その電池は小さなコインを五〜六枚重ねたようなカサのはらないものだ。
そして、あとは黒い平ゴムが、あるきりだった。腹巻きと見えたのはこれらを、マジックテープでジョイントした時の形状なのだった。
はじめて知ったことだが、説明書によると、これを使用する時には、電気を通じやすくするために、専用の透明なヌラヌラしたものを、装置の本体か腹に必ずタップリ塗らないといけない。
心電図をとる時に、なにかヌラヌラしたものを塗られるが、あんなものだ。これを塗らないと、電気がピリピリして気持よくない。「必ず塗れ」といわれなくても塗らないわけにはいかない。
が、当時は、まだ肌寒い頃のこととて、このジェルをたんねんに塗ったあと、ペトリとその装置を腹につけるとピャッとして、ウヘッという感じなのだった。
そうして、ともかくスイッチを入れれば、たしかに腹筋が、意志とは無関係に勝手にピクピク動くが、それを規定の倍ちかくやっても、別段腹筋はつかれもしないし、カタくもならないのだった。
たしかに、一日や二日やった位で突然腹がひっこむはずもないが、そうはいっても、少しは効果が表れてほしいものだ。
本式の腹筋運動を六〇〇回すれば、とりあえず腹筋が痛くなったりして、効果というか変化がある。この機械にはそれがまるでないのだ。
だが、その一方、イイ加減にやっては大変なことになる、と用心もしていたのである。腹筋は正面だけでなく、脇腹の方も鍛えたいので、同じように均等にやっておかないとマズイ。
もし右脇腹だけやって、左をしないでおくと、効果があらわれた時に右腹だけがスマートになってしまう恐れがある。
たった一〇分! で腹筋が……というけれども、正面と左右を均等にピクピクいわせてると、結局三〇分、ヌラヌラの腹巻きをして、ピクピクピクピクしていないといけないのだった。
結局、わたしはこの腹巻きと、じきに疎遠になってしまった。で、つい最近のことである。ツマがいった。
「シンちゃん、大変なことになってますよ!!」
え? 何が? え? 何がじゃない! 腹筋ベルト、今買うと同じものがもう一つ、いや、もう二つついてくるっていってるよ!!
一コ買うと三コ送ってくることになってるんですよ!!
なるほど、いっぺんに三コ、いろんなところにつけて、ピクピクいわせて、ニコニコしている人がTVにうつってるのだった。
「うーん」
と私はうなった。あの頃の私に、三コいっぺんに送ってくれてたら、どんなにかうれしかったろう。
しかし、私と腹筋ベルトの仲は、もはやすっかりさめきっているのだった。
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