返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 作品合集 » 正文

笑う茶碗37

时间: 2019-12-05    进入日语论坛
核心提示:鈴虫のおかげスーパーで鈴虫を買ってきたのにはワケがある。私はかつて、鈴虫に家庭の不和を救われたのである。不和の原因が何で
(单词翻译:双击或拖选)
鈴虫のおかげ

スーパーで鈴虫を買ってきたのにはワケがある。私はかつて、鈴虫に家庭の不和を救われたのである。
不和の原因が何であったのか、それは今では、ツマも私も忘れてしまった。ともかく二人でフクれて、お互いに黙りこくっていた。
全体、わが家のケンカは、あまり長続きはしない方だ。意地を張って、絶対相手が折れてくるまで口を利いてやるものか、と思ってはみるものの、たいがいどちらからともなく折れあって、じき和平がなってしまう。
ところがその時は、どういうものかお互いの意地が拮抗して、気まずい沈黙が持続した。息がつまりそうで、スグにも折れたいのに折るに折れない。
自分の呼吸を数えるように、そうしているとき、突然、
「リーン……リーン」
と鈴虫が鳴いたのだった。卵から育てて、虫の形になって、動き回るのを見るようになっても、それまで鈴虫はなかなか鳴かなかったのだ。
どうすれば鳴くのか、いつになったら鳴き出すのか? とリビングの真ん中に甕《かめ》を据えて、毎日、のぞいていた、その鈴虫が、はじめてその日の、その時に鳴き出したのである。
二人とも、声に出さずに「あ」と思った。
息を殺していると、いったん鳴きやんでいた鈴虫がまた、
「リ、リーン……リーン、リーン」
と鳴き出したのだった。
たまらず私が口を開いた。
「せっかく鈴虫が鳴いたのに……」
すると、ツマがぷッと吹き出して、結局、どちらがアヤマルでもなく、自然に平和がおとずれたのである。
もう、かれこれ、五、六年は前のことだった。
今回の不和に関しては、その原因はさすがに分かっている。明らかに私が悪かったので、あやまった。
あやまったが、ツマの機嫌が直らない。めずらしいことなのだ。根にもたないタイプで、いつもはあやまれば、アッサリゆるしてくれる。ところがどうも今度は腹に据えかねたらしい。
いたたまれずに、私は家を出て、なぜだか、スーパーにフラフラと入っていったのだった。そこで、プラスチックのカゴに入れられた鈴虫が、売られていた。明るい店内で、しかも真っ昼間だというのに鈴虫はさかんに鳴いている。
私は、鈴虫に加勢してもらって、ツマと仲直りしようと考えた。鈴虫を買っていって、自分の部屋にひそかに置いておく。
口を利いてくれないツマに、短いワビ状を書いて、その上に鈴虫のカゴを置いておく。誰もいないハズの私の部屋から、鈴虫の鳴く声がするので、おや? と入っていくと、虫カゴでおさえたワビ状のあるのに気がつく。
という寸法だ。自分が悪かった。もう休戦しよう。と、そうすれば鈴虫に免じて、また吹き出してくれるだろう。
私はその時限装置をしかけたまま、黙って家を出た。ツマは身体の具合が悪くて、その日は家にずっといたのだった。
夜、帰宅して、様子を窺うけれども変化がない。店であれだけ鳴いていたクセに、鈴虫はどうもまだ一声も発していないらしい。
「せっかく」の鈴虫が、ちっとも鳴いてくれなかった。
結局、どのようにして、休戦がなり和平がおとずれたのだったか、ついこのあいだのことなのに思い出せない。ツマが、いいかげんゆるそう、というのでゆるしてくれたのだろう。
そうなって後、私は時限装置のことを打ち明けた。実は……
「鈴虫にまた、助けてもらおうと」したんだけど、空振りに終わったらしい。
「鈴虫、まだ鳴いてないよね?」
「鳴いてない。鳴いてないけど、鈴虫に鳴いてもらおうとしてたのは、知ってたよ」
ハ、ハ、ハ、しまらない話だなァ、と私は言った。言ったところで、鈴虫が鳴き出したら、これはこれで、話のしめくくりにはなるのだが、鈴虫が実際に鳴き出したのは、さらに二、三日たってからのことなのだった。
鈴虫は、キュウリやスイカを食べる。土をしめらせてやって、タンパク源にニボシを一匹転がしておく。カビのはえないように、隠れる空間をつくるように木炭をいくつか配置する。キュウリは、ヨージにさして、木炭をつたって、食べに行けるようにアンバイする、といったような鈴虫の世話は、すべてツマがやってくれた。
鈴虫はオス二匹、メス二匹。例によって、スズ吉、スズ太、スズ代にスズ子と名付けたけれど、オスメスの区別はつくものの、どちらがスズ吉で、どちらがスズ子なのか、わからない。
鈴虫は、とっくに仲直りのなった後、リーンリン、リーンリン、盛んに鳴いた。しばらくして、スズ吉かスズ太のどちらかが死んで、残ったスズ吉かスズ太が、それでもハリキッて鳴いていたが、そのスズ吉かスズ太も死んでしまった。
残ったスズ代とスズ子は、天井がわりの薄いザルをはいでみると、木炭の上や、キュウリの上にいて、触角を、ウヤムヤと動かしている。
結局、思惑通りに、はかったように協力してくれたわけではないけれど、結果的に、私は鈴虫のお世話になった。
「鈴虫が鳴かない頃にケンカしてたら……」とツマが言った。
どうやって仲直りしたつもり?
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%