返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 作品合集 » 正文

笑う茶碗38

时间: 2019-12-05    进入日语论坛
核心提示:近頃のジジイ若い頃にはまったく思ってもみなかったのに近頃「まったく近頃の若い者は」と思っている。私はまんまとジジイになっ
(单词翻译:双击或拖选)
近頃のジジイ

若い頃にはまったく思ってもみなかったのに近頃「まったく近頃の若い者は」と思っている。私はまんまとジジイになったみたいだ。
当然のことなので、私は今年五六で、つまり四捨五入したら六〇の爺さんだ。
なんだって近頃の若い者は……と思うのは、真夏日に毛糸の帽子をかぶってる若者を見たりする場合だ。
まったくどういうつもりだ。脳ミソ蒸かそうってのか?!
近頃、アンクル・トリスが復活してCMに出てくる。まったく近頃の若い者は……とオヤジBが言うと、ツルっぱげのアンクルが「すいません……」とあやまる展開だ。
オヤジBの方がビックリすると、自分を指して「近頃の若い者」って言う、あのCM。あれを考えたのは、ゼッタイに近頃の若い者に違いない。少なくとも、五六にはなってないと断言する。
ジジイになる気持よさ、というものがあるのだ。ジジイになって若い者に悪態をつく快感。つかずにいられない気持というのがあるのだ。と、五六になってわかったからだ。
先日、二〇年前に連載していた対談を、本にしたいと言ってきた若者がいて(よくよく考えると、彼ももう若者ではないのだったが)その本のために、その昔のメンバーで座談会をした。
呉智英、糸井重里、鏡明にそして私。当時は近頃の若い者だったジジイどもである。座談会をまとめていた関三喜夫は既に亡くなっている。
中華料理屋で収録となって、その個室の隅におあつらえに立っていた帽子掛けに、呉智英がかぶっていたパナマをヒョイとひっ掛けると、糸井重里がパチパチ手を叩いて言った。
「呉智英、自分の理想のジジイ像、演《や》ってるだろ」
たしかに、どこから見ても昔ながらのジジイに見える。
「イヤ、まだまだ、本当は印税でもうかって、般若の飾りのループタイするのが目標なんだ。純金ムクで目玉んとこにルビーがはめてある」
「そういや、オレ、呉智英にすすめられて、帽子買ったんだよパナマ……」
と私が言った。
「今日はかぶってないじゃないか」
「うん、どうもまだちょっとね、なかなかイキオイがつかない」
買ったのは去年の夏だった。銀座にトラヤって昔からある帽子屋があって、そこで、思いっきり奮発してパナマを買った。
買ったその場でかぶって、事務所まで歩いてきたのだが、なんだか帽子だけ浮いてるようで、それっきりになっていた。分不相応に上等なヤツを買いすぎたらしい。
呉智英は、もともと帽子が好きでかぶりたかったのだが、なかなかキッカケがつかめなかった。そうこうするうちにハゲてきたので、まるで、|だから《ヽヽヽ》かぶったようだが、断じてそうではないのである! と言い張っている。
さんざんからかったのだが、気持がわからないでもない。なんだか、昔、自分がコドモだった頃のオトナの格好をしてみたくなる年頃になっているらしい。
昔、自分がコドモだった頃の様々なモノ、たとえばブリキのバケツだのジョウロだの、ガラスの笠をつけた電球だの、竹箒だの、七輪だの、そういうものに奇妙に愛着があるのだ。
夏の服なら、麻の太いズボンに開襟シャツ、尻のポケットに扇子を入れて、となると、パナマもかぶりたい。
黒沢明の映画に出てきた刑事みたいに、ハンカチでつるりと頭の汗を拭いてみたりしたい。
なかなか、かぶる機会のないパナマはそのままにして、もうちょっと安物の麦ワラ帽や、粗く編んだ網状の帽子を買って、今年はずいぶんかぶった。
たしかに、カンカン照りの下を歩くのには、帽子をかぶっている方が涼しいのだ。
着物に帽子っていう格好も、この夏は何度かした。その度に、例のパナマもかぶってみるのだが、どうも落ちつかない。結局慣れた方にした。
帽子をかぶることについては、かぶるうちだんだんに慣れてくるようなのだが、それをかぶってみると、まだまだ、分不相応のような気分になる。
ところが、なのだ。どういうわけなのか「近頃の若い者」が、今年はその昔のオヤジ風の帽子を、あえてかぶるのが流行るらしい。
自分が帽子をかぶってみると、帽子をかぶった人が目につくようになるが、今年は、一〇や二〇のハナタレ小僧が、こっちが、やっとの思いでかぶるようになった帽子を、ヒョイとかぶりだしてしまったのである。
毛糸の帽子をかぶるより快適なのに気がついたのか、いや、単に流行っているからに違いない。
道を歩いていて、あッ!! と思う。そういうヤツが欲しかったんだ、という帽子を、そのハナタレがかぶっていて、しかも、まるで平気でかぶってるから、帽子が浮いてないのだ。
「まったく……」
と言ったまま、ジジイになりきれてないジジイは、くやしいのだった。
オレはなぁ……流行ってるから帽子かぶろうってんじゃねえんだ。流行ってないから、かぶろうと思ってたのに……ちきしょう、勝手に流行らしたりするない! という気持だ。
それにしても、たかが帽子をかぶるくらいに、こんなに大げさなのが、やっぱり我々くらいな、中途ハンパなジジイの心理なのだろうか?
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%