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愛してると言わせて11

时间: 2019-12-07    进入日语论坛
核心提示:あれも愛これも愛のどが痛いなと思ったら、あれよあれよという間に熱が出て、三日間ほどダウンしてしまった。夕方、ヨロヨロと起
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あれも愛これも愛

のどが痛いな……と思ったら、あれよあれよという間に熱が出て、三日間ほどダウンしてしまった。
夕方、ヨロヨロと起きあがり、何かあったかいものを作ろうかと思った時、電話が鳴った。女友達からである。
「え? 風邪《かぜ》なの? 何か食べた?」
「これから作ろうかと思って……」
「ダメよ。寝てなくちゃ。今、私まだ会社だけど、何か食べるもの持っていくからそれまで寝てて」
そして夜八時頃、彼女がやってきた。
「遅くなってごめんね。セブンイレブンしかあいてなくてサァ、でもあそこ色々あるのよ、ホラ」
ドカドカと出したものはサンドイッチ、おにぎり、サラダ、おでん。デザートにお団子である。普通なら風邪の友達に向かって「食べる物持っていくわ」と言えば、手製のスープだったり、あったかいおかゆだったりするものだが、私の女友達にそういう健気《けなげ》な手合いはいない。でも、セブンイレブンのおでんにサラダという発想を、私は結構気に入っている。その上、
「あったかいものがいいと思ったの。だからたくさん食べてね」
と優しい言葉で、発泡スチロールのおでん丼をすすめてくれたりするから涙が出てくる。
そのうちに私の風邪見舞だということも忘れて、ソファにでんぐり返り、女性週刊誌を読みながら、
「ねえ、お団子用に渋いお茶いれてよ。できれば玉露がいいわ」
などとのたまってくれた日には、涙を通りこしてほとんど愛してしまう。
私がガウン姿でお茶をいれていると彼女が突然、ゲラゲラと笑い出した。何ごとかと思ったら、女性週刊誌の見出しを示して言った。
「ねえ、見て見て。これ、すごい見出しだと思わない?」
見ると、ある女優が好きな男のもとへ通い、彼の下着を洗たくして愛が深まりつつあるという記事である。その見出しが、
「下着洗たく愛」
これは確かに名文句である。私が感心しながらお茶の続きをいれていると、彼女は「ヒェー」と叫び、また私を呼んだ。
「見て見て。これもすごいわよ。イヤァ、よく考えるわよねえ」
私はまたお茶を途中にして週刊誌をのぞきこんだ。ある男のタレントと女のアナウンサーのゴシップ記事である。記事によると、彼女の方が心変わりして彼はイライラしているらしい。テレビ局で会った時、彼は「オイッ、お前」と叫んで彼女を呼び止めたという。この記事の見出しが、
「苛立《いらだ》ち愛」
さすがに二人で感心してしまった。ホントに、東スポと女性週刊誌は見出しがうまい。先の「下着洗たく愛」を別の女性週刊誌では、
「ホテルでH速攻愛」
と書いている。この二つの見出しを見ただけで、内容を読まなくてもわかってしまうから、みごとと言う他ない。
私が感動の嵐に包まれながら、お茶の続きを再びいれていると、突然彼女が、
「ギャオー」
と叫び、ソファでのたうって笑っている。今度は何かとのぞくと、
「ドロ沼の不倫愛」
とあって、イギリスのチャールズ皇太子とダイアナ妃の記事である。
「泥沼の不倫愛なんて、別にそれほどの見出しじゃないじゃない?」
私が言うと、彼女はおかしさのあまり涙をこぼしながら叫んだ。
「ここよッ、ここ読んでェ!」
見るとダイアナ妃の写真の横に、一行の説明がある。
「夫が打撲傷になるほど、どついたダイアナ妃」
これには風邪も熱も吹っとぶほど笑いころげた。「どついた」という関西弁を、イギリス王室の妃殿下の写真説明につけるセンスは秀逸である。
何度も中断させられ、いい加減ぬるくなったお茶を飲みながら彼女は言った。
「私、下着洗たく愛は趣味じゃないから、せめてお正月に向かって『お雑煮作り愛』っていうのやろうかしら」
「それより『セブンイレブンおでん愛』の方が、身のほどに合ってるわよ」
「ま、それもそうだわ。うちの会社にね、『蜂蜜レモン愛』が昔いたわ」
「何、それ」
「接待でいつも二日酔の彼に、毎朝手製の蜂蜜レモンを届けてね、ついに結婚した」
「私『ひらり』の中で、毎朝みそ汁作ってタッパーにつめて届けるOLを書いたわ」
「密封容器愛だ」
「薬味のネギなんかも会社の給湯室で切って、みそ汁に入れるの」
「ネギきざみ愛」
「アータ、どうでもいいけど止まらなくなったんじゃない?」
「アハハ。ねえ、私メンドくさいからここンちでお風呂《ふろ》に入って帰るわ」
オイオイ、風邪見舞でしょ! と思いつつ、私は「風呂たき愛」をやる。そしてやがてお風呂からあがってきた彼女に「冷たいウーロン愛」である。彼女は髪などふきながら私に聞く。
「クリスマス、どうするの?」
「今さらァ。『ひらり』書くイヴよ」
「ホ。『恒例ハイミス独り愛』だ」
言いたい放題を言って、彼女は帰って行った。私はクシュンとくしゃみをしながら、今一番欲しいのは、金沢プロデューサーの「〆切り延ばし愛」だと思っていた。
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