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愛してると言わせて12

时间: 2019-12-07    进入日语论坛
核心提示:貴花田・りえ婚約騒動それにしても「貴花田・宮沢りえ婚約」のニュースはセンセーショナルであった。その夜、私はNHKで打合せ
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貴花田・りえ婚約騒動

それにしても「貴花田・宮沢りえ婚約」のニュースはセンセーショナルであった。
その夜、私はNHKで打合せを終え、十一時近くに自宅に戻った。電話が鳴ったので取ると、弟からである。弟は別件で電話をしてきたのだが、切る時に言った。
「ところで貴花田と宮沢りえが結婚するんだってな」
「アータねえ、何バカなこと言ってんのよ。そんなことありっこないでしょ」
「ホントだって。『ニュースステーション』で言ってたよ」
「え……ウソ」
「ウソじゃねえよ。言ってた」
「何かの間違いよ。今までNHKにいたけど、誰もそんなこと言ってなかったわよ」
「でもホントだよ。あれ? 貴花田じゃなくて舞の海だったかな」
「舞の海とりえ!? まさか……」
「待てよ、違ったかな。そうだ、水戸泉だった」
「水戸泉? え……ウソ……」
弟はゲラゲラ笑い出した。
「お前ってホントに昔っからバカだよな。バカをからかってるとあきねえよ。じゃ、俺忙しくて、これ以上バカの相手できねえから切るよ」
これである。弟の電話が切れるや、今度は女友達からである。
「ねえ、貴花田とりえって結婚するのよ!」
「ホントなの?」
「ホントよ。『ニュースステーション』で言ってたもん」
「信じられない……。そんなことってあるんだ」
「何よ、あなた知らなかったの?」
「知らなかったわよ。今、弟が電話で言ってたけど」
「ナーンダ。あなたに聞けばもっと詳しくわかるかと思ったのに」
「何で私が詳しいのよ」
「だって『ひらり』書いてるんだもの。ひらりの作者が詳しくないなんて恥しいわよ。しっかりしてよ」
「ひらり」と何の関係があると言うのだ。電話を切るや、またベルが鳴った。某有名人からである。
「ちょっと、貴花田とりえが結婚するのよッ」
「そうだってね、びっくりしたわ」
「何よ、知ってたの?」
「ん、今聞いたとこ」
「何だ、つまんない。私が今まで知らせた人は誰一人知らなくてサ、『ヒョー! ウソォ!』ってパニックになるのよ。人をパニックにするこの快感! 何だ、知ってたのか」
「ホントに信じられないわ。私が思うに、これはね……」
「悪いけどアナタの感想聞いてる暇ないの。切るわ。これからもう二、三軒に電話して知らせるから」
知らなきゃ怒られるし、知ってりゃ怒られるし……。彼女が切るや、また鳴った。これも某有名人である。
「何よ、あれッ。許せないわッ」
「あなた、貴花田のファンだった?」
「ファンじゃないわよ。でも許せないわよッ。何あれッ」
彼女は「許せない」と「何あれッ」を交互に十五回くらい叫ぶと、ガチャンと切ってしまった。すぐにまた鳴った。今度は相撲など全然興味がなさそうな女友達である。
「ねえ……牧子さん……」
何やら声がやたらと暗い。これは貴花田の話じゃないなと思った矢先、彼女は暗ーくつぶやいた。
「貴花田とりえのことでショック受けちゃった……」
「へえ、あなたまでショックなの?」
「じゃなくて、私、貴花田とりえの年齢をたしてみたの。そしたら二人あわせて三十九歳なの。私は一人で三十九歳よ……」
「あ……」
「私……ショック……じゃね……」
暗ーくつぶやくと、彼女は電話を切った。すると今度はファックスが送られてきた。近くに住む女友達である。
「牧チャン、電話がつながらないからファックスにしました。貴・りえの結婚は絶対に相撲協会が仕組んだのよ。あの二人が結婚すれば、ものすごく立派な男の子が生まれると思うもの。その子を力士にすれば相撲協会は安泰でしょ。すごくいい方法だと思うわ」
これが、これが世界をとび回って仕事をしている第一線のキャリアウーマンのファックスである。ああ……。
それにしても、私の女友達ってどうしてこうバラエティに富んでいるのだろう。何かコトが起きると、彼女たちがいっせいに電話をかけまくってコメントするから大騒ぎである。もちろん、当然のことながら私も一枚かんでいる。
夏の参議院選挙の時などは、政見放送を見るたびに電話が鳴り続けた。政治姿勢に対するコメントもあれば、候補者の服のセンスやヘアスタイルに至るまでビシビシ言う。これが意外と女の本音が出ていて、面白い。だから私はコトが起こるたびに仕事にならない。コトが起こるたびに電話代がはねあがる。
翌日、女友達と近くのマーケットに出かけたら入口でワゴンセールをやっていた。ワゴンの中はみかんである。そして、
「祝!! 貴・りえ婚約大特売」
と横断幕がかかっていた。どうして二人の婚約が「みかん大特売」なのかと思っていたら、同じことを感じていたらしい女友達が店員に聞いた。店員は胸を張って答えた。
「みかんは丸い。丸いは白星。だから、貴花田なんです」
ところが彼女はめげない。
「みかん色の白星なんて変よ。どうせならアナタ、卵の大特売にしてよ」
ああ、平和な世の中はステキだ。
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