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愛してると言わせて13

时间: 2019-12-07    进入日语论坛
核心提示:悪夢の結婚報道「ひらり」の打合せでNHKに行ったら、スタッフの一人がニヤニヤと笑いながら言った。「内館さん、何かと雑音が
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悪夢の結婚報道

「ひらり」の打合せでNHKに行ったら、スタッフの一人がニヤニヤと笑いながら言った。
「内館さん、何かと雑音が入るかもしれませんが、そこはそれ、何というか気にしないで気を確かに持って、ひたすら原稿を書いて下さい。ねッ」
私は全然わけがわからず、聞いた。
「雑音って……何ですか?」
スタッフは今度はムフフと笑って、それっきり何も言わなかった。
帰宅すると女友達からファックスが入っていた。それが何と!
「石田ひかりと水戸泉が結婚か!!」
という記事をスポーツ紙で見たという内容のファックスなのである。私の驚いたことといったらない。常日頃から「水戸泉は心の夫」と言い回っていた私である。優勝を機に、若い女に走るんじゃないかと、心の年上妻は心配していた矢先にこれである。それも相手があのひらりとは!! 悪夢だわッ。
こんなものはウソに決まっていると思いつつ、何しろ貴花田とりえカップルが生まれているんだからわかったものじゃない。今の世の中、ホントに何が起きても不思議はないのである。そのうちに、私は「これはきっと本当だッ!」と思ってしまった。本当なら、何といってもみっともないのはこの私である。いいトシして「心の夫水戸泉」なんてさわぎまくって、うっとりして、会ったこともないのにハラハラドキドキして。そのあげく、自分のドラマのヒロインに奪われたんでは立つ瀬がない。
私はファックスをくれた女友達に、電話で確かめてみた。(ホントに暇ね)
「電車の中で誰かが読んでたスポーツ紙に出てたのよ。たぶんウソよ」
「ホントだったらカッコ悪いなァ、私。心の夫なんて、ああ、どうして言いまくっちゃったんだろ。死にてー」
「そればかりじゃないわよ。アナタみんなに言ってたじゃない。『皆さん、一九〇キロ以下の男は男じゃありません。私の理想は水戸泉。顔も水戸泉。心も水戸泉。私の不幸は水戸泉のような人と巡りあえないことに尽きます』って」
「えー!? そんなこと言ってた?」
「言ってたわよ」
「……私なら言いかねない」
「ねえ、りえちゃんが婚約した時、たけしさんが失恋会見を開いたじゃないの。アナタもそれやれば」
「私ごときの失恋会見に、誰が集まってくれるのよ」
「そりゃそうね。しかしサァ、ひかりちゃんとアナタじゃ、勝負になんないわ」
「ね。ナマで会ってもホントにいい子なの。可愛いし、キラキラしてるし、明るいし、頭もいいし」
「若いし」
「お黙り」
「牧ちゃんってサァ、たとえ心の夫でも、夫には恵まれない星のもとに生まれてんのよ。カワイソ……」
「自分だってそうじゃないの」
「私は心関係は大丈夫よ。だって心の夫はハンフリー・ボガートだもん」
「ずるいよね。死んじゃってる人を心の夫にすれば、絶対傷つかないもん」
「そうよ。アナタも双葉山とか栃錦とか、死んだ人を夫にすればいいのよ。いくらでもいるでしょ、死んじゃった人で太めの男」
「太けりゃいいってもんじゃないの」
「あら、そ。だいたいねえ、生きてる男で、それも独身を心の夫に選ぶという根性が図々しいのよ」
「でもナオコの心の夫はリチャード・ギアだって言ってたわよ」
「あら、彼は結婚したからやめたって。それでケネディ大統領にしたって」
「ケネディ大統領!? 何で突然、リチャード・ギアからケネディになるの?」
「知らない。死んでるからじゃないの?」
「……ついていけない」
「でもサ、現実の夫婦ってときめかないものらしいね。会社の男の人たちが言ってるもの。ひらりの両親はまるでうちがモデルみたいだって。お互い、嫌いじゃないけどときめかないって」
「モデルなんていないの。でも、私がもし二十代前半で結婚していたら、そんな夫婦になってた気がして書いているの」
「私もたぶんそうなったと思う。でも、それでも夫がいるだけいいわよね。私ら、いないんだから、せめて心関係は派手に決めなくちゃァ!」
ホントに私の女友達はのどかな人が多くて、この私でさえついて行けない。
その後、水戸泉・ひかりカップルは、まったく根拠のないイタズラだとわかったのである。そんな時、「週刊テレビ番組」の最新号が自宅に送られてきた。ふと見ると、ひかりちゃんの談話が出ている。
「水戸泉関は『ひらり』の脚本家の内館さんが大ファンなんですよ。もしそんなことになったら、怒られますよ」
私は吹き出した。私がバカな女友達と「ひかりちゃんじゃ勝負にならないわ」などとため息をついていたのに比べて、何と私を思いやる答弁なことか。ホントに、ひかりちゃんはいい子だ。
それからしばらくたったある夜、私はNHKの廊下で、バッタリと彼女に会った。私はニヤリと笑って言った。
「『週刊テレビ番組』の答弁、読んだわよォ」
ひかりちゃんはケラケラと笑うと、三つ編みに結った髪を揺らしながら、スタジオへと走っていった。彼女の愛らしい表情と明るい笑い声と、そして揺れるおさげを見ながら、私はあの噂《うわさ》がデマで本当によかったと思った。やっぱり彼女が相手では勝負にならない。
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