「ひらり」を書いて、何が一番上手になったかというと、これがスパゲティ料理である。
「ひらり」とスパゲティとどう関係があるのかと思う人も多かろうが、これには深い関係がある。
NHKの朝のテレビ小説というのは半年分の原稿量が二百字詰原稿用紙で約六、〇〇〇枚ある。六、〇〇〇枚を書くだけでも大変だが、収録がどんどん後から追いかけてくる。私は書くのが速い方だと思うが、それでも台本のストックはどんどんなくなる。まるでカーチェイスのような日々である。
こうなると食事の用意などをする余裕がない。料理というのは気持にゆとりがないと作れないものだとつくづく思う。たとえば大根をおろしながら「こんなことしてる間に原稿三枚は書けるわ」などと、せこいことを考えてしまうのである。
かくして私は、夕食はほとんど毎日スパゲティという情けない話になってしまった。スパゲティは簡単だし、味に変化もつけられる。時間もかからない上、具を考えれば栄養価も悪くない。もう毎晩毎晩、スパゲティにサラダという日々である。が、それではあまりに味気ないので、スパゲティに「ひらり」の登場人物の名前をつけた。
「よしッ、今夜は『ファルファレッテひらり風』にしよう」
と、こんな具合である。ホントに暮しの中に小さな喜びを見いだす私は、何て地味で、何て可愛いんだ。うっとり。
皆さんも、忙しい時にはぜひどうぞ。
☆ファルファレッテひらり風
ファルファレッテとはイタリア語で蝶々を意味する。そう、ひらりひらりである。マーケットに行けば蝶々の形をしたパスタを売っているので、それを買ってくる。
[#ここから1字下げ、折り返して2字下げ]
㈰鶏肉を適当な大きさに切り、塩こしょうしておく。
㈪鍋にバターをとかし、㈰を焼いてちょっと焦げめをつける。これにマッシュルームとグリーンピースを加えて炒める。
㈫トマトを適当に切って㈪に加え、塩こしょうで味つけする。
㈬ゆでたてのファルファレッテとまぜあわせて出来あがり。
[#ここで字下げ終わり]
☆レッドペッパー・ミノリンチーニ
こんなイタリア語はない。みのりをもじって私が勝手に作った。ニンニクと赤唐辛子のスパゲティである。健気《けなげ》で可哀相な女に見えて、実は毒のある言葉を吐いたりするみのり。食べてしばらくたってからカーッと辛さが広がる赤唐辛子は、まさしくみのりにふさわしい。
[#ここから1字下げ、折り返して2字下げ]
㈰赤唐辛子、ニンニクの薄切りを、たっぷりのオリーブオイルで炒める。
㈪赤唐辛子によく火が通ったら、引きあげる。
㈫ニンニクがこんがり色になったら、パセリのみじん切りを加える。
㈬濃いめの塩でゆでたスパゲティに㈫をからめて出来あがり。
[#ここで字下げ終わり]
☆バミセリ寒風山
パミセリとはイタリア語で髪という意味。細い細いスパゲティである。これはなかなか太れない寒風山にぴったり。バミセリは色々やってみたが、スープ仕立てにするのがおいしい。
[#ここから1字下げ、折り返して2字下げ]
㈰人参、じゃがいも、玉ねぎ、セロリ、キャベツを適当な大きさに切る。
㈪サラダオイルでサッと㈰を炒め、ブイヨンを加えてひと煮立ちさせる。アクをとりながら、塩こしょうで味をつける。これを三十分ほど煮こむ。
㈫ゆでていないバミセリを㈪に入れて、五分ほど煮て出来あがり。
[#ここで字下げ終わり]
グリーンピースを散らすときれい。
☆フェットチーネ・藪沢夫婦
フェットチーネとは、きしめんのようなペタンコの手打ちパスタ。これは冷蔵庫に転がっている残り野菜を何でもトマトソースにぶっこんだもので、早い話が全然気合いが入ってない。倦怠《けんたい》気味の洋一・ゆき子夫婦そのもの。
[#ここから1字下げ、折り返して2字下げ]
㈰野菜を何でもいいから適当に切る。
㈪サラダオイルを熱して、㈰とニンニクをぶっこんで、強火で炒める。
㈫そこらで売ってるトマトソースを㈪にぶっこんで十五分ほど煮る。火を止めてから チーズを適当にふりかけ、塩こしょうも適当にして、スパゲティにぶっかける。
[#ここで字下げ終わり]
気合いが入らないと文章も気合いが入らないものだワ。ただし、このスパゲティは気合いを入れて作るとすごくおいしい。そう、夫婦と同じです。気合いが大事です。結婚したこともないのによく言うワタシ。
☆キャベツ・ギンジーノ
当然、銀次の好きなキャベツの和風スパゲティである。
[#ここから1字下げ、折り返して2字下げ]
㈰キャベツを千切りにして、サラダオイルで炒める。しょうゆとダシ汁で味を整える。
㈪辛子メンタイをほぐし、酒少々でのばしておく。
㈫ゆでたてのスパゲティに㈪をからめ、その上に焼きソバのように㈰をのせる。のりとかつお節をかけて出来あがり。
[#ここで字下げ終わり]
この他にもインテリ小三郎にふさわしく、ペンの形をしたパスタのペンネを使ったものや、アツアツ夫婦にぴったりのラザニア梅若風や、色々と工夫してはスパゲティとパスタばかり食べている。
「ひらり」を書き終えたら、女友達数人でスパゲティパーティをやろうかと考えつつ、私は今夜もパスタをゆでる。
こんなイタリア語はない。みのりをもじって私が勝手に作った。ニンニクと赤唐辛子のスパゲティである。健気《けなげ》で可哀相な女に見えて、実は毒のある言葉を吐いたりするみのり。食べてしばらくたってからカーッと辛さが広がる赤唐辛子は、まさしくみのりにふさわしい。
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㈰赤唐辛子、ニンニクの薄切りを、たっぷりのオリーブオイルで炒める。
㈪赤唐辛子によく火が通ったら、引きあげる。
㈫ニンニクがこんがり色になったら、パセリのみじん切りを加える。
㈬濃いめの塩でゆでたスパゲティに㈫をからめて出来あがり。
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☆バミセリ寒風山
パミセリとはイタリア語で髪という意味。細い細いスパゲティである。これはなかなか太れない寒風山にぴったり。バミセリは色々やってみたが、スープ仕立てにするのがおいしい。
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㈰人参、じゃがいも、玉ねぎ、セロリ、キャベツを適当な大きさに切る。
㈪サラダオイルでサッと㈰を炒め、ブイヨンを加えてひと煮立ちさせる。アクをとりながら、塩こしょうで味をつける。これを三十分ほど煮こむ。
㈫ゆでていないバミセリを㈪に入れて、五分ほど煮て出来あがり。
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グリーンピースを散らすときれい。
☆フェットチーネ・藪沢夫婦
フェットチーネとは、きしめんのようなペタンコの手打ちパスタ。これは冷蔵庫に転がっている残り野菜を何でもトマトソースにぶっこんだもので、早い話が全然気合いが入ってない。倦怠《けんたい》気味の洋一・ゆき子夫婦そのもの。
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㈰野菜を何でもいいから適当に切る。
㈪サラダオイルを熱して、㈰とニンニクをぶっこんで、強火で炒める。
㈫そこらで売ってるトマトソースを㈪にぶっこんで十五分ほど煮る。火を止めてから チーズを適当にふりかけ、塩こしょうも適当にして、スパゲティにぶっかける。
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気合いが入らないと文章も気合いが入らないものだワ。ただし、このスパゲティは気合いを入れて作るとすごくおいしい。そう、夫婦と同じです。気合いが大事です。結婚したこともないのによく言うワタシ。
☆キャベツ・ギンジーノ
当然、銀次の好きなキャベツの和風スパゲティである。
[#ここから1字下げ、折り返して2字下げ]
㈰キャベツを千切りにして、サラダオイルで炒める。しょうゆとダシ汁で味を整える。
㈪辛子メンタイをほぐし、酒少々でのばしておく。
㈫ゆでたてのスパゲティに㈪をからめ、その上に焼きソバのように㈰をのせる。のりとかつお節をかけて出来あがり。
[#ここで字下げ終わり]
この他にもインテリ小三郎にふさわしく、ペンの形をしたパスタのペンネを使ったものや、アツアツ夫婦にぴったりのラザニア梅若風や、色々と工夫してはスパゲティとパスタばかり食べている。
「ひらり」を書き終えたら、女友達数人でスパゲティパーティをやろうかと考えつつ、私は今夜もパスタをゆでる。