新しいファンヒーターを買った。
もとはガスストーブを使っていたが、徹夜明けかなんかのとき、寝ぼけて膝の裏をジューと押しつけてしまったのと(そこには今でもストーブの跡がついている)、猫がやかんをひっくり返してしまったのが理由で、ファンヒーターにかえたのが、五年くらい前だ。
いやー、温風が出るのに、触っても火傷《やけど》しないや、なんて最初はそれだけで喜んでいた。おまけに部屋があったまってくると勝手に火が小さくなってくれる。やかんがかけられないんで、お湯が常備できないのと、部屋が乾燥するのはちょっと淋しかったけど、何よりも安全が一番だし、加湿器と沸騰ポットに助けられ少しずつ慣れた。
しばらくたって、少し大きいのを買ったら、こんどは三時間おきにピーピー鳴いてる。ボタンを押してやると喜んで燃え続けるが、かまってやんないと消えてしまう。でもまあ、それがついているおかげで、人のいない部屋をあっためておけたりするわけ。私はつけっぱなしで眠ってはいつもピーで起こされた。使ったことはないけど、指定の時間に点火できるタイマーもついてたみたい。換気が必要だとピッピッピッと少し違う鳴き方もする。灯油がなくなりそうな時はまた違う。うるさいといえばうるさいが、まあ慣れればへいちゃら。
と思っていたらまたまた新しいのがやって来たわけです。これは、前のと違って鳴かない。静かでいいし、部屋が指定の温度にあったまったときは、火が小さくなるだけでなく、消えてしまうの。で、また、寒くなってくると自動的に点火する。勝手についたり消えたりするってのはすごい。それが灯油の節約になるので、灯油タンクが小さく、従って全体の大きさも前よりひとまわり小さい。すっげーと思ったが、三時間経つとやっぱり勝手に消えてしまうのだった。どうも寒いなーと思ってヒーターを見ると、
「三時間経ったんで消えやした」
というイミのランプが灯っているので、でーい、寒いと思ったぜ、とまたつけなければならない。ピッとも鳴かないで消えてしまう、クールなやつ。でも、静かってことは大切なことだ。沸騰ポットで、沸騰ボタンを押すと、
「ピッ」
お湯が沸騰すると、
「ピーッピーッピーッピーッ」
と鳴いて知らせるのがあるが、はっきしいって驚く。あれをお客の前で使うとお客は何かと思うだろう。それに、つけっぱなしは楽だが、寒いなと感じてから暖房をつけるということは大事なことだわ。省エネね。
としみじみ思っていたら加湿器がぶっこわれたので新しいのを買った。私は昔「人間発電機と呼んでください」というタイトルのエッセイを書いたこともあるくらい静電気に感電するので、加湿器がないと恐ろしくて迂闊《うかつ》に金属や人に触れない。毎年、パチッと来たら、
「あっいてっ、……もう冬ねえ」
である。今年の初パチは十一月十五日、テレビ朝日のエレベーターのドアで、であった。人が何でもなく触っているところでいきなり、
「痛っ」
とか言って手を押さえたりするのは、情けないけど、痛いのよねー。とほほ。
こんなふうだから、ある人から、
「これ、いいよ」
と、低周波肩こり治療器を勧められた時は、少し怖かった。私がやると、弱い電流でもえらいことになるような気がしてしまう。でも思い切って借りたらなんてことなくて、ほっとした。
この治療器は、腰なんかでもチクッチクッと来てなかなかいいのだが、肩に電極を付けると、面白いくらいに肩がびくんびくんすくみあがる。鏡で見て、思わず笑い転げてしまった。このキカイも、私が借りたやつはシンプルなものだったが、最近のは、
「そのまま眠ってしまっても大丈夫」
なタイマー付きだという。しかし、これを付けたまま眠ってしまうお年寄りの姿を想像すると淋しい。
「えーもう疲れちゃったー。おこづかいくれるならやるけどー」
とか言ったりする、あんまり優しくない子どもや孫でもいいから、やっぱり人がいるのがいいと思うわ。
人がいると言えば、私の会社では何か行事がある時、一所懸命写真を撮るマネージャーがいるので、あとでたいへん助かるのだが、そんな人がいない人たちのための「KANPAI」というカメラが出た。
専用の三脚を付けて立たせておくと、大きな音、つまり盛り上がった笑い声などがするたびにシャッターがおり、その上カメラの向きまで変わるという。私のマネージャーは、カメラやキカイが好きなので結局これを買ってしまった。そして、三脚を付けたカメラの前で手を叩いたり、大声を出したりして何時間もカメラと遊んでいた。それによると、
「大きな声がした時にシャッターがおりて、それから、今向いていた所とは違う方向を向くんだけど、大きな音がきっかけになるというしくみで、その音のする方を撮るわけではないみたい」
ということだった。でも、あとでカメラがひとりでどんな写真を撮っていたかを見るのは面白いであろう。普通にはもう使っているが、まだそういうふうに使ってはいないので、その日が楽しみだ。きせかえ人形の履くようなサドルシューズまでついている。三脚に履かせる靴なのだそうだ。その他にも、四連写カメラ(一枚の写真が四分割されるという出来上がりで、続けて四ポーズが写せるけど、それしかできないカメラ)やら、横広の写真が撮れるフィルムやら、まだ使っていないが、買った。それでやっと気づいたけど、カメラって最近ほんとうに安くなったね。