そう、私が先月とがしのひざまくらで首をいためた内田です。おお、痛い。
なんてね。うえーん、また書くことがないよう。小井編集長は肝臓がフォアグラ寸前、少年編集者Fくんは胃壁が破壊寸前、とがし画伯は最近怒濤のように増えた仕事のまっただ中で、『Gainer』の対抗誌の困ったちゃんライターに苦しめられながら私の原稿を待ってるというのに、私はいったいどうすればいいの残暑。あっほら、あまりの動揺で変換まちがっちゃった。
最近あたしゃすっかり浅草でアブラ抜かれて叙情派になっちゃってさ、
「まんがの性描写? もう濡れ場の描き方なんて忘れちゃった。それより『S太郎』のパンカツおいしかったわ。吉本ばななちゃんと『S太郎』で飲みたいな……」
なんて言ってんの。きのうも夕飯、H井のどじょう鍋。その前は貝料理の店、K作で「みそたま」してたしな。もちろん、その合間に、『Gainer』読者とお年頃の近いラブリーボーイたちとお電話なんかもしてた。でもねえ、最近彼らと話していろいろ考えたことや教えられたことって、まだ、あたし自身の咀嚼《そしやく》が充分じゃないことが多くてさ。ほーんと、遥か年下のくせに言いたいこと言ってくれるナイスなやつが多くて。憎たらしいけど幸せ。
そうねえ、まだそんなで、自分でもよくわからないことが多いんだけど、ほんとに書くことがないので、途中でも書こう。先月書いたことと、要約すると同じことかも知れないが、勘弁してちょ。
さて、それはどんなことかというと、私がよく話してる、二十代前半から中頃の男の子たちは(あっと、心は少年の三十代初めの男の子も少し含む)、男と女の精神的ボーダーラインの決め方を、いろいろ考えているような気がするの。お互いの仕事を考えたうえでの、役割分担とか、結婚の意味とかさ。
健康なその子たちはもちろん知らないことだけど、ついこないだまではさ、
「うちの女房は女子校のあと勤めの経験もないお嬢さま育ちでねえ」
なんて嬉しそうに言ってるおやじが実在してたんだよね。女は、働かせないのが男の甲斐性って思ってる、超メーワクなおやじ。一皮むけば、社会や他の男や仕事を持つ楽しさを知った女たちには相手にされない、ただの青田買いのロリコンおやじ。
でもねえ、そういう伝統って、そう簡単に消えてなくなるわけじゃあないんだよね。逆ってのもあるじゃん。たとえば、去年の夏、大阪の天保山の水族館までの道を歩いてたら、後ろを歩いてた女の勤め人の二人連れの話が聞こえてきたんだけど、
「話、合うしなあ、可愛いんやけどなあ、年下やろ、頼りないやんかあ」
とか言ってんの。それ聞いて、あたしゃ思い出しちゃったよ。過去に男のこと、
「頼れる人がいい」
とか言ってた文化って、あったよねえ。でも、頼れるってどういうことなんだろう。その人の言い分を借りるとしたら、年下だと頼れないってこと? だとしたら、人生経験とか、そういうのかな。それとも収入? 経済観念? どれも、あたしにはピンと来ない。それは、あたしの好きな男の子たちにも、同じみたい。まあ、みんなジャングルの奥地で狼に育てられたわけじゃないから、これまでの女たちには仕事を持つ者が少なかったこととか、結婚とは今までどういう意味を持つものだったとか、そういう過去の伝統は少しは知っているし、それらが、自分ひとりの判断でいきなり御破算になったりしないものなのもわかってる。
そのうえ、聞いた話だけど、今、横隔膜を使って妊娠してる男の人までいるっていうじゃない。それがうまく行って大丈夫ってことになっちゃって、
「ぼく、きみの子ども産むよ」
って女に言う男が出てきたら? 結婚したあとに、どっちが子ども産むか話し合って決めるような夫婦関係になっちゃったら?
ほんと、今年は正月早々、大好きな男の子たちと長い時間かけて、焼きたてのぎんなん食べながらそんな話なんかしちゃってさ、あたしゃもう成人女子の自覚なんてどっか行っちゃったよ。何もかも、わかんないことだらけだー!
自分の仕事が手に入ることが当たり前になってきたあたしたちと、そんな女たちを出発点として考えはじめる男の子たち。あたしにとっては、仕事のうえでの悩みを聞いてくれる男の子が、頼りがいのある男なのよね。あたしが稼いでプレゼントしてたり、彼らに手料理食べさせてもらってたり、そういうのが、普通で、幸せで、バッチ・グー。たまに、
「子ども産ませてねん」
とか、
「愛してる。何でもしてあげる。うふん」
とか、原始リビドーごっこをするのも良い。
だから、この季節、まあこれ書いてんのはまだ二月なわけなんだけど、義理チョコでお返しを狙おうとかなんとか、テレビつけたときそういうのやってると、えっ? て感じになっちゃってさあ、頭こんがらがるんだよね。まるでテレビがタイムスリップして、過去を見てるような気分。なんか、各百貨店ごとにコンセプトを出すらしくて、「エビタイチョコ」とか「ファジーチョコ」とかやってんの。エビタイって、エビでタイを釣りましょうチョコなんだってさ。で、ファジーの方は、義理と、ほんとに好きな人のあいだのチョコらしくて、テレフォンカードが入れてあるんだって。つまり、あげたあと電話をもらって、好きになれる人かどうか考えるらしい。どっちも笑えるけど、まさか、本気にする人はいないんだろうな? あたしの知り合いには、いないことを願うよ。今どき、好きな男に「好き」って言えない女なんているの? 好きでもない男からプレゼントもらいたいなんて、しゃれになんないぞ。女の物欲をギャグにする時代は、マドンナが『マテリアル・ガール』で終わらせてくれたはずなのにな。
まあとにかく浅草はめしがうまい。小井編集長もFくんもとがしも、こんど浅草で盛り上がろ。なーんて、引っ越しして事務所片づいたら飲み会やる! と言いつつやってないのはあたしか。ごめんね。とほほほ。
まあとにかく浅草はめしがうまい。小井編集長もFくんもとがしも、こんど浅草で盛り上がろ。なーんて、引っ越しして事務所片づいたら飲み会やる! と言いつつやってないのはあたしか。ごめんね。とほほほ。