ラップの男の子たち
ほとんど日記化しているこの連載。いったい誰が読んでんだろ。とがしと、少年編集者Fと、小井編集長、書いたから読め! と私に言われて無理やり読まされている男友だち二、三人、あと、間違って二人は読んでるかもしんないから、全部で八人か。これじゃ、関川夏央兄貴が『諸君』に「知識的大衆諸君、これもマンガだ」を連載してるときに言ってたことと同じじゃんか。
とかなんとか言いながら連載十回めだって。すごいね。しつこいようだけど、もう書くことなんて何もないのよん。最初は、少年Fが最近の男の子に関するデータを集めてきて、それについて何か言ったりする、ってことだったんだけど、そのうちとっちらかって来た。で、打ち合わせしようと言いつつ、飲み会はしているが、打ち合わせはしてない。それでも容赦なく締め切りはやってくる。毎月この繰り返し。こないだ飲み会のとき、あたし連載の内容のこと何か相談とかしたんだったっけかなあ。みんなで撮った写真は残ってはいるが。あと、青年編集者Kからの「ヤマトタケシくんの試合、一緒に行きましょうね」というFAXとか、少年Fからの「楽しかったです。またいろいろお話したい」っていうFAXとかね。しかし、あの飲み会のときFって何か喋ってたっけ? 何も記憶に残ってないわ。あたしも飲むと、すべてが忘却のカナタに旅立ってしまうほうだからなあ。カナタからの手紙なんちて。
あーあ。
最近、私の触れた男の子たちといえば、あれかなあ。川崎のクラブチッタで、第一回チェック・ユア・マイク・コンテストというものがあって、そこへ連れてってもらったのよ。ラップの子たちのコンテストで、もちろん女の子もいるんだけど、男の子のほうが多かった。最年少は十六歳で、十六歳の子ばっかりのチームもあった。審査員は萩原健太さん、藤原ヒロシさん、ECDさんほか。日本全国から二十組の参加があったけど、応募はその三倍あったという。ラップと言えば、近田春夫さんのビブラストーンが大好きで、あたしゃほとんどおっかけなんだけど、ラップ全体の状況とかはぜんぜん知らなかった。でも、おもしろかった! なんつっても、ひとことで言って、みんな可愛くて健気《けなげ》だ。自分の言いたいことを伝えるぞ、そのために沢山練習したぞ、というその一途な姿勢。もちろんラップだから当たり前と言えば当たり前だが。でもほんと、良かった。
強引な言い方かもしれないけど、あの可愛さが、ジャズの人にもあったらなあ、と思う。もちろんある人もいるが。なんか、まだわりと気難しい印象が強いような。
五味太郎さんの出してるジャズの絵本、『JAZZ SONG BOOK』の1と2を見たときのあのいとしさに似たものが、歌ってる時に出せたら、どんなにいいかしらん。あ、そうなの、あたし、ダンスバンド「アベックス」のほかにジャズバンドもやってんですよ。小林のりかず氏によると、
「漫画家でジャズバンドやってるのはぼくと君だけ」
なんだそうだが、そうなのだろうか。
音楽コラムみたいになってきたな。
ラップの話に戻って、ラップはどうも、レコードをかける子とラッパーの、最低二人居れば出来る音楽みたい。あ、でも最近はDJの人もちゃんと音楽の人と考えられることが当たり前になってきたから、人数をうんぬんするのはズレてるかな。まあ、何が言いたいかというと、ライブの出来る音楽活動、イコールバンドのようなものをやるときに、いちばん大変なのってメンバー集めとその維持だったりするでしょ。でも、ラップなら最初は二人でも大丈夫。これは大きいかもしれない。その証拠に、
「現代のフォークって言った人もいるしね」(川勝正幸氏・談)
うーむ、そうだったのか。と今さら知ったくせに、チッタに連れてってくれたSFCの高さんから、ラップ界の注目の人、高木完さんまで紹介してもらう幸せ者な私であった。
やっぱり何かをいっしょけんめやってる男の子は可愛いな。何が好きで、それをどうしていきたいかを言えることなんて必要条件、つまり、当たり前。「まだ何をやりたいのか自分でよくわかってないしい」とか言う子とは、もう話したくないね。まだ何もやってないのに、やってもどうせつまんないし、みたいな言い方をする子もやだ。まあ最近そんなの周りにいないからいいけどね。
えーでは青年Kのリクエストに応えて、松尾・キッチュ・貴史のことを書こう。
こないだ、高田文夫さんのラジオのあるコーナーで、春風亭昇太さんがキッチュの家から生中継をするっていうんで、乱入してきたの。二人がたくさん物真似するんで、マイクを持つスタッフも笑いをこらえていたその模様を、最近持ち歩いているビクターのゲッツでビデオに撮ったの。そのあと、近くのお洒落なお蕎麦《そば》やさんで、昇太さんと二人でキッチュにお蕎麦をご馳走になった。帰りに駅まで送ってもらったら、道ですれ違った女の子たちが「あー」だの「えー」だの「サインして下さい、なーんて言ったりして」だの小さい、でも聞こえるくらいの声で言ってる。なんか大変だなあ、としみじみ思う私の横で、昇太さんはあの、名前知らないけどペダルこいでるとエンジンのかかる原付を見つけ、「これ欲しかったんだあ」とつぶやき、キッチュは新興宗教の勧誘の女の子につかまっていたのだった。
私も「声掛けられ体質」だけどキッチュもそうなのかもしれない。水島裕子もそうだという。こないだビブラストーンのライブにミズシマと行って、あと居酒屋で二人で飲んだんだけどさ、ナンパがかかるかかる。驚いた。それ言ったら「女優と居酒屋なんかで飲むな! もっとちゃんとしたとこへ連れてってあげなさい!」っておこられた、とほほ。でもミズシマったら、博多ラーメン一緒に食べに行ったら、「ご自由にお取り下さい」のアイスクリームを見つけて、みんなの分まで運んで来たりするような子なんだよ。それ見て前のテーブルの少年なんか、ラーメン鼻から出してたわよ。あら、女友だちの話になっちゃった。まっ、いいか。来月はちょうどヤマトの試合あとで、もっと男の子のこと書けるかもしれないから、待っててね。
「漫画家でジャズバンドやってるのはぼくと君だけ」
なんだそうだが、そうなのだろうか。
音楽コラムみたいになってきたな。
ラップの話に戻って、ラップはどうも、レコードをかける子とラッパーの、最低二人居れば出来る音楽みたい。あ、でも最近はDJの人もちゃんと音楽の人と考えられることが当たり前になってきたから、人数をうんぬんするのはズレてるかな。まあ、何が言いたいかというと、ライブの出来る音楽活動、イコールバンドのようなものをやるときに、いちばん大変なのってメンバー集めとその維持だったりするでしょ。でも、ラップなら最初は二人でも大丈夫。これは大きいかもしれない。その証拠に、
「現代のフォークって言った人もいるしね」(川勝正幸氏・談)
うーむ、そうだったのか。と今さら知ったくせに、チッタに連れてってくれたSFCの高さんから、ラップ界の注目の人、高木完さんまで紹介してもらう幸せ者な私であった。
やっぱり何かをいっしょけんめやってる男の子は可愛いな。何が好きで、それをどうしていきたいかを言えることなんて必要条件、つまり、当たり前。「まだ何をやりたいのか自分でよくわかってないしい」とか言う子とは、もう話したくないね。まだ何もやってないのに、やってもどうせつまんないし、みたいな言い方をする子もやだ。まあ最近そんなの周りにいないからいいけどね。
えーでは青年Kのリクエストに応えて、松尾・キッチュ・貴史のことを書こう。
こないだ、高田文夫さんのラジオのあるコーナーで、春風亭昇太さんがキッチュの家から生中継をするっていうんで、乱入してきたの。二人がたくさん物真似するんで、マイクを持つスタッフも笑いをこらえていたその模様を、最近持ち歩いているビクターのゲッツでビデオに撮ったの。そのあと、近くのお洒落なお蕎麦《そば》やさんで、昇太さんと二人でキッチュにお蕎麦をご馳走になった。帰りに駅まで送ってもらったら、道ですれ違った女の子たちが「あー」だの「えー」だの「サインして下さい、なーんて言ったりして」だの小さい、でも聞こえるくらいの声で言ってる。なんか大変だなあ、としみじみ思う私の横で、昇太さんはあの、名前知らないけどペダルこいでるとエンジンのかかる原付を見つけ、「これ欲しかったんだあ」とつぶやき、キッチュは新興宗教の勧誘の女の子につかまっていたのだった。
私も「声掛けられ体質」だけどキッチュもそうなのかもしれない。水島裕子もそうだという。こないだビブラストーンのライブにミズシマと行って、あと居酒屋で二人で飲んだんだけどさ、ナンパがかかるかかる。驚いた。それ言ったら「女優と居酒屋なんかで飲むな! もっとちゃんとしたとこへ連れてってあげなさい!」っておこられた、とほほ。でもミズシマったら、博多ラーメン一緒に食べに行ったら、「ご自由にお取り下さい」のアイスクリームを見つけて、みんなの分まで運んで来たりするような子なんだよ。それ見て前のテーブルの少年なんか、ラーメン鼻から出してたわよ。あら、女友だちの話になっちゃった。まっ、いいか。来月はちょうどヤマトの試合あとで、もっと男の子のこと書けるかもしれないから、待っててね。