よく、老人になると同じ話を何度もするようになるなどと言うが、だったら私は立派な老人である。特に、自分より若い人、または若くなくても、私との会話に対してただただ受け身の姿勢を取る人と話していると、つい以前と同じ話が出て来てしまう。
考えてみればこれは無理のないことだ。相手が若くてあまり自分の意見を言わなかったり、良い聞き手ではあっても話題を出してくれなかったりすれば、当たり障りのない狭い題材の中で話が進むしかないのである。ひどい時には、長めの電話の最中に同じ話を二度して、さすがに相手から指摘された。
しかし、その子は私のことを、何か「情報源」のように思っていて、「僕にとって面白い話をどんどんしてよ」と無言のプレッシャーをかけてくるようなところがあったのだ。
しかし、相手のことを本当に好きな時、うっかりでなく意識して同じ話をしてしまうこともある。そんな時は、「何度も聞いたよ」と言われるのもまた嬉しい。