返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 作品合集 » 正文

私の部屋に水がある理由47

时间: 2019-12-07    进入日语论坛
核心提示:え ら い 人テレビ局に呼ばれると、番組が終わったあとに「えらい人」が挨拶に来られることがある。ある局のお昼の番組に呼ばれ
(单词翻译:双击或拖选)
え ら い 人

テレビ局に呼ばれると、番組が終わったあとに「えらい人」が挨拶に来られることがある。
ある局のお昼の番組に呼ばれたときも、終わってから、何人もの人に次々と紹介された。私と、私のマネージャー(男)は頭を下げつつ名刺をどんどん出した。そして、最後に、
「たぶんこの人がいちばんえらい人なのだろうな」
という感じの人が、もうひとりのゲストの人に挨拶しているのを、横で待っていた。
もうひとりのゲストの人というのは、有名な映画評論家の人であった。仮にAさんとする。Aさんは、そのいちばんえらそうな人から名刺を受け取ると、すまなそうに、
「申し訳ありません、私、名刺を持たないものですから……」
と言っている。すると、
「いえいえ、Aさんはもう、お顔が名刺でいらっしゃいますから」
なるほどさすがにえらい人だけあって、うまいことを言うものだと思いつつ、こちらは名刺を出す準備をしていると、果たして、その人は、手裏剣を投げる前のような格好になっている私と私のマネージャーの前を、隠密剣士のように通り抜けて行っちゃったのだった。思わず顔を見合わせる私とマネージャー。なかなかこれはかっこ悪い場面である。なので、私はそれを怒りに昇華することにした。
「なによ、私のことを嫌いなんだったら、番組に呼ばなきゃいいじゃないよね。こっちが頼んで出してもらったわけじゃないやい」
もちろん口には出さないが、そんな子供っぽい罵倒語で頭をいっぱいにさせて、ひとりで地味に権威と闘ったりした。
そのあとお昼ごはんをいただくことになっていたので、なるべくその人と離れて座ってやる! などと思っていた。
しかし。
その人は、私のことを嫌っているわけではなかったのだ。食事の途中も、たまに、
「内田さんはご出身はどちらですかな」
とかなんとか、正確には忘れたが話しかけたりもしてくる。私は内心、
「変なの、挨拶もしなかったくせに。あんたなんかだれだか知らないぞっ」
と思ったが、あまりに屈託のないその様子に、つっかかるわけにもいかず、表面だけは楽しく食事を終えて帰ってきた。
きっとその人には悪気はなかったのだろう。もしかしたら、挨拶も、もう|したつもり《ヽヽヽヽヽ》になっていたのかもしれない。だいいち、そんなえらい人が、そんなにわかりやすい意地悪をするわけがない。しかし、うっかりした人である。
もうひとつ、同じようにテレビ局のえらい人の話。番組が終わってから、出演した人たちみんなと話していると、臨床心理士であるゲストの人が、
「内田さんの漫画に、一度しか関係してない女が、狂言自殺で男を呼びつける話がありますよね」
というので、
「ああ、そういう場面がありますね」
と答えた。
「私もあれと同じように、患者から迫られたことがありますが、あの話は非常に感じが出ている。あれは内田さんの体験なのですか」
またか、と思った。その場面は、『幻想の普通少女』という漫画で描いたのだが、ガス自殺すると電話してきた女の部屋にあわてて男が行くと、ガス管も開いているが窓も開いている、間抜けな自殺だったというシーンだ。それを体験ですかと、それも臨床心理士の人に聞かれると、複雑な気持ちだ。作品を褒《ほ》められているようでもあり、あなたは狂言自殺して男にだだをこねるような女に見えると言われているようでもあるからだ。しかし、作品を体験ですかと聞かれるのはしょっちゅうなので、
「あー、あれは私のことではないんですよう」
と答えていると、
「またまた!」
とちゃかすような声が聞こえた。その番組のいちばんえらい人が、私に向かって言っているのだった。あのなー……。
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%