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私の部屋に水がある理由51

时间: 2019-12-07    进入日语论坛
核心提示:社  長私が長崎でホステスやクラブ歌手をしていた頃、いちばん長く勤めたお店の社長は、大層気まえのいい人だった。どのくらい
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社  長

私が長崎でホステスやクラブ歌手をしていた頃、いちばん長く勤めたお店の社長は、大層気まえのいい人だった。
どのくらい気まえがいいかというと、まず、その社長はクラブを一軒、サパークラブを一軒、スナックを一軒持っていたのね。全部合わせると、女の子だけでも三、四十人はいたんだけど、海外旅行なんか行くと全員におみやげ買ってきてくれるの。社長が来るとシャネルやニナリッチやディオールの香水がごろごろ入ってる「おみやげ袋」が回ってきて、その中からみんな好きなのを一本ずつもらうの。
さらに年末には全員にドレス代をくれたし、給料なんて、|はした《ヽヽヽ》が三千円とか四千円なのに一万円に繰り上げて計算してしまうという、信じられない丼勘定。だから、もらった給料袋には、いつも一万円札しか入ってないの。女の子たちはみんな、毎月給料のほかに小遣いを少しずつもらっているような状態だったわけです。
しかし、そんな社長だからこそ最高にわがままで、店に来るとかわいくて若いコをみんなはべらせちゃう。若々しい人だし、新人の女の子なんて、まさか自分の店の社長だとは思ってなかったりしてね。当然自分とこの女の子とどんどん恋愛もしてて、とにかく元気な人だったの。
ある雨の晩、私が店の女の子数人と一緒に社長と飲みに行ったら、帰り道たまたま彼と二人になった。そこから私の家は歩いてすぐだったので、私は社長に傘を差しかけ、タクシーが拾えるとこまで送りましょうと言って歩き出したの。そしたら社長は急にいたずら心が起きたのか、いきなり傘で手のふさがっている私の胸元に手を入れて、あたくしの乳房をわしづかみにするじゃあありませんか。
「いやん、社長ったら」
「へへへ。減るもんじゃなし」
こんな時代錯誤なセリフをはいても、どことなく憎めない人だったのだが、とにかく彼の手をふり払い、ちょうど来たタクシーをとめた。社長はそのままへへへと笑いながら帰っていったが、若い私の怒りはなかなかおさまらなかったのだった。
翌日私は、先輩のホステスに昨夜の社長の行動を口をとんがらして訴えた。
「社長もしょうがないわねえ」
「いきなりですよおブツブツ」
などといって鬱憤を晴らしていたら、その話が人づてに社長のところまで行ってしまった。それも、女の子ならまだしも、男子従業員が、
「社長、聞きましたよ、ゆうべのこと。社長もやりますねえ」
とかなんとか言っちゃったらしい。そして社長はかんかんに怒って私の勤めるサパーの方に電話してきた。
「おまえはなんでそんなことを言うんだ」
それは、私にはとても勝手な言い分に思えた。思わず売り言葉に買い言葉で、
「人に言われて困るようなことなら、しなきゃいいじゃないですか」
「そんなこと言うんならおまえは店をやめなさい」
「やめてやらあ。ガチャン」
となってしまった。この状況からも、私がホステスとしてどんなに無能だったかよくわかる。プロのホステスならこんなとき、
「あら、あたし知りませんわ。だれか見てたんじゃないんですか、社長顔売れてるから」
とかなんとか言うものよね、トホホ。なにしろ長崎ではそこより条件のいい店はなかったんだもの。
しかし結局は、社長の方も大人げないと、店長が間に入って社長をなだめてくれ、私はやめずに済んだ。私は最後まで社長に謝らなかったが、時間がたつにつれ、自然と社長と仲直りした。社長も最初は私のことを生意気な小娘と嫌っていたが、私がクラブ歌手でありながら『スター誕生!』の決戦大会まで行ったときには喜んで応援してくれた。
今考えると、店の女はみんな俺のもの、という考えの人だったようだが、それって、古き良き男の意気地とかいうものにつながっていたのかもしれない。その頃の私がそういう部分を理解できなかったのが気の毒なくらいだ。だって、そういうのにしびれるタイプの女がホステスやんなきゃ、意味ないものね。
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