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私の部屋に水がある理由67

时间: 2019-12-07    进入日语论坛
核心提示:最近考えたこと半年間担当していた、FMの番組を降りた。この番組は、一応情報番組ということになっていたが、どういうわけか途
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最近考えたこと

半年間担当していた、FMの番組を降りた。この番組は、一応情報番組ということになっていたが、どういうわけか途中からその「情報」までも私が集めることになってしまい、それがとても苦痛だった。私は「今評判のおしゃれなお店」だの「話題のビデオ」だのにあんまり興味がないのだ。読み原稿にしてくれれば何でも読みますからとも言ってみたが、それでは内田さんの持ち味が出ませんという。私のほうも一度、
「Party Season に Very Good な Information をご紹介!……」
なんていう読み原稿を渡されてから(もちろん読まなかった)これは自分でなんとかするしかないとあきらめ、飼っている魚の話をしたりしてごまかしていたが、一体こんなものが「情報」に成り得ているのかと、最後まで不安だった。
番組のなかでかける曲を、毎週十七曲余り選ぶのも大変といえば大変だったが、それは自分でやると言い出したことであり、
「情報番組における情報っていったい何なの」
という迷いと、
「何でこの人たちはこんな安いギャラで私に何もかもやらせるの。ええい、そんなやりかたをするんだったら私がしゃべりたいと思ったことは全部情報だと思うしかないじゃないの」
という居直りに毎週挟まれてしゃべることに比べたら、すっごく楽しい作業だった。楽しいし、逆に、しゃべるのにあれだけ苦しんでいるときに、他人の選曲で嫌いな曲なんかがかかったりする状態だったらと思うとぞっとする。好きな音楽に囲まれていたからこそ半年も続けられたのだ。
ところで彼らが欲していた情報とは、いったいなんだったのだろう。仕事が終わった今も、よくわからないのである。地震情報、音楽情報などと、頭になにがしか付いていれば私にだってわかる。何でも良いのです、情報ならばといわれてしまうのである。つまり、何でも良いからとにかく「教えろ」なのである。
去年の終わり頃、私の漫画の単行本『幻想の普通少女2』のために、岸田秀さんと電話で対談をした際、私は、「情報」について岸田さんにいろいろと質問をしてみた。何故そんなに情報が沢山欲しいのでしょうか。リクルートにしてもそうですが、本来は企業が金を払って出しているはずの求人広告であったり、誰かが提供してくれたりしたものであったりしたはずなのに、それが沢山集まって「情報の場」と呼ばれたときから、何故その「情報の場」は権力を持ったりしてしまうのでしょうか。皆、リクルートの株で人が貰ったお金ばかりを責めていますが、何故「情報の場」がそんなに儲かっちゃったのだろうということについては疑問を持たないのでしょうか。何でまた誰もがそんなに「情報」という言葉にたいして「奥さん、安いよ!」に飛びつく退屈な専業主婦のように無防備になっちゃったんでしょう。
それに対する岸田さんの答えは、大変面白く素晴らしいものだったのだが、詳しくは『幻想の普通少女2』を御覧ください。
どうもね、まあとにかく、情報ってものがむやみやたらと欲しい人が結構居るらしいのです。岸田さんに教わってからまたいろいろ考えたら、私の会社にも、どうもそれだけのためにやって来た人たちが、居た。平たく言うと、私の会社がどんなところか、覗くためだけに入り込んで来るのだった。こないだも一人いたのだが、その男はその前まで、私よりはるかに忙しいはずの或る漫画家のアシスタントをしていた人間でありながら、ただのバイトにしてくれと言う。漫画のやれる人間に、わざわざ別の仕事で来られるのも気分が悪いし、バイトの人手なら足りているというと、じゃあアシスタントでもいい、とにかくなんでもやるから使ってくれという。そんで、二晩やったら次の日から来ないのよね。そのまた前のも男だった。そいつなんて、私と二人で夜中に仕事してたとき(別の部屋には人が居て、あとで皆で一緒に食事したりもしたんだけど)、
「普段どんな雑誌読んでんの?」
なんて聞いたら、
「スケベな雑誌……」
なんて言うの。
「スケベなったって、書名があるでしょう。たとえば何て雑誌」
とこっちは大まじめに聞いてんのに、
「いえ、スケベなら何でも良いんです。僕、スケベなんです、ほんとです」
そんなこと初対面の人に言われたって……ねえ……。第一、私はあんたに給料を払う人間だってことを、忘れちゃいませんかっての。なに期待して来てんだよ、全く。こういう奴等は、興味本位だけで私の会社にやって来たのも確かだが、どうやら、私の漫画を読んだだけで、私のことを何もかも知っている気になり、さらにもう友達にでもなったような気でいるらしいのだ。そういう読者は多いし、別にそれ自体に驚きはしないが、それだったら私から給料までもらおうなんてよくも思うものだ。人を募るたび、「応募の動機」のところに、たぶん自分では良いことだとでも思っているのだろうが、「貴社に興味をもったから」と書いてくるのが多くていやになる。こないだなんて「興味本位で来ました」と書いてる奴が居た。これで給料まで貰おうって思ってるんだから、興味=それに関する情報が欲しい、って言い分を、若者たちがどれほど当然としているかがわかるというものである。
もう一つ驚くのは、自分の行きたい業界の情報だけを集めては、もう何かしたつもりになっている人間が多いことだ。そういう人間ほど、その業界に入るための堅実な方法を教えようとすると、それにアレルギーを起こしてしまう。あまりにも、安易で一足飛びにうまく行くことだけを考えていたため、身体が受け付けないようである。
情報を沢山集めれば、知らない世界まで覗いた気にはなれるが、けしてその世界に本当に入ったわけではない。自分と顔のそっくりな王子を見つけて、着ているものさえ取り替えればそのまま簡単に王子になれるものだと思っている、情報乞食な若者たち。この「情報社会の王子と乞食症候群」(なんて勝手に名前をつけてみたんだけど)については、もっといろいろ考えてみたいと思っている。
 
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