私は、年齢を言わないことにしている。これは『内田春菊』という名の名付け親、秋山道男氏に言われて始めたこと。最初は不思議で「どうして言わない方がいいの?」と聞き返した。すると秋山氏は「ま、まあいいからさ、そういうことにしてみなさい」とだけ答えられたのだった。
それから五年、本当にいろんな経験をした。年齢を言っていたら経験できなかっただろうと思うと本当に面白い。今では秋山氏にとても感謝している。
まず、インタビューでは、年齢を言わないと必ず『年齢不詳』の四文字を入れられる。最初は気にしなかったが、どんな人も絶対にこの言葉を取り外そうとしないのを見て、なるほどそういうものなのかと思うようになった。中には、自分で勝手に計算して書いてしまう人もいる。テレビ番組では、テロップで二度も出された。いずれも全部まちがっているのが面白かったが、それよりすごいのが、私をおどす人がいるという事実だ。「調べればわかるんだけどねえ」「住民票を取りゃあわかるんですよ」。「調べれば?」と私は知らん顔をしているが、なんでそうしてまで知りたいんだろうねえ。私はもともと人の年齢を知りたがるほうではないし、当然こちらから相手の年齢だけを聞くことはないのだが、少し親しくなったころに「ねえ、本当はいくつなの?」と聞いてくる人も多い。この質問も決まって「本当はいくつ」なのだが、うその年齢を言っているわけでもないのに「本当は」とつくところが面白い。
以前テレビに、あるアメリカの男性歌手が出ていて、聞かれても年齢を言わなかった。それについてサックス奏者のマルタさんが「アメリカでは男性でも年齢より仕事を見てほしいという考えですからね」と説明したら、隣のアイドル歌手が「ふーん、アメリカってずるいんですねっ」と真顔で言っていた。あーわー。