私は、仕事場にアマゾンの熱帯魚を飼っている。九十センチ水槽三つを含めた十本あまりの水槽が、ドアを開けてすぐの所にかたまっていて、中には、ドジョウや、緑と赤の斑点のきれいなアフリカのカエルなんかもいる。私にとってはみなとてもかわいいのだが、気色悪いと思う人もいるらしい。特にカエルが苦手な人はけっこういて、面接に来た女の子が、「カエルがいるなら、ちょっと私、考えさせてもらってもいいでしょうか」と帰って行ったこともある。
岩と見まごうでかいカエルならわかる気もするが、まだ私の手のひらより小さいのに何がそんなに怖いのだろう。私の知り合いにはカエルの話を聞くのもいやだというくらいカエルを嫌っている大の男なんかもいて、不思議でしょうがない。
カエルというと、吸盤でどっかへくっついていて長い舌でシャーと虫を食べるもののように思うが、吸盤のないタイプもいる。私の仕事場にいるのはその吸盤のないタイプで、よって高い所には上って来ない。餌《えさ》をあげようとガラスの蓋《ふた》を持ち上げたらぺたっと手にとまったなんてことは、だから、けしてない。すごく世話のしやすいカエルなのだ。
生きて飛び回る虫なんかをあげなければいけないタイプなんて、手がかかり過ぎてとても飼えたもんじゃない。私もなんども挑戦しては失敗している。一度でいいから吸盤付き虫食いカエルの団体をそだてて、「東京吸盤ボーイズ」とあだなをつけてあげたいわ。
それはともかく、私の会社の従業員たちは、そのほとんどが女の子なのにもかかわらず、魚やカエルの世話をとてもよくしてくれている。
カエルには週に一回生きた金魚を飲ましてあげるし、なまずには糸ミミズを毎日あげる。弱っていた魚が死んだ時など担当の子はしょんぼりしている。帰る前にくし切りにしたリンゴをモモンガのかごに入れている彼女たちの後ろ姿なんて、頭をなでてあげたくなるほどかわいい。驚くだろうからやんないけどね。