先日、あるテレビ番組に出たら、茨城の地卵百八十五個をおみやげにもらった。手に取るとひとつひとついろんな形をしていて、表面がざらざらの、とても新鮮な卵だ。冷蔵庫の中で古くしてしまうのはかわいそうだし、百八十五個はちょっと多い。幸い翌日が、私のバンド、アベックスのライブだったので、バンドメンバーやライブハウスの人や、ライブに来てくれた人と食べようっと、と楽器車に積んで持ってった。
結果は大好評。みんなおいしい、珍しいと喜んでくれた。お客には、私がサインペンで絵を描いた卵を帰りに配った。ライブの途中、「あとでおいしい卵あげるから持ってってね。さっき生で飲んだけどおいしかったよー、おー、イキモノひとつ飲んだぜって感じで」と私が言ったら、みんな「生で飲んだけど」のところで「えーっ」と言って笑ってたけど、東京ではあまり卵を生で飲んだりはしないのだろうか。新鮮じゃないから? まー、東京もんはかわいそうねえ、なんて勝手に思っていたが、あとになって、あれ? もしかして私が女だからかな? とふと思った。田舎ではロッキーのように生卵を飲んでいた私がある男性編集者にそれを言うと「そうですね、あんまり女のひとが卵飲むって聞かないかもしれませんね、僕は別にいいと思いますけど」ということであった。うーむそうだったのか、なるほどと考えている内に、ある事を思い出した。
焼き肉屋で豚足をかじっていたら、そこにいた男の中の一人から「そんなの食べるなんて、ちょっとショックだ」と言われたことがあるのだ。なんで? おいしいのに。それもそんとき、私の奢《おご》りだったのよう、なんかしつれえじゃない? それ。こういう奴とは仲良くなれないなあ、と心から思っちゃったわよ。だれかをがっかりさせないためにあたしは生きてんじゃないし、自分で働いたお金で何食べようと勝手じゃないよね。