この欄の原稿は、ワープロで打ってから、それにファクシミリアダプターというキカイをくっつけて電話線からピーと送っている。キカイにはけっして強いほうじゃないのだが、バンドの新聞やファンクラブの新聞をワープロでつくっているため、会社のワープロは、全部で五台になった。
「ワープロについてインタビューしたいんですけど」と電話があったのは数日前。そういう依頼は初めてだったが、バンドの新聞からつくった単行本「今月の困ったちゃん」が完成したばかりだし、たいして気にもとめずに受けた。
ところがインタビュアーは連絡もせずに三十分遅刻。「仕事は全部ワープロでやっているわけですか」。そんなこといわれても、私、漫画家だし。二つのワープロ新聞を持ってきて見せると「この新聞は……」と言ったきり、私がつづきを言ってくれるのを待っている。見ればわかるだろ。だんだん「こいつ、困ったちゃんだわ」とわかってきたが、仕方がないので少ししゃべってみた。しかし彼は「もうワープロなしではいられません」というラブコールを期待していたらしく、機嫌が悪い。
「そりゃ確かに便利だけど、手で書いたもののうれしさってあるでしょ。ほら、この漫画のせりふ、全部手がき文字にしてみたの、これもいいもんでしょ」と本を開いて見せると、「じゃあ最近は漫画のせりふは全部書いてるんですか」。「あんた、あたしの漫画、読んだことないの?」「はあ」「どうも話が変なんだけど、なんであたしんとこにワープロの取材に来たわけ?」「エッセイも書いてるから」「じゃあどういう所で、これはワープロ使ってるなと思ったわけ? 何読んだの?」「……まだ読んでません」「そういう行きさえすれば何とかなるって根性、やめた方がいいよ。出直してらっしゃい」
彼は謝りもせずに帰った。たまにこうして私は無礼者を追い返す。やりたかないんだけどね。