料理
だいぶ前の話だが、あるテレビ番組の人物紹介コーナーに出たとき、ディレクターが「内田さんもたまにはお料理なさるんでしょう、お料理してるところも撮りましょう」と何度も言うので、「いえ、ほとんどしません。わざわざするのは不自然だから嫌です」とがんばったことがある。この人のように、取材のとき「意外に女らしい一面」ものを安易に使いたがる人っているよね。そしてそのナンバーワンは、やっぱり料理みたい。
「内田さんって料理とかすんの?」と初対面で聞いてくる人もいた。「しないですね」と答えると、「ああ、やっぱりねえ」と勝ち誇ったようににこにこしていた。何がそんなにうれしいのだろう、変わった人だ。その人は「料理は女の仕事。働いてても料理しなきゃ女失格だよ」とか思っているんだろうか。まあどう思おうが個人の自由だけど、私は、料理のへたな男って嫌いだわ。それってつまり、食べ物に対してセンスがないってことだし、そんな男は、人がつくった料理に対しても無神経。そんなのとつきあっててどこが楽しいの? 私の好きな男や、敬愛するオトナの男性たちは、みんな料理が上手なのさ。ある人は、テレビ局でお弁当を食べている私に手製のふりかけをすすめてくれ、ある人は、私が漫画を描いてて忙しいと、アシスタントのぶんまで夜食をつくってくれる。そういう人たちとは外で食事をしても楽しい。
ところで家庭科の授業って、粉ふき芋転がしたり桜でんぶつくったりして楽しかったな。特に小学校の家庭科がシンプルで好き。しかしひとつだけ今でも気になることがある。私の小学校で使っていた家庭科の教科書の「栄養素と食物」のページには、「たんぱく質は大豆、卵などにふくまれている」「ビタミンはやさい類」などと並んで「鉄分」の欄には「くぎ」とだけ書いてあったのだ。いったいくぎをどうしろと言うのでしょうか。