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旅路44

时间: 2019-12-29    进入日语论坛
核心提示:   5千枝の手術は経過もよく、回復も早かった。病院のほうでも、もはや夜の付き添いは必要がないというので、有里は塩谷の家
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千枝の手術は経過もよく、回復も早かった。
病院のほうでも、もはや夜の付き添いは必要がないというので、有里は塩谷の家と札幌とを往復した。
夫と三千代との噂《うわさ》は相変らず有里の心の奥深いところに影を落していたが、それよりも、差し当って有里の頭を悩ましていることがあった。
室伏家の経済である。
もともと、有里が嫁に来た当時から、室伏の家には殆《ほと》んど余分の金はなかった。
はる子が倹《つま》しくして僅《わず》かずつ貯えたものは、雄一郎の縁談で尾鷲から中里一家を迎えた時だの、雄一郎の結婚などで、あらかた無くなっていたし、有里が実家《さと》の兄から貰《もら》って来た金も、結婚後のさまざまなもの入りや、捨て児の奈津子の一年間の養育費、病気をしたときの費用などで消えていた。
車掌として雄一郎が働いて得る月給は家族三人の生活に、まあまあの額だったし、売店からもらう千枝の僅かな給料は、千枝の身の回りの品を買ったり、残りは嫁入り仕度に貯金しているが、それも、たかの知れた金額であった。
一家の主婦となって、有里は初めて自分が金を貯《た》めるのが上手でないということを知った。
やりくりは決して下手ではないのだが、どういうわけか金が残らない。自分に贅沢《ぜいたく》をするわけではなかったが、千枝のもの夫のものに関して、つい、予算よりも良いものを買ってしまうのである。
それは、一つには有里の育ちのせいでもあった。
家が傾きかけているとはいっても、尾鷲一番の山持ちの家に生れて、幼い時から上等のものを見馴《みな》れて育っている。
いいものをみる眼が自然にこえていて、着物一枚買うのでも、つい、安かろう悪かろうというのは敬遠してしまう。その結果、予定より出費がふえても、貧乏のどん底を知らずに育った楽天性が、つい家計簿の帖尻《ちようじり》を甘くしてしまうのだった。
その日、朝、眼をさましたときから葡萄《ぶどう》が食べたいと千枝が言うので、有里は早速札幌の町へ買いに出掛けた。
ちょうど家計のことを気にしていた時だっただけに、果物屋の店先で中等と上等とどちらにするか散々迷った揚句、結局、上等の方を買ってしまった。
金を払って歩きだそうとしたとき、道の向う側から、笑いながらこちらを見ている公一に気がついた。
「あら、公一さん……」
有里の方から駆け寄った。
「この間は本当にありがとう、お礼を言おうと思っているうちに、いつの間にか居なくなってしまって……ごめんなさいね、ちっとも知らなかったの……」
「いや、ちょうど御主人も来られたし、なまじっか声をかけるのも悪いと思って……それに寮のほうにも門限があったさかい……」
「まあ、そうだったの……それで間に合ったの、門限に……」
二度目なので、有里も公一もずっと打ちとけていた。
こうして逢って話していると、十何年という歳月をとび越えて、たちまち子供のころの有里ちゃん、公一さんの仲になった。
「ところ天でも食べへんか?」
公一から誘った。
「そうやネ……」
久しぶりにお国言葉が出た。
公一は近くのよしず張りの氷屋へ有里を案内した。店先の水槽《すいそう》にところ天が入れてあり、小さな噴水が涼しげに飛沫《しぶき》をあげていた。
「なつかしいわ、尾鷲の浜のところに、夏になると、ところ天屋が出来たでしょう。そっと食べに行っては見つかって叱《しか》られたもんやわ……」
「そうやったネ……僕もようあの頃のこと思い出すわ、君も結構おてんばやったもんな」
「フフフ……」
有里は首をすくめた。
尾鷲と同じガラスの器でところ天が運ばれて来た。
「どうぞ……」
有里に誘われ、公一も箸《はし》を割った。
「妹さん、その後どうです」
「おかげさまで……とっても順調でね、もう二、三日で退院出来るそうやってお医者さんもおっしゃって下さってるんよ」
「ほう、そら良かった……どう、もう一つ、今度は氷を食べへんか、僕がおごるよ」
「でも……」
「だいじょうぶ、このくらいおごったって破産はしないから……」
公一は冗談を言って有里を笑わせながら、奥へ氷あずきを二つ註文《ちゆうもん》した。
「それにしても、ほんとに有里さん昔とちっとも変っていないなア……奥さんだなんて嘘《うそ》みたいだ……」
「奥さんは失格なの、私……」
「どうして?」
「だって……」
有里は苦笑した。
「ものすごくやりくり下手なの……一生懸命家計簿つけてやってるんだけど、どうにも下手で困ってしまうわ」
「そりゃア、有里さんみたいなお嬢さんに家計簿つけさせるほうが可笑《おか》しいよ、信用できる女中さんを探すんだね」
「女中さん……?」
「うん、僕は当然そうしてると思っていた」
「女中さんなんて要らないもの……夫婦二人っきりで……」
「失礼だけど……有里さん、炊事《すいじ》も洗濯もみんな一人でやってるの?」
「ええ……当り前やわ」
「そやかて、中里の嬢《とう》はんともあろう人が……」
「あたし、そんなんじゃないもの」
「しかし……そりゃあ僕だって、中里さんのお宅が昔のような状態でないことは聞いている……それにしたって……」
公一は有里に抗議でもするような調子で言った。
「尾鷲の中里さんといえば、大阪にだって聞えた名家でしょう。家が破産してしもうたのならともかく、そうでもないのに……たかが北海道の鉄道員の嫁さんになったと聞いて、正直のところ、ほんまに吃驚《びつくり》したんや……」
「公一さん」
有里は軽く公一を睨《にら》んだ。
「ずいぶん失礼やないの……」
「え……?」
公一が気がつかぬらしいので、有里は笑いだした。
「だって、それじゃ、まるで私が不仕合せな結婚をしたようじゃないの、たかが北海道の鉄道員だなんて……」
「いや……ごめん……」
公一が頭をかいた。
「そんなつもりじゃないけど……とにかく、尾鷲へ帰って、君が北海道へ嫁入りしたと聞いて驚いたんだよ……まさか……そんなに早く嫁さんに行くとは思っていなかったからネ……」
ふっと眼をそらした。しかし、すぐ、
「僕は……」
強い視線で有里をみつめた。
公一の眼の奥に、何か思いつめた色のあるのを知って、有里は急に不安になった。
「公一さん……」
先に有里の方から口をはさんだ。
「実は……このあいだからお願いしようと思っていたことなんだけど……」
「なんだい?」
人のいい公一は、すぐ身をのりだした。
「公一さん、どこか質屋さんを知らないかしら……」
「えッ、質屋……」
あっけにとられて、有里を見た。
「知らないでしょうね、質屋さんなんて……」
「いや、知ってますよ」
公一はすかさず言った。
「でも、それがどうしたんだい……?」
「行ったことはないんでしょう」
「ありますよ」
公一は、むしろ得意そうに胸を張った。
「嘘……」
「君に嘘なんかつかないよ……男ってのは、時々つまらんことに金をつかうもんやからネ……」
「だったら、私をそこへ連れてってもらえないかしら……」
「君を……質屋へ……?」
公一が眼をむいた。
「質屋へ何しに行くんや」
「もちろん、お金を借りに……」
「まさか……」
「いいえ、本気です……でも、何も聞かんで欲しいの……」
「フーン……」
公一はむずかしい顔をして腕を組んだ。
「だけど、いったい何を質入れする気なんです」
「ちょっと待っててくれます……?」
有里が腰を浮かした。
「病院に置いてあるから、すぐ取って来るけど……」
「しようがないなあ……」
公一は仕方がないといった表情をした。
「駄目だといったって質屋へ行くにきまってるんだ……とにかく持ってらっしゃい、見てあげるから……」
「ありがとう……じゃ、すぐ戻って来るから、ちょっと待ってて下さいね」
有里は軽い身のこなしで、小走りに外へ出て行った。
(本当に質屋へ行かねばならぬほど困っているのだろうか……)
公一には有里の言うことがまるで信じられなかった。
彼女の表情のどこにも、生活の疲労など見あたらない。それどころか、以前よりもっと生き生きとして楽しそうだった。
(女って不思議な生物だな……)
公一は首をかしげた。
金ならいくらでもあり、大勢の使用人に囲まれてなに不自由なく暮しているくせに、顔色も悪く、始終|愚痴《ぐち》ばかり言っている女を公一は何人も知っている。
(結局、女を美しくするものは、金でも暇でもないっていうことかな……)
彼なりの結論を出したころ、有里が小さな風呂敷包《ふろしきづつみ》を胸にかかえて帰って来た。
「これなんだけど……」
テーブルにそっと置いた。
「どれどれ……」
重みはそれほどでもない。
開けると、厚みはそれほどでない美しい布張りの箱が出て来た。
公一は、箱の蓋《ふた》を取って、
「こりゃあ……」
眼を瞠《みは》った。
本|鼈甲《べつこう》で作られた、豪華な花嫁の簪《かんざし》である。
「なくなった父が、私の嫁入り仕度に注文して作らせておいた品なんです……上等の鼈甲で、細工も悪いものではないと聞いてましたけど……こういうものでは駄目かしら……」
「いや……」
公一は首を振った。
「しかし……こんな大事なものを……」
「いいんです、今の私には必要のないものなんだから……」
「それにしても……」
「どうしてもお金がいるんです……これで五十円くらい借りられないかしら、まるでそういうことにはうといんだけど」
「そうだなあ……」
公一は、いくら安く見積っても三百円は下るまいと思った。
「そんなに貸してくれないかしら……」
「有里さん……」
公一は有里の無知なのに呆きれた。
「いいかい、有里さん……質屋というのは約束の期限の日までに、借りた金に利息をつけて返さないと、品物が戻って来ないんだよ、つまり質流れしてしまうんだ。五十円、返すあてがあるのかい……」
「…………」
「もし返せなかったら、あとではとりかえしがつかないよ」
「分ってます……それでもいいんです」
「有里さん……」
「お願いします、質屋さんへ連れてって……」
有里の眼は真剣だった。
「でないと、困るんです……」
「…………」
「公一さん……」
有里が重ねて言った。
「お願い……ネ……」
公一はちょっと考え込む様子だったが、やがて顔を上げると有里を見た。
「金……今日要るんですか?」
「いいえ……明後日ごろまでだったら間に合うんです」
「よし、分りました、明後日の何時に札幌へ来られますか」
「午後一時頃だったら……」
「午後一時ね……だったら午後一時半に此所《ここ》へ来てください。僕がこれ預かっといて、質屋から金を借り出して来ておいてあげます」
「公一さん……」
「女が行くより男が行ったほうが、交渉もきっとしやすいでしょう……まア、委せておおきなさい」
「でも……」
「僕が信用できない……」
「いいえ、とんでもない……ただ、あなたに質屋さんに行ってもらうのが申訳なくて……」
「そんな心配は無用ですよ」
公一は笑った。
彼は髯《ひげ》も眉毛《まゆげ》も人一倍濃いほうである。体も大きい。そのため普段はなんとなく恐しそうな印象を与えるのだが、一度笑うと彼のやさしい気持がむき出しになった。
「僕なんか月に二、三度、へたをすると一週に二度くらいくぐりなれてる暖簾《のれん》ですからね……」
「すみません、それじゃお願いします……」
「じゃ、明後日の一時半ね……」
「ええ……」
公一が先に立ち上った。
勘定を払って外に出ると、有里が待っていた。
「じゃ、これで……病院で義妹が待ってますから……」
「気をつけてね、いもうとさんによろしく……」
「ありがとう……じゃ、お願いします」
「ああ……」
二人は手を振って右と左へ別れた。
有里の姿が曲り角へ消えると、公一はあらためて美しい鼈甲《べつこう》の簪《かんざし》を眺めた。
(こんな大事なものを手離さなければならないなんて……)
公一は有里の結婚後の生活を思い、暗い気持になった。
(俺だったら、有里さんにこんなみじめな真似はさせないのに……)
公一はあらためて、長い間一言も他人に漏《も》らさなかった、有里にたいする自分の一方的な愛について考えた。
(有里さん……たとえ君がどんな悪い状態や境遇になったとしても、俺の気持は変らないよ……)
彼は急に怒ったような顔つきになって、肩をゆすって歩きだした。
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