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旅路87

时间: 2019-12-30    进入日语论坛
核心提示:    12岡本良平は隴海《ろうかい》線にいた。隴海線というのは、徐州《じよしゆう》から開封《かいほう》間二百七十六・八|
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    12

岡本良平は隴海《ろうかい》線にいた。
隴海線というのは、徐州《じよしゆう》から開封《かいほう》間二百七十六・八|粁《キロ》のことである。
この隴海線の周辺には、同じ時期に青村鉄道聯隊長が四個大隊を率いて復旧にあたった津浦線や、新しく京漢線の新郷から開封までを建設した新開線などの鉄道がひしめいて、それぞれ軍事輸送に全力をあげていた。
良平の所属した隴海線の周辺は、いわゆる旧黄河のあたりで、華北にして華北にあらず、華中にして華中にあらずといわれた北支と中支の接する地点であり、隴海線の北と南では、同じ中国人同志でも、考え方も違うし通貨も異るという複雑な地帯であった。
もっともこの頃《ころ》は、徐州戦も終り、民情も落着きを取りもどしていたが、暑さ寒さの極端に激しい所で、風土病に悩まされる者も多く、又、物資不足に苦労していた。
このため、良平は日夜をわかたず機関車を動かし続けていたのである、機関車に乗っていない時は、食事のときか睡《ねむ》っているときくらいのもので、小樽の家族を一日たりとも忘れたことはなかったが、普段筆不精だったため、つい億劫《おつくう》で手紙を書かずに居たのだった。
千枝は良平の手紙が着いて間もなく、八番目の子を産んだ。父親によく似た女の子で、名前は良平の指示どおり華子とつけた。千枝は産後の肥立ちもよく、三十三日目のお宮参りの日の、華子を抱いた母親のまわりを七人の子供たちがとり囲んでいるにぎやかな写真が、やがて大陸の良平の許へ届けられた。
この頃の日本の鉄道員たちの活躍はめざましく、世界的なレコードといわれる淮河《わいが》の鉄橋も国鉄派遣の足音部隊の苦心の結果完成し、華中鉄道と華北交通とが握手し、上海《シヤンハイ》・北京《ペキン》の連絡に成功していた。
こうしたニュースは報道機関を通じて、直ちに日本内地にも報じられた。
同じ鉄道員たちの活躍を聞くたびに、雄一郎は身内にゾクゾクするような喜びと、誇らしさとを感じた。
(戦地に居る仲間たちに負けんように頑張らなきゃ……)
しかし、内地の鉄道もこのところ、年々増加する軍需物資の輸送を抱えて多忙をきわめていた。
町の男たちの服装も、背広が消え、次第にカーキ色の国民服へ変っていった。女たちはパーマネントが電力節約と贅沢《ぜいたく》禁止のためかけにくくなり、振袖《ふりそで》は半ば強制的に短く切らされた。
敵機の空襲に備え、防空演習がかなり頻繁に行なわれるようになった。
平和な時代にくらべると、なにかせかせかと追いたてられるように一年一年が過ぎて行くようだった。
南部斉五郎の妻、節子が千葉のはる子の家に遊びに来ていて、脳溢血《のういつけつ》で倒れたのもこのころのことだった。さいわい軽症で、命には別状なく、後遺症も残らないだろうとのことだったが、しばらくは絶対安静を医者から命じられたので、そのままはる子の家に厄介になることになった。
三千代の消息は依然不明だったが、節子の発病と前後して、北海道の雄一郎は、和田四郎と名乗る三千代とはかなり深い関係のあるらしい画家に出逢《であ》った。
その晩、宿直だった雄一郎は、かなり酒に酔ったあげく気の荒いやん衆と喧嘩《けんか》をし、袋叩《ふくろだた》きになった男を介抱した。この男が和田で、彼の所持品の中にあったスケッチブックには、明らかに三千代とわかる女の肖像画がいくつも描かれていた。
和田が正気を取りもどした時、雄一郎は思いきって訊《き》いてみた。
「もしお差支《さしつか》えなかったら、この画の婦人とどこでお逢いになったか教えてくれませんか?」
「逢ったのは、東山《ひがしやま》温泉ですよ」
どことなくニヒルな感じの漂うその男は、雄一郎の質問に冷笑を浮べながら答えた。
「東山……?」
「会津若松《あいづわかまつ》のすぐ近くですよ」
「そこで、この人は何をしていました?」
「旅館の女中ですよ……金楽とかいう……」
雄一郎はいそいでその旅館の名前をメモした。
「メモしたって無駄ですよ、この人、もうそこには居らんですよ」
「何処《どこ》か他所《よそ》へ移ったのですか」
それには答えず、和田はジロリと雄一郎を下から見上げた。
「そういえば、あんた、釧路《くしろ》から川湯《かわゆ》へ行く途中の駅に四、五年前だったか勤務していたことあるでしょう……」
「釧路から川湯というと……釧網《せんもう》線ですか」
「そう……」
「あります、美留和《びるわ》駅に……しかし、なぜ……」
「あの駅を通ったんですよ、一緒に……」
「一緒に?」
「そう……ずっと一緒に旅行してたんです、その頃《ころ》……いや、僕が北海道へ行くといったらついて来たのかな……妙な女だった、どこか投げやりで、捨て身になっているくせに、心の底まで泥に染まりきれないものを持っていた……」
「じゃ、今でも一緒に……?」
「残念ながら、別れましたよ」
「別れたんですか……」
雄一郎はがっかりした。ようやく三千代の手懸りがつかめたと思ったとたん、頼みの綱はプッツリと切れた。
「どこで別れたんです……」
「千葉でしたよ、白浜《しらはま》というところでした……」
自嘲《じちよう》するように唇をゆがめた。
「別れなけりゃ良かったんですよ、こうやって、何年も野良犬みたいにあの女のあとを追っかけ回すくらいなら……あの時、あの女の前に両手をついてでも別れなけりゃよかったんだ……」
話を聞いているうちに、雄一郎はハッとした。三千代が話していた、関根の妻が海岸で倒れているのを発見した彼女の連れというのはこの男に違いない。三千代はあの時すでに一人だったから、この男とすでに別れた後だったのだろう。
「ずっと探しているんですか?」
「もう何年になりますかね、日本国中歩き回っているんですよ、北海道だって今度で三度目です……馬鹿《ばか》な男ですよ、この非常時に女のあとを追いまわしているなんて、滑稽《こつけい》だな、全く……」
男は乾いた笑い声をたてた。
「それで、なにも手がかりはありませんか」
「無いですな、今のところ……」
「そうですか……」
二人の間にしばらく沈黙が続いたが、そのうち、不意に男が雄一郎を挑みかかるような眼で見すえた。
「似てますかね」
「え……?」
「あんたと僕と……」
「似てるって……?」
雄一郎は相手の言葉の意味を計りかねた。
「顔は似てないが、どこか似てるって三千代が言いましたよ。だから、別れるんだと……」
「だから、別れる……?」
「ぶち殺してやりたいな、あんたって人を……」
冗談とも真面目《まじめ》ともつかず言って、男は急に高い笑い声をたてた。
昭和十五年は、六月に砂糖、マッチの切符制が実施され、続いて八月には東京の食堂、料理店などで米食の使用を禁じられ、小麦も石炭も配給制になった。九月二十九日、日独伊三国同盟が成立し、世界は真二つに分れて不気味に対峙《たいじ》することとなった。
そして十月、大政翼賛会が発足し、ダンスホールが閉鎖され、秋から冬にかけては紀元二千六百年の奉祝会が全国各地で行なわれたり、隣組の組織が強化されるなど、日本国内の緊張感は次第次第に高まって行った。
翌昭和十六年の元旦、鉄道は職員の多くを軍隊にとられ、後に残ったものは少ない人数で多くの仕事を処理しなければならぬため、もはや暮も正月もなくなっていた。
以前、千枝の所に居候していた正作も、今では立派な機関手見習となり、連日質の悪い石炭をたきながら雪の荒野で悪戦苦闘していたし、雄一郎は眉毛《まゆげ》も白く凍りつく深夜、秘かに外地へ向けて送られて行く兵士たちや軍需物資の過密なダイヤ表を睨《にら》んで、一瞬たりとも緊張のとけない有様だった。
秀夫は目の前に迫っている庁立中学校の入学試験準備に、正月早々から余念がない。今年は、有里がたった一人で岡本家へ年賀に出掛けて行った。
雪子を頭に、辨吉、良太、月子、清三、清子、謙吉、華子の八人の子供たちに、有里は例年どおりお年玉を与えた。
「すまんねえ……」
人数が多いので、千枝はしきりに気の毒がった。
「今年は秀夫ちゃん、庁立中学を受けるんだってねえ」
「先生がそうするようにって勧めて下さったのでね……」
「秀夫ちゃんなら大丈夫だろうけど、庁立ってのはむずかしいっていうから、大変だねえ」
「雪子ちゃんはどうするの」
「あの子は高等科へ行って、それから裁縫でもじっくり身につけたいって言ってるの……手先の仕事が好きでね、この冬は、みんなのズボンだのシャツだの古い毛糸をほどいて編み直しをしてくれたんだよ」
「そうそう、秀夫も貰《もら》ったのよ、毛糸の靴下……とても喜んではいてるわ」
「あたしに似なくてよかったんだ……似たら不器用だよ、きっと……うまいこと、お父っつあんに似てくれたらしいんだ」
「今年の四月は、月子ちゃんが小学校ね」
「うん、去年はいい塩梅《あんばい》になかったんだけど、その前の年に良太、その二年前が辨吉でしょう、一年おきに新入学だもの……先生に言われるんだよ、今年はどのお子さんですかって……来年は清三と清子……」
「もう十年の辛抱よ、苦労すれば、しただけの甲斐《かい》は有るものよ」
「うん、そう思いながらやってるけどね……兄さん、今夜は帰れるの?」
「いいえ、まだ当分駄目らしいわ、暮からずっとよ……」
「そう……戦地の人も大変だけど、内地で働く者も楽じゃないよね」
「今夜、よかったらみんなで御飯たべに来ない、なにか美味《おい》しいもの作るわ」
「行ってもいいの?」
「うちも秀夫と二人だけで寂しいから、いらっしゃい」
「ありがとう、じゃ、よばれるわ」
「それじゃ……うちへ帰って用意をするわ……」
有里は千枝に別れを告げて、一人で玄関へ出た。ちょうどそのとき、戸が外から開いて、真黒に陽やけした男の顔がのぞいた。その顔を一目見たとたん、有里は口がきけなくなった。
「ち、千枝さん……」
くるりと背を向け、バタバタと奥へ走り込んだ。
「千枝さん、大変よ……」
「どうした……姉さん……?」
有里は不思議そうな表情の千枝の手を、ただ引っ張った。
「なんしたン……?」
有里は千枝をともかく玄関まで連れてくると、そこに立っている男を指さした。
「あんたッ……」
千枝の口から、悲鳴に近い叫び声が起った。
「元気だったかね」
良平の口許から、白い歯並がのぞいた。
「あんたア……」
千枝は良平の首にかじりついた。
「よく帰って来てくれたねえ……ほんとによく帰って来てくれたねえ……」
「俺《おれ》も驚いたんだ、急に命令さ下ってなあ……知らす暇もなかったんだ」
「……雪ちゃん、辨ちゃん……お父さんよ、お父さんが帰って来たわよ……」
有里が大声で子供たちを呼んだ。
バタバタと足音がして、良太が真先に駆けつけて来た。
「父ちゃん」
「おお辨吉か……」
「違う、俺、良太だ……」
「なんだ、お前、良太だったか……ずいぶん大きくなったなあ……」
清三、清子、謙吉、華子はどうやら父親の顔をおぼえていないらしく、隅の方でじろじろ良平を眺めていた。
「あんたら、なにしてるんだよ、本物のお父さんでないの……」
千枝がとうとう笑いだした。
「いやだよこの子たちったら、お父さんを忘れちまって……」
足かけ四年、家を留守にしている間に、子供たちはすっかり成長してしまっていた。一番下の華子などは、良平とはまったくの初対面だった。
しかし、この良平の帰還は、このところますます泥沼化している中国との戦争に、なにか明るい灯を点じてくれた。
(もうすぐ、平和がやってくるかもしれない……)
有里の胸は期待に大きくふくらんだ。
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